第22話 其々の話し合い 前編

次の日




俺は、久しぶりに自分の部屋で起きた。隣には誰も居ない、やっとゆっくり寝る事が出来た。何時もの如く、キュリアが一緒に寝ようとしたのだが、皆平等にと言う事で取り押さえられたのだ。


人数が増えたことで、やっとキュリアの暴走が止まった。此れって良い傾向なのか?


この状態が続くのなら部屋で寛げる服でも作ろうか。そして、キュリアから転送された情報を調べる。裁縫!!と唱えると一着のジャージの上下が出来上がる。もう一度、裁縫!!と唱えると白いパーカーとスエットズボンを作った。二着も有ればいいか・・・


すると扉をノックする音が聞こえる。

 「ケミン様、メリトです。朝食の準備が整いましたので、御呼びに参りました」

「分かった。此れから行くよ」


「お着替えをお手伝いしましょうか?」

「着替えは終わってるから、すぐ出るよ」


そう言って俺は外に出る。そこには檸檬色ショーヘアーのメイドさんがいた。メリトさんがショートヘアーなのか。


俺はメリトさんに付いて行くとダイニングの扉を開けてくれた。


中に入りテーブルに着くと、ヒュパさんが給仕してくれる。此方は、檸檬色ロングヘアーを後ろで纏めている。二人ともしっかりメイドさんだなぁ。


料理は、鮭の塩焼きに海苔、法蓮草の白和えに葱とお麩の味噌汁とご飯だ。


日本食って事は、キュリアが作ったのか?

「これキュリアが作ったの?」


キュリアはキッチンから出てきて一緒にテーブルに着く、なぜかベルさんもいる。

 「そうよ、私の料理美味しって言ってくれたでしょ?だから頑張ったのよ」

「そうか、有難う。頂きます!」

俺は三人で食べ始める


 『本当に美味しいね、僕はここまで美味しく作れないなぁ』

ベルさんが感心しながら言った。


「それでベルさんは、何でここに居るの?」

 『日本食を食べさせてくれるから?本当に久しぶりに食べてるよ』


「いや、そう言う意味で聞いたんじゃないんだけど・・・ってベルさんも日本人?」


 『元だけどね・・・僕は、山上(やまかみ)美紅(みく)って名前だった。中学くらいから引篭もりだったんだ。それで、十六の時、家が火事になって逃げ遅れた・・・』


「そうか、大変だったんだな、キュリアは如何してこの世界に?」


 「私は・・・交通事故よ、通勤途中に暴走した車が歩道に突っ込んできて、私は跳ねられたのよ、その時に・・・もう少し胸が大きかったらなぁって何故か考えてた、死ぬ間際なのにね」


 『あはは、僕と一緒だね、僕もこんなちんちくりんだったからもっと大きかったらなって』

「それは俺も思ってたな、もう少し背がデカかったらって・・・」



「「『そこが共通点なのか・・・』」」


三人同時に言っていた。


この世界に転生する条件?事故死である事と大きくなりたいと思うこと?

確かに転生して別の意味で大きくなってるけど・・・


俺は森、キュリアは湖、ベルは山脈。何でこうなった・・・

そんな事を考えながら食事が終わる「『ご馳走様でした!』」

 「お粗末様でした」 




後片付けは、ヒュパさんの仕事らしい、てきぱきと片付けられていく


食事が終わると紅茶が出てきた。紅茶を入れるのは、メリトさんだ。本当にメイドさんがいると楽だな・・・


俺達は紅茶を飲みながら話す。

「グーは如何だったんだろう?聞いたみたいよね?」


 『彼は、身長も高いし少し痩せてはいるけど普通だよね?』

ベルさんがグーの特徴を言う。


 「今度来た時に聞いてみたら良いじゃない、街の手伝いが終わったらまた来るでしょ」


俺達は頷くと紅茶を飲み終え外に出た。












キュリアはベルとハニー、メイド達と一緒に広場の方に降りて行った。


「さてさてラヴォージェさん、詳しく説明してくれませんかねぇ!如何して嫁候補が増えてるの!俺は結婚しないって言ったよね!」


俺がそう言うとラヴォージェの木には巨大な白いチューリップが沢山咲く


その瞬間下の広場の方から・・・えええーーーー!と言う合唱が聞こえた。


なんだ?どんな意味があるの?


 「白いチューリップは、”失われた愛”で御座います。」

「別に愛は失ってないよ!ただキュリアが執拗いから嫌だっただけだよ!」


そう言うと今度は、白以外の色とりどりのチューリップになっていく・・・

するとまた下の方で、おおー!と言う合唱が聞こえた・・・


下で何やってるんだよ!!


 「まあまあ、ケミン様、お座りください。説明致しますから」


踊り場の円卓に着くとラヴォージェは林檎を剥いて皿に乗せて出してくれる。


 「先ず、如何してお嫁が必要なのか、今の現状でこの森の精霊と言えるのは、私とケミン様だけで御座います。此れではこの森の守護に少々心許ないものと為ります。其処で其々の種族から嫁候補を出してもらい、子供を産ませることで精霊の数を増やす事が出来るのです。生まれた子供達は、その種族の守護精霊となる事が出来ます。守護精霊がいる種族は、強く護られる様に為ります。個別に守護精霊が付く事で森全体の守護の力も上がるのです」


「それなら俺が加護を与えたら精霊が出来るんだろ?現にクララウラ・ロワイエさんは準精霊になったってキュリアが言ってたよ」


俺は、シャクシャクと林檎を食べながら言った。


 「準精霊は精霊ではありませんよ。完全に精霊になるまでに千年以上掛かります。精霊になって守護精霊になるまでにさらに千年掛かりますから、クララウラ様が守護精霊になるまでには、二千年以上の年月が掛かります。それでは時間が掛かり過ぎるでしょう?お子様が生まれて十五年も経てば守護精霊に為れるのですから何方が効率的かは、一目瞭然だと思いますが?」


さらに林檎を食べながら聞くシャクシャク 美味しいな!


 「それに、エナジーの使用量がお子様を作る時に使う量と人族を精霊にする量では、雲泥の差が有るのです。人族を精霊にする為には、十倍以上のエナジーが必要なのですよ」


 「此れで解っていただけると思いますが?」


ラヴォージェはまた新しく林檎を剥いてくれた。俺は食べながら言う。

「確かに理屈は解るけれど、倫理的の如何なのよ!普通は、一人の旦那に一人の妻だろ?其れにそんなに沢山の奥さんを相手に出来ないと思うけど・・・」


 「生前の倫理観は必要ありません。其れは、生前の世界で暮らすために必要だった事で、この世界では、種族毎に守護精霊が必要なのですから、ケミン様には種馬にでも成って貰わないと困ります」


「種馬かよ!よくそんな言葉しってるな!」

 「勿論、ケミン様の記憶を見ましたから」


「成程、それでキュリアは如何なるの?もしキュリアに子供が出来ても森の守護精霊にはならないだろ?」


また新しく剥かれた林檎を食べながら言った。


 「其れは、キュリア様やベル様がお産みに為った御子様は、湖や山の精霊に為りますからな、森の精霊には成りませんけれども、抑々、精霊が一人も居ない時点ですから何の問題もないと思います。キュリア様は、人間が活動していますから精霊を自ら生み出すエナジーが溜まっていると思いますが、ベル様は、此方の世界でもほとんど姿を見せませんでしたので分身とあの飛空蜥蜴ワイバーンを作るのでギリギリのエナジーだったのではないでしょか」


「ベルってこっちの世界でも引篭もりだったのかよ。てかなんでベルの子供を作る話になってるの?そんな事ベルから聞いてないけど?」


 「ベル様もケミン様の御嫁候補に立候補しようって言っていたではないですか。」

「あれって冗談じゃ無かったの?」

 「冗談ではないでしょうな、現実に此処に残っておられるでしょう?」


マジかよーー グーだって居るのになんで俺の所だけ来るの・・・


ラヴォージェは、木槿の花を咲かせた。




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