第23話 其々の話し合い 後編

一方、広場の方では嫁候補たちが顔合わせをしていた。


「私はキュリアよ、湖の大精霊よ、宜しくね」


「僕は、アレクサンベール山脈の大精霊さ、ベルと呼んでいいよ、宜しく」


「わたくしは、ハニービーの女王ですわ、ケミン様はハニーと呼んで下さいますわ、宜しくですわ」


「私は、クララウラ・ロワイエと申しますの。人間の精霊師をしていますの、クララと呼んで下さいの」


「私は、ジェンナー警護隊副隊長だったヘディだ、私は、ケミン様の盾になれと言われている、宜しく頼む」


「私はラーニャ、ケミン様の爪にゃ」


「私は、エルフのヒュパ、ケミン様専属のメイドです。宜しくお願いします」


「私は、エルフのメリトです。ヒュパお姉さまの妹です。同じく専属メイドです。宜しくお願いします」




「ふう・・・ 如何してこうなったの・・・」

キュリアが溜息を零しながら言った。八人もの嫁候補である。溜息が漏れるのも仕方のない事であった。


ここで、ラヴォージェが、白いチューリップを咲かせた。


「白いチューリップって”失われた愛”が花言葉よ!」



それを聞いた全員が、えーーーー!と合唱する、しかし直ぐに色とりどりのチューリップに変わったため、全員が安堵し、おおー!と言った。


「さて、それでは話し合いに入りましょうか」

キュリアが仕切るように言った。




女性陣の話し合いは、難航している。

先ず、飛べる女子と飛べない女子の差である。


飛べる女子はいつもケミンの傍に居られるが、飛べない女子は、殆どケミンに逢えないのである。この格差は酷かった。

「ケミン様が林檎の家に居るのは、ケミン様を守る盾としての職務が遂行できない!」


ヘディ警護隊副隊長は、ジェンナーでは、武闘派として有名な女子である。それに続けてラーニャが主張する


「私も爪、傍に居ないと逝けないにゃ」

ラーニャはケミンを護って死ぬ事迄考えてるようだ。続けてクララも

「私も精霊師としての使命が有りますの。傍に居ないといけませんの」


この三名の頑なな主張により 、不平等の是正を考える事になる。


「では皆が一緒に住めるようにしませんといけませんわね、私達でもう一つ家を建てましょうか?でも資材が必要ですが・・・」


ハニービー達の建築技術は、迎賓館でお墨付きである為、異論は出なかった。

「それなら、資材を調達できるか、ラヴォージェに聞いてみるわ」


キュリアが言うとベルも自分の相棒を慮って言う

「僕は、飛空蜥蜴ワイバーンも一緒に住みたいな、今独りだから寂しがってる筈なんだ」


(ラヴォージェ聞える?皆で住む為にもう一つ家と厩舎が必要になったのよ。資材を作れるかしら?)


(今すぐには無理ですが、明日から準備できます。)


(解ったわ、有難う。建物は、ハニービー達に作って貰う事になってるから大丈夫よ。明日からお願いね)


(解りました。因みにケミン様は、説得できそうです。生前の倫理観に囚われていますが、解決できそうです)


「ケミンは説得できそうですって」

キュリアの言葉に全員が笑顔になる。口々に嬉しい言葉が出てきた。


「それで、正妻なんだけど・・・」

途端にキュリアがもじもじしながら言い始めた。


「上位精霊からって考えたら、僕かキュリアになると思うけど、僕は、正妻って柄じゃ無いんだよねぇ。それに新参者だし」


「お待ちになって、実は先日の会議の日の朝にラヴォージェ様と話したのですが、此処に居ない花嫁候補もいるらしいですわ、各々の種族に最低でも一人の守護精霊が必要なので新参のドワーフ、昆虫人、爬虫類人、犬型獣人にも嫁候補を出すように通達したらしいですわ」

ハニーが、爆弾発言をする。


まだ増えるのー?全員の声が重なる


「ですので正妻の話しは、全員の嫁候補が、集まってから決めた方がよろしくてよ」

ハニーの正論が、炸裂する。


ここでメリトが、手を上げて発言の許可を求めた。全員が頷くと話し始めた。


「私は、正式なお嫁候補ではなく、お姉さまの補助としての純粋なメイドです。ですから・・・」

「なに言ってるのメリト!貴女も正式なお嫁候補だって族長から言われてるでしょ」


「ですがお姉さま、ケミン様の負担を考えたら・・・」


「ケミン様の負担を考えたからこそ、私達二人に絞られたのよ、それに貴女もケミン様をお慕いしているのでしょう?」

「ケミン様をお慕いしないエルフはいません・・・」


俯きながらメリトは言った

「なら此の話しはお仕舞いね」


ヒュパが閉めようとすると空かさずキュリアが聞く

「ちょっと待って二人に絞られたってどう言う事なの?」


ヒュパが、申し訳なさそうに答える。


「エルフは自然発生できる代わりに非常に妊娠し難い体質なのです、ですのでこの森に他の種族が居なければエルフだけで十人くらいのお嫁候補がいたでしょう、ケミン様から御加護を頂いて準精霊に為っても良いのですが、年月が掛かりすぎるため不採用になりました。私達二人に絞られたのは、普通のエルフよりも母乳器官が発達してるからで・・・」


「妊娠し易いかもって事か、色々な事情があるんだねぇ」

ベルが続けて納得した。


ここでラヴォージェが、木槿(むくげ)の花を盛大に咲かせていた。

「木槿の花言葉は"説得"よラヴォージェが、上手くやったみたいね」


皆で手を取り合って喜んだ。

しかし、決まったのは家を建てる事だけで、後なにも決まっていなかった。


「僕思うのだけど・・・抑々、正妻とか側室って肩書きだけだよね?ケミン君は、皆が平等ってよく言ってるでしょ?ここは決めない方が良いのではないかな」


ベルが言うとキュリアも納得しながら言う


「確かにそうよね、皆がケミンを大好きなのは一緒だものね・・・」

「そうですわね」


ハニーも同意すると他の面々も一様に納得する。


「後は、一番大事なケミンと一緒に寝る順番だけど・・・此処も全員一緒にとかはないわよね?」

キュリアが顔を真っ赤にしながら言った。


「うん、平等の精神から言ったらキュリアは一番最後だね、今までずっと一緒に寝てたのだろう?」

ベルがニヤニヤ笑いながら言うと


「そんなぁ・・・ケミンたら一緒に寝てても一切何もしないのよー、水着で寝た事だってあったのに・・・」


ええええぇ、水着で寝たのぉ?とキュリア以外の全員の声がシンクロした。


「だ・大胆だね、僕にはちょっと真似出来ないな」

ベルの発言に皆がコクコクと頷く


「酔った勢いだったの・・・あまり苛めないでよ・・・」

顔から湯気が出そうなほど真っ赤になって俯いていた。


「ごめんね、一寸揶揄ってみたかっただけで・・・順番は僕が一番最後で良いから」


「いいわよ事実だし・・・順番は妊娠し難いエルフ達が最初の方が良いわよね?」


キュリアが言うとエルフ達は、シンクロしながら

「「私達は、メイドですから後の方で構いません」」


「其れを言ったら、私はケミン様の盾だし、ラーニャは爪だ。皆他に優先事項有るのも一緒だ。だから気にする必要はない」


「ん、にゃん」

ヘディが男前な事を言うとラーニャは最短言葉で同意した。


この様に少しずつ順番が決まっていく、最終的には、エルフ達、クララ、ヘディ、ラーニャ、ハニー、キュリア、ベルの順に決まった。


「これで前もって決められる事は終わりね?気付いた事はまた女子会で決めましょう」


キュリアが締めに入ると皆が頷く。


「皆で林檎の家に行かない?飛べない人はみた事ないでしょ?一緒にお風呂に入りましょうよ。ヘディはハニーが運んであげてクララは私が、ラーニャはエルフ達が、運んであげて」


飛べないお嫁候補達は喜んだ。


「一度見てみたかったのだ」


「私も見たいですの」


「見たいにゃ!」


じゃー、行きましょう!

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