第20話 会議前夜

迎賓館が出来て二日、会議まではあと四日となった。


迎賓館の管理と運営には、エルフ達が行う事になった、まあ一番近くに居るからねぇ、管理運営って言っても人が居ない時には、掃除するくらいしかないしね。


今日も窒息ブレストプレスがキツイ・・・苦しい・・・毎朝、悪夢で起こされているような気がするよ。


俺は起き上がるといつもよりちょっと強くぺしってしておく。あっ、いつもより赤くなってる、強すぎたかな。すると、キュリアも薄っすらと目を開けた。


 「ケミンおはよう、私にキスしたの?」

「してません!ペシッ」


余りにもムカついたのでもう一度叩いてしまった。

 「痛いじゃない!何するのよー!もう!」


「俺だって毎朝苦しんだよ!キュリア、この前手加減してくれるって約束したろ!」

「もう今日からは、顕現体じゃないと一緒に寝ないからな!」

そう言うとガバッとキュリアが起きた。おおー吃驚した。


 「そんなの嫌よ!ケミンを抱っこ出来ないじゃない!」

「じゃー、其の胸を何とかしろよ!苦しくて仕方ないんだからな!」


 「此れは私のアイディンティティなの!其れにもう変えられないわ!」

「えーーー?何がアイディンティティだよ!顕現体と違いすぎるだろ!」


 「あっちが本当の私じゃないの!これが本当の私なの!」

それって如何言う理論なんだよ・・・もう無茶苦茶だな・・・


 「どのくらいの強さなら良いのよ!ちゃんと教えてよ!」

そう言いながらキュリアは軽く抱き付いてくる。ぱふんぽにょんと顔に当たる。あれ?苦しくない、てかこれヤバイかも・・・


 「このくらいなら良いのね?今日からこれで寝るわ」


俺はなんだかとても恥ずかしくなってきた・・・キュリアの胸ってこんなに柔らかかったのか・・・


 「何をいまさら言ってるのよ!脂肪なんだから当たり前でしょ」

キュリアも恥ずかしそうに言った。


「解ったから、此れで良いからもう放して・・・」


俺はキュリアから解放されると余りの恥ずかしさにそそくさと外に出た。





外の出ると何時もの如くラヴォージェとハニーが話し合ってる。こっちも仲いいな。


「おはよう、いつも仲いいね」

 「「おはよう御座います、ケミン様」」


俺は、ハニーに抱きあげられる、ちょ・キツイよ、今度はハニーのブレストプレスか?ギューッと抱き締められた。

 「仲が宜しいのはケミン様ですわ!窓からお二人の抱き合ってる姿が見えましてよ!」


拗ねた顔で頬も膨らんでいる、こんな顔でも綺麗なんだなぁ。てか、あれ見られてたのか・・・めっちゃ恥ずかしいぞ。

「あれは、練習だから・・・キュリアが強さを調節できないって・・・」


 「それでケミン様の寝苦しさが解消されるなら良いですわ」

そうなると良いけどねぇ・・・




「そうだ、忘れてたけど会議の議題は如何したら良いかな?」

 『議題はもう決まっておりますよ。ケミン様の御披露目です。ケミン様が姿を現すだけで会議の目的は達成です。それよりもその後の方が大変だと思いますよ。』


ラヴォージェが何か不吉な事を言ってるな、本当にお披露目だけで良いのか?


 『大丈夫です。ケミン様が現れただけで、この森の発展は約束されてますから、会議は勝手に話が進みますよ』


「そうなのか、それでその後の大変な事って?」


 『ケミン様と縁を結びたがる種族が来るでしょうから・・・』

ラヴォージェの歯切れが悪いな・・・


 『それよりケミン様、迎賓館をまだご覧になっておりませんね、一度ご覧になっては如何でしょう?』


「そうだね、一寸見てくるよ」






俺はゆっくり広場に降りると、其処に白亜の豪邸が出来上がっていた。三階建ての豪邸で左右に平屋の建物が接続されている。


厨房と使用人の部屋かな?白いペンキなんて何処に有ったんだぁ?窓の数もかなりありバルコニーも付いている、小さな円卓と椅子も設置されていてバルコニーで寛げる様になってる。外は森だから木しか見えないけどね!


庭もあり屋敷の前には噴水まであるよ・・・馬車止めの石畳も有るし・・・てか、こんな森の中に馬車で来る人いるのか?

馬車が通れそうな道なんて無いだろうに。何よりこの豪邸が二日で出来たのが信じられないよ。


正面中央には巨大な扉が有る。木目調でワニスでも塗ってあるのか、黒味掛かった茶色で艶もある。

ハニー達のサイズを考えたらこのくらい大きくないと入れない。扉を開けてもらうと巨大なホールがあり、奥には幅の広い階段が有る。


天井からはシャンデリアが下がっており、壁は白色に統一され絵画やら剣やらが飾られ灯取の大きな窓もある。

階段の両脇には甲冑まである。床には豪華な絨毯が敷かれており、足音が響くことも無い。所謂、ロココ様式の内装である。


階段には赤い絨毯が敷かれ豪華さを増している。階段の途中には踊り場が有り左右に階段が分かれていく、踊り場の壁にも大きな窓がありステンドグラスになっている。


立ち姿で胸の前で手を組む女性の姿、軽く斜め上を見ている。其の目線の先には、小さな男性の姿・・・、ってこれ俺とキュリアじゃないか、なんでこんなステンドグラス作るんだよ。参ったなぁ、壊す訳にも行かないし・・・ガクン


気を取り直して二階に上がると奥まで廊下が続いていて、三階に上る階段もある。


ひとつの部屋を見るとこちらもロココ調の部屋で豪華な装飾の付いた柱、白い壁に絵画が飾られている。天蓋付きのベッドに豪華なソファとテーブル、大きな窓からバルコニーに続いている。どこかのホテルかよ・・・あっ迎賓館だから此れで良いのか・・・


三階に上がるとスイートルームになっている様だ、五部屋程に別れリビングと寝室、書斎、使用人の部屋もある。こちらも豪華な内装で寝室には、キングサイズのベッドにソファー、ウォークインクローゼットまである。リビングにも豪華なソファーとテーブル、使用人の部屋には小さな厨房迄、存在する、バスルームも有るじゃないか・・・


俺がここに住みたいよ!

一通り見終わって外に出ると、ニャーニャー声が聞こえてきた。


 「凄いニャー!此処に泊まれるそうだにゃ!早く来て良かったにゃ!」

 「リーゼ様、燥ぎ過ぎです。ラーニャ様を見習ってください」


小さな山猫達がもう着いたようだ。総勢七人か、俺が眺めていると、リーゼと呼ばれたオセロットがトテトテ近寄ってくる。


 「ケミン様だにゃん!逢いたかったにゃん!」

と言いながら、ぱふんと抱き付いてきた。俺の顔を見上げている。顔を下に見るのって新鮮だな。


「初めましてかな?オセロットの族長さんかな?」

 「そうですにゃ、リーゼですにゃ!初めてでもケミン様は知ってますにゃん!」

顔を俺の胸にぐりぐり押し付けながら話している。


「オセロットは甘えん坊だな、ほらほら、みんな呆れているよ?」

 「リーゼ様、端ないですにゃん!」

メイド服を着たオセロットが言った。


 「ケミン様に甘えられるのは今だけだから良いにゃん!会議が終わったら帰らなきゃならないから甘えられないにゃん!」


「ラヴォージェ!木天蓼!」


そう言うと空から数本の枝が落ちてきた。


 「木天蓼にゃー!ゴロゴロ」

リーゼ達は、木天蓼の枝にゴロゴロしている。これは覿面だな!




可愛いゴロゴロを暫く見ているのだった。



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