第16話 ハニービー達の襲来

次の日

キュリアは目を覚ました。


はっ、昨夜ケミンに抱き着いたまま寝ちゃったんだわ。顔がカーーッと熱くなってくる、恥ずかしい・・・

私は起きて隣を見る、スヤスヤ眠るケミンの寝顔が可愛い・・・

頬をぷにゅってしてみる、プルンと揺れた。それでもケミンは起きない。


ああ、ダメよ、私の衝動が抑えられなくなっちゃう、良く寝てるもの、キ・キスくらいしても大丈夫よね?私はケミンの頬に軽くチュっとしてみた。それでもケミンは起きない。


ああぁぁっ可愛すぎるわ!体がキューッとしてくる。手を胸の前で組んでモジモジしてしまったわ。唇も大丈夫かしら?ねぇ?しちゃう?しちゃいなよ。


悪魔の囁きが私の耳に響く、私はその言葉に抗えず、ケミンの唇にゆっくりと顔を近づける・・・


「おお!キュリアおはよう!顔近いよ!如何したの?」

私は、思い切り慌ててしまった!ビクッとして離れると・・・


 「あわわわわ、お・おはようケミンよく寝てたわね」

「何慌ててるんだよ!さては、何かしようとしてたな?」


 「し・してないわよ!それより、朝食は食べる?此れから作るけど?」

「作ってくれるのか?今日は何も予定がないしゆっくり出来そうだから食べようかな?」


話を変えた事は、突っ込まないでおこう、朝食作って貰えなくなりそうだからな。

 「うぬぬ・・・わかったわ、洋食と和食、何方が良い?」


「和食が良いかなぁ?時間かかる?」

 「大丈夫よ!昨夜の残りの肉じゃがも有るし、焼き魚と御浸しと味噌汁くらいだもの直ぐに出来るわよ。」


「味噌も有るのかよ。凄いね!」

 「私が何年この世界に居ると思ってるのよ!貴方より千年は長いのよ日本の食材なんてみんな作ってるわよ」

フフンっと偉そうに言う。


「そうかそうか、じゃー和食で頼むよ、ラヴォージェに挨拶してくるよ」

 「わかったわ、出来たら呼ぶわ」

俺は、起きて外に出る。


「ラヴォージェさんおはよう、昨日はよくも裏切ってくれたねえ!!」


 「仕方なかったのですよ、今は手が足りなすぎます。一緒に寝るのと一緒にお風呂に入るのと両方押さえてしまっては、キュリア様は暴走処か、大噴火してしまいますよ?宜しいので?」


「大噴火って!物騒だな!!」

 「ですから入浴は、お守りしますので、一緒に寝るのは、我慢してください」


「それって、どっちにしても貞操の危機なんじゃぁ?」

 「其処は釘を刺して有りますから大丈夫だと思いますが・・・」

俺はひそひそと小さな声で言う。


「本当かよ?今朝なんてなんか変な気配がして起きてみたら、キュリアの顔が目の前に迫ってたんだぞ・・・吃驚したわ」

 「本当で御座いますか?何を為さろうとしていたんでしょか?」


パッカー―ン思い切りスリッパで叩かれた・・・だから痛いって・・・

 『ケミン!なんて話をしてるのよ!それより朝食できたわよ!』

 (その前にほっぺにキスしてるなんて言えない・・・)


(キュリア様、もう少し自重してください。ケミン様は、淑やかで優しい人が、好みらしいですよ)

 (それ本当なの?)



(記憶を見ましたから、生前の好きになった方々は皆そのような人でしたよ)

 (解ったわよ!考えてみるわ)


 『ケミン早くいらっしゃいご飯冷めちゃうわよ』

「はいはい」


俺は林檎の家に入りダイニングテーブルに着く、目の前には、鯖の塩焼き、肉じゃが、ホウレン草の御浸し、豆腐の味噌汁、ご飯と純和食が出ていた。


おおー!これぞ日本の朝食!「頂きます!」

朝食を食べながらキュリアが話しかけてきた。

 「ねーケミン、今日は何するつもりなの?」


「やっと分身が出来たからねー、動物と触合いに行こうか、それとも湖にいって船でも乗ろうか、色々考えてるんだけどね。今日は一日休日かな、昨日まで働いていたからね、あっ、部屋着でも作ろうかな」


 「湖って私よね・・・私に乗るって・・・ポッ やっと既成事実が・・・」

「おいー!船が抜けてるから!キュリアには乗らないから!!なんで、其処まで話が飛躍できるんだよ!」


 「チッ 誘導失敗か・・・」

「誘導してるつもりだったのかよ!そんな誘導に誰が乗るんだよ!」

そんな話をしながら朝食が食べ終わる。「ご馳走様でした!」


 「お粗末様でした」

ニコニコしながらキュリアが言う。


こういう姿は可愛いんだけどな、いかんせん言動が危なすぎる。

 「私可愛い・・・ポッ」


真赤になって俯いている。最後の言葉は聞こえなかったらしいな・・・

「うんうん、キュリアは可愛いよ」ダメ押しをしておく。


 「食器を片付けちゃうね!」

キュリアは照れ隠しの様に慌てて動き出した。


「俺も手伝おうか?」

 「ケミンは其処でゆっくりしてて、今日は休日なんでしょ?私がお世話してあげるわ」

おおー!急に優しくなったな!どんな心境の変化だ?


 「もう!前から私は、優しいわよ!ケミンが気付かなかっただけじゃない!」

「えーーー?そうだったか?」


 「そうでした!!もう!」

そんな話をしていると何か外が騒がしくなってきた。沢山の羽音も聞こえてきた。


何か来たのかな?外に出てみるか。俺は林檎の家の扉を開けた。

その外の光景に俺は驚愕した・・・


ハニービーの大群が、飛んで来ていたのである。

傾国の美女が数千人は居るだろうか・・・


キュリアも外に出てきて驚いている、ラヴォージェは・・・・笑ってる?なんで?

「此れ如何なってるんだ?」


ハニービー達は、俺を見るとキャーキャー言っていた。

そして、一人の女王蜂が降りてくる。


俺のそばまで来ると、俺の身体を4本の腕でしっかりと抱きあげた。

おいおい!動けないよ!これってハニービーの反乱か?何処かに連れ去られるのか俺?


 「コラーーー!ハニービー!!ケミンを放しなさい!!」

キュリアはカンカンに怒っている。何とかハニービーから俺を救い出そうとしているが、上手く躱されて手が届かない。


 『放しませんわ!やっとケミン様が復活為さったのですもの!こんなに可愛らしい分身まで作られて!キュリア様は、ケミン様をずっと独り占めされてたのですから、私達にも少しは、お譲りくださいな』


そう言いながら右手でキュッと俺の顔を胸に押し付けてきた。ぽよよんっとしてるけど何か変な気分、ハニービーは虫なんだけどなぁ、そんな事より・・・


「俺は物じゃないよ!!ラヴォージェ助けて!」

 「ケミン様、ここは我慢です!!」


「ラヴォージェ!我慢を強いることが多過ぎだぞ!」

 「何を言っているのですかケミン様、人手が増えるチャンスですぞ」


「此れはどう見ても危険が、倍増する状態だろーーー!!」


 『あぁ、ケミン様、可愛らしい、もう手放したくなくなりますわ!私をお嫁に貰ってくださいな♡』

♡の目をして怖い事を言っている・・・


 「ダメーーーー!ケミンは私の旦那なの!」

「お前ら!!両方違うから!!俺は、まだ結婚しないから!!第一寿命が違いすぎるだろーー!」


 『大丈夫ですわ。代々お嫁が生まれますわよ。今だってこんなにもお嫁が居るのですよ』


「この数千人のハニー達が、嫁になるのか?!助けて!」

キュリアは、何度も助けようとしているが、すべて、躱されている。


そのうちに、女王は飛び立ち、他の蜂達のそばまで逃げる、キュリアはそれを追うが、他の蜂達に邪魔されて動けない。

「何されるのーーー?」


俺は、次々に抱きしめられては、手渡しされていく、バケツリレーかよ・・・


ケミン様ー キャー 等と言われながら・・・

どんどん手渡しされる俺を追いかけて飛ぶキュリア・・・


 「待ちなさいよー。ケミンを返してー!」


其の光景は、今日一日続いたのであった。



俺の今日の休日は、バケツリレーだったのか・・・ガクン


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