第15話 其々の反応
私の名は、クララウラ・ロワイエと言うの。歳は二十二歳。容姿は、普通かな?男の人からは何度か告白を受けたけど、今の仕事が好きだから断ったの。私は、精霊師の仕事をしているの。
精霊師って言うのは、精霊様の声を聴いたり話したりする簡単なお仕事なの。
でも、この国、ケミカリーナ王国では国家公務員なの凄いでしょ?
ケミカリーナ王国は、女神キュリア様が起こした国なの。だから、精霊様と話せる事はとても重要なの。
約六百年前に湖の精霊王キュリア様からご加護頂いたのが、今の王家のケプラー様なの。だから王家は、精霊様とお話が出来るの。
私達精霊師は、王家の厳しい審査を受け、精霊様と話せる事を見極められて、国家資格を取得できるの。
どの位厳しいかって?例えば、王家との面接試験があるの。国王様と皇后様、王子様や王女様、全員揃い踏みなの。
そして、面接に入っても王家の方々は只ニコニコしているだけで、一言も話さないの。
でも、声は聞こえてくるの。念話って言うのかしら?其れで色々な質問をされるの。この質問に的確に答えられないと合格しないの。
念話が全く聞こえない人は論外で念話が聞こえても的確に答えられないと落とされるの。厳しいでしょ?
私は、その厳しい試験に合格して、今此処に居るの。
私の赴任先は、ケミカリーナ大森林の森の中の街、ジェンナーなの。今から三年前に赴任したの。此処は精霊師にとって、最も重要な街なの。
ハレダーウィン大陸の東の辺境地のほぼ中央に位置するの。だから東の全ての精霊様の念話が届くの。ここ六百年は、精霊様の声を聴いた記録は残ってないの。
でも最近、不思議なことが起こったわ。街に女神様と大精霊様が現れたと噂になったの、女神様達が現れたのは実に六百年ぶりなの。そして、森全体が光り輝いた事も有ったの。
そして今日は、街の商人が慌てて役所に報告に来たの。
サイン川のラヴォージェの巨樹の近くに突然、船着き場が出来たって。誰が何のためにあんな所に船着き場を作ったのか判らない。
その夜、私はとうとう精霊様の声を聴いたの。
【我、ケミカリーナ大森林の巨樹ラヴォージェなり、全種族に告ぐ、ケミカリーナ大森林の精霊王様が、六百年の長き眠りよりお目覚めに成られた。これより一月後、森林会議を行う、全種族の長達よ、一月後、我の下に集え】
約六百年ぶりの精霊様からの念話を一言一句漏らさずに記録に残し、市長に報告に言ったの。そして、既定通りに庁舎の発光塔に上り、持てるだけのエナジーを使い、光の玉を打ち上げたの。他の場所からも、幾つもの光の玉が上がったのも見たの。
市長室に戻ると市長から言われたの。
「クララウラ・ロワイエ精霊師、一月後の森林会議に私と共に出席する様に。代わりの精霊師については、明日王家に早船を出し、この度の精霊様の念話の報告時に派遣して頂けるように進言しておく。出発の準備ができ次第報告に来るように」
「承りましたの。でも、お父様?私で良いの?もっと適任の人がいらっしゃるのでは?」
「私では、精霊様の御声が聴こえないからな、それに私が動かせる精霊師はクララしかいないんだよ。新しく赴任する精霊師をいきなり連れて行くのは気が憚る」
「分かりましたの。出発の準備が終わり次第、報告しますの。」
「頼んだよ、クララ」
私は市長室を出ると自室に戻る。
この会話が、今後の私の人生の転換期になるとは、その時は夢にも思わなかった。
クララには、会議後もそのまま残ってもらって嫁候補になってもらうか・・・
市長はこんなことを思っていた。
おおー!何百年ぶりか、ラヴォージェ様から通信が来たぞ、ケミン様がお目覚めになったのか。可愛い大精霊様だったな。一月後に会議か、了解した。
私は、光の玉を打ち上げておく。人族とオセロットも上がってるな。森の街ジェンナーからは三種族だな。
私は、ウィローモスの族長ウィズド。大森林にいる其々の族長は、精霊様の記憶を代々継承している。伝承の記録も残してはいるが、記憶の継承の方が確実に伝わるからな。
ケミン様に久しぶりにお会いできるのか。本当に可愛い大精霊様で、庇護欲が掻き立てられるのだ。
我々ウィローモスは、まさに岩のような頑丈な体で、ケミン様の盾には、うってつけである。盾役を置いて行けるように誰か連れて行くか。それとも、ケミン様の嫁候補の方が良いか?
「グレースは居るか?」
「はい、何でしょう貴方」
書斎のドアが開いて、妻のグレースが入ってくる。
「ケミン様がお目覚めになられたのは聞いたと思うが、盾役を連れて行くか、嫁候補を連れて行くか迷ってるんだが」
「うふふ、お嫁さんですか?お嫁さんの候補は、他の種族からも来ると思いますよ?其れよりもケミン様を守る盾になる方が宜しいのではないかと思いますよ?」
「それもそうか、しかし、ケミン様は我々の毛並みを大層好んでいらっしゃるからな迷っていたんだよ」
「では、ヘディを連れて行っては?あの子なら盾にもお嫁候補にもなりますでしょ?もしお嫁にはなれなくても盾としての働きは十分できますよ?」
「そうだな、ヘディを連れて来てくれ」
分かりました。と言って妻は書斎から出ていく、しばらくするとドアがノックされ声が掛かる。
「ヘディを連れてきました。」
そう言うとドアが開き妻とヘディが入ってきた。
「旦那様、ヘディ参りました。」
ヘディは跪き右拳を左肩に当て守護隊の礼をする。
「ヘディ副隊長、ラヴォージェ様からの通信は聞いていたな?ケミン様がお目覚めになられたのだ。我が種族の目的は、ヘディも知っていると思うが、ケミン様をお守りする盾になる事だ。そこで、ヘディにケミン様をお守りする盾になってもらおうと呼んだのだ。」
「光栄な事と存じます。不肖者では御座いますが、命を懸けてケミン様をお守り致します。」
「うむ。それともう一つ、ケミン様は我々の種族の毛並みを大層好んでおってな、我が種族の中で、最も毛並みの美しいヘディが、嫁候補になるのでは?と思ってな。」
「よ・嫁候補ですか・・・」
ヘディは、真赤になって俯いている。
「嫌かな?他に好いている人が居るなら、別の者にするが?」
「全く居ません。是非、宜しくお願いします」
「わかった。主目的は、ケミン様をお守りすることだからな。忘れずに頼むぞ。」
「はっ、承知いたしました」
「では、出発の準備をしてくれ、会議は一月後だ。宜しく頼む」
「とうとうケミン様がお目覚めになったにゃー!待ちわびたにゃー!嬉しいにゃん!嬉しいにゃん!一月後に逢えるにゃん!!」
オセロットの族長リーゼは大喜びしていた。そしてトテトテと回りながら光の玉を放つ。
「また、マタタビくれるかにゃー?今度はずーーっと一緒にいるにゃん!」
「それは無理ですにゃん、リーゼ様、貴方は族長なんですから、族長は記憶を継承しないといけないのですにゃん!」待女が言う。
「えーーーー?じゃー今すぐ継承するにゃん!ミーネを呼んでくるにゃん!」
「今すぐ継承したら、リーゼ様がケミン様の事を忘れてしまいますよ?宜しいのですにゃん?」
「あわわわわ、それはダメにゃん!マタタビ気持ちいいにゃん!忘れちゃダメにゃん!」
「では、誰に残ってもらうようにしますにゃん?、我々オセロット族は、ケミン様を守るための爪になると初代様から言い伝えが有りますにゃん。」
うーんッと腕を組み顔を左右に傾げながら考えているが、いい案が浮かんでこないようだ。
「分からないにゃん・・・誰がいいにゃん」
しょんぼりしながらリーゼは、言った。
「ミーナ様は次の族長候補ですし・・・ラーニャ様が宜しいのでは?お二人に負けず御強いですし、ボディラインもお美しいですから」
「あーーーー巨乳のラーニャにゃん、でも、大人し過ぎないにゃん?ケミン様を守れるかにゃ?」
「大丈夫ですにゃん。狩りの時でもいつもトップですし、お話するのが少々苦手なだけですにゃん」
「にゃるほどにゃん、お嫁にもなるかにゃ?」
「其処は、リーゼ様が言い含めればいい事ですにゃん」
「分かったにゃん!ラーニャを呼んでくるにゃん!」
待女は出ていき暫くして戻ってくる。
「お連れしましたにゃん」と言って部屋に入ってきた。
「ラーニャ!ケミン様が起きたにゃん!一緒に会議に行くにゃん!ラーニャはケミン様の御嫁になるにゃん!そしてケミン様の爪として一生守るにゃん! いいなー 本当は私がなりたいにゃん!!」
「私で良いにゃん?」
「ラーニャくらい強いのは、他に居ないにゃん!」
「ん。分かったにゃんケミン様をお守りするにゃ」
「ラーニャ頼むにゃん!会議は一月後にゃん準備しとくにゃん!」
ラーニャはコクリと頷くと部屋を出て行った。
他の種族達でも嫁候補が選別されていったが・・・
抱き枕状態のケミンには、与り知らぬ事であった。
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