第14話 会議の通達と初めてのお風呂


「ただいまー 終わったよー」

 俺は、戻ってくると林檎の家の踊り場に立つ。するとキュリアも出てくる


 「ア♡ナ♡タ♡お帰りなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ♡た♡し♡に、する?」

「そのネタはもういいよ!!」


俺は間髪を入れずに答えておく。毎日此れに付き合ってられないよ・・・今日は疲れてるしな。二日間働き過ぎた。やっと社畜から抜け出せたのに・・・

 「もう!!」


キュリアは怒って林檎の家に戻った。てか、其処は俺の部屋だから!何普通に戻ってるんだよ!

もう!って言いたいのこっちだよ・・・


気を取り直して俺は、ラヴォージェに言う。

「ラヴォージェさん。船着き場も通路も出来たよ、会議の準備は此れで良いよね?通達宜しく。」


 「本当に仕事がお早いですな。では通達致します、アテンションプリーズ」


お前は、CAか!!


 「アハハハハ、ケミン様はノリが良いですね!」

まあ何かネタを仕込んでくると思ってたけどな・・・其れよりもちゃんと通達してくれよ。




 【我、ケミカリーナ大森林の巨樹ラヴォージェなり、全種族に告ぐ、ケミカリーナ大森林の精霊王様が、六百年の長き眠りよりお目覚めに成られた。これより一月後、森林会議を行う、全種族の長達よ、一月後、我の下に集え】




「ラヴォージェ!カッコいいな!」

 「そうでしょう、実は私、威厳が有ったのです。」

普段は全く無いけどな!


そんな事を話していると、森の彼方此方で光の球が打ち上った。

「なんか光が上がってるけどあれ何?」


 「通達を受信した合図ですよ。」

そんな通信手段を確保してたのかよ、知らなかった。


ハイエルフ達がやってきた。そして、跪きながら言った。

 「「ケミン様、ラヴォージェ様、一月後の森林会議、承りました」」


相変わらず、シンクロしてる。まあ最初に伝えたのは、ハイエルフ達だったから知ってるはずなんだけど、一応伝えに来たのね。


言い終わると、二人は立ち上がりニコニコしてる。


 「「目の前で光が上がると眩しいでしょうから、お伝えに来たのです。」」

確かに!あんな遠くからでも分かるような光の玉を上げられたら眩しい処の話じゃないな。


「「小さな光も出せますよ」」

そう言いながら二人は、同時に右手の人差し指を立てて小さな光をぽわんと打ち上げた。


行動までシンクロしてるよ!すげえ夫婦だな!!


「「ではこれで失礼します」」

そう言うとまた、ふわふわ飛んで降りていった。


 「ケミン様、お風呂をまだ見てませんよね。だいぶキュリア様の意向が反映してますが、見てみますか?」

ラヴォージェが、何か申し訳なさそうに言った。


「そうだった、今朝作ってたんだよな、ラヴォージェ、大丈夫だよ。お風呂なんてだいたい一緒だから。取り敢えず見てみるよ。」


そう言うと俺は、お風呂の扉を開いた。脱衣所に棚と籠があり大きな姿見が付いてる。洗面台もありヘアードライヤーまである。キュリアが使う気満々だな!!


カーテンで仕切られているので開けて中に入ると俺は唖然とした・・・


其処には、巨大な岩風呂が存在し、その上には大きな窓が有る。いくらなんでもデカすぎだろ、個人宅の風呂じゃないよ此れ、温泉旅館の大浴場じゃないんだから・・・


洗い場にも大きな鏡とシャワーと石鹸、シャンプーセットまで有る。椅子と手桶、これどう見ても銭湯仕様だな。


そして、なぜか天井からブランコが下がっていた。これ何の為にあるんだよ、意味わからねぇ・・・キュリアの頭の中は如何なってるんだか、一度開いて見てみたい。ピンクの脳みそだったりしてな!


キュリアに任せた俺が悪いのか・・・ガクン


ブランコを見なかった事にすれば、普通の温泉旅館の岩風呂だな、そう言う事にしておこう。

俺は、水魔法を使い風呂にお湯を溜める。岩風呂からゆっくり湯気が立ち昇っている。


脱衣所に戻り、服を脱ぐとカーテンを閉めて、洗い場で体を流す。シャワーにエナジーを流すとお湯が出てくる。どんな魔法使ってるんだ此れ?後で聞いとこ。


頭も洗い始める、備え付けのシャンプーを使って洗っていると

カーテンがいきなり開いて、キュリアが言った。


 「ケミン一緒に入るわよ!」

コラ!入って良いって言って無いぞ!

キュリアは隣で体を流している様だ、俺は頭を洗ってるから見えないぞ、見たくないぞ。


 「見ても良いのに・・・」

此奴、五月蠅いよ!


 「先にお風呂入ってるわよ♡」


そう言うとチャプチャプと音を立ててキュリアは岩風呂の奥のほうまで行った。

 「ケミン気持ちいいわよ、早く入って来なさいよ」


ゆっくり入ってろよ・・・俺は頭を流すとそのまま出ていった。


 「あーもうケミンたら、恥ずかしがっちゃって♡可愛い♡」

お前はもう少し自重しろよ!!


俺は服を着て外に出てきた。


「ラヴォージェさん、キュリアを止めてくれよ!!」

 「お止したのですが・・・」


ラヴォージェに八つ当たりしても仕方ないか、体無いものな・・・


キュリアの暴走を止められる奴はいないのか・・・


「そう言えば、ラヴォージェは分身作れないのか?」

俺は気になったので聞いてみた。


 「作れますよ。ただ今まで言われなかったので作らなかっただけです。」


 『ケミンーーー裸でブランコ乗ってるわよーー見て見てーー』

キュリアが風呂場で叫んでいる、俺は頭を抱えたくなった。風呂場でブランコに乗って何が楽しんだよ・・・


「なら早く作ってキュリアの暴走を止めてくれよ」


分りましたと言ってラヴォージェが分身!!と唱えると目の前で光の玉が出来、光が徐々に収束すると、そこにナイスミドルで執事の格好をした男性が現れた。


「そんな簡単に出来るのかよ!!俺は千二百年もかかったのに!」

 「いえいえ、私も千二百年分のエナジーが溜まっていたのですよ。ケミン様と一緒です。これからはこの姿でお仕えします。」


「ああそうか、一緒にエナジー溜めてたんだ」

ラヴォージェは、抑揚に頷くと言った。


 「此れからは、ケミン様を守れます」

「宜しく頼むよ。兎に角、今一番の危険人物は、キュリアだから何とかしてくれよ。今のままじゃ安心して寝てられないよ」


そんな話をしていると、やっとキュリアが風呂から出てきた。

 『あーいいお風呂だった♡次は一緒に入ろうねケミン♡』


「よし!ラヴォージェ!確保!!」

そう俺が言うとラヴォージェは、一瞬でキュリアの所まで行き、ひょいとお姫様抱っこした。


 『えええーーー?何よ!降ろしてよー!ラヴォージェ分身作っちゃったのね!』

 『ケミンは私の旦那様なんだからお風呂位一緒に入っても良いじゃない!』


「旦那じゃないよ!!まったく!」

なんで此奴は、いつの間にか奥さんになってるんだよ!結婚してないっての!


 「ケミン様、ごゆるりとお風呂にお入りください」

ラヴォージェが、いっきに頼もしくなった。此れからは安心出来そうだな。


キュリアはジタバタして降りようとしているが、ラヴォージェは全く動じていない。

「じゃー風呂に行ってくるよ」


俺は、今度こそゆっくり風呂を堪能した。

温泉では無いけど。やっぱり風呂は気持ちいなぁー。分身からだが有る事を実感するな。


俺は満足して風呂を出るとキュリアに手をつかまれてダイニングに拉致された。小さい子供がお姉さんに誘拐されるみたいだった。


キュリアは無言で夕食を出す。今日はシチューと肉じゃがの様だ。ご飯もちゃんとある和洋折衷だな。これも俺は大好きだったりする。俺の好みを良く調べてくるな・・・


俺はシチューを一口食べる。うーん美味い!

「キュリア、料理だけは上手いな!」俺はどんどん食べていった


 「料理だけはって何よ!料理も!の間違いよ!!」

「はいはい、料理も上手いね。ご馳走様でした」


俺は立ち上がると外に出ようとした。扉を開け・・・あれ?開かない?動かないぞ!如何なってるの?


「ケミン様、申し訳ありません」

外からラヴォージェの声が聞こえた・・・裏切ったなーーーー


そう思っているとキュリアが近づきひょいとお姫様抱っこされ、ダブルベッドに寝かされた。


 「今日はこっちで一緒に寝るのよ。」

キュリアはそう言うと、一緒に横になり抱き着いてきた・・・


「俺は抱き枕じゃないよーーー」




俺の声が虚しく響いた・・・



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