第13話 会議の準備 後編

次の日、また隣にキュリアが寝ていた。俺に抱き着いて・・・俺はお前の抱き枕かよ・・・なんか苦しいと思ったよ。


白衣のまま寝るのもなんだなぁ、今日帰ったらルームウエアでも作るか、と言ってもジャージだけどね。それしか思い浮かばないんだよな・・・


俺はキュリアを起こさないように静かに起き上がりぺしっとキュリアの額を叩いておく。そして、外に出た。


「ラヴォージェさんおはよう。通路の件だけど、結界って如何するの?」


 「おはよう御座いますケミン様。先ず、通路に石畳を敷きます。敷いた石畳の両脇に見えない壁をイメージして立てていきます、端まで来たら結界!!と唱えてください。すると、見えない壁に結界エナジーが流れて結界が完成します。」


「見えない壁の立て方は?」

 「そうですね・・・ ケミン様の記憶の中にトンネルと言うのが有りますね。それをイメージして石畳の上を歩くだけで、大丈夫でしょう。」


「それだと本物のトンネルが出来ないか?」

 「土魔法を発動したら本物のトンネルに成りますよ。ですから、エナジーだけを放出してトンネルの形にすると見えないトンネルに成ります。」


「ああー成程、土とか水とかの属性を付けてイメージすると魔法になり、何もつけないと見えない何かが出来るのか。そして最後に結界魔法にすると全体が結界になるってことなんだね。」


 「その通りです。ケミン様の物覚えは早くて助かりますな。」

ラヴォージェはそう言うとサルビアの花を咲かせた。青紫の小さな花が鈴なりに咲いている。


「前から思ってたんだけどその花って意味あるの?」

俺は前から思っていた疑問を言った。


 「ああ、ケミン様は、花言葉には興味が無かったのですね。確かキュリア様の記憶の中に花言葉と言うのが在りまして、サルビアの花は、尊敬とか知恵と言う意味があるのですよ。」


「花言葉か・・・全然知らないな、ハハハハハ」

思わず乾いた笑いをしてしまった。花言葉なんて全く気にした事なかったよ・・・


気不味くなったので俺は、今日の仕事に行こうとしたが、後ろから肩を叩かれた。


後ろを見るとキュリアが立っていた。恥ずかしそうにモジモジしながら・・・

 『おはようケミン、貴方もしかして朝起きた時に、私の額にキ・キスした?』


「えええぇ?する訳ないじゃん!!」

思わぬ展開で、挨拶も忘れてしまった。


 『だって・・・朝起きると私の額が何時も熱いのよ、だからキスしてくれたのかなーって・・・』


此処で本当の事は言えない・・・殺されそうだ・・・


 『殺されそうって何よピキピキ』

青筋が出来始めたヤバイな


「いやいやいや!よく寝てるなと思ってなでなでしただけだよ・・・」

此処で、ぺしっとしたなんて言ったら・・・


パッカー―ン有無を言わさずスリッパで叩かれた・・・痛いよー


 「おはよう御座いますキュリア様、今日もお元気ですね。これからお風呂と言う物を作ろうと思うのですが、教えて頂けますか?」


おおー!ラヴォージェナイスフォロー俺が、サルビアの花を咲かせたいよ。


 『お風呂ーーー 欲しいわ!早速教えるから作って頂戴』

 「分りました、ケミン様は、通路作りに行ってください。」


「じゃー行ってきます。」

俺は後ろを振り返りながら移動した、てかもう新しい林檎の家が出来てるんだけど・・・









広場に降りると俺は通路を作り始める。昨日下草を刈った場所を十センチ程度土魔法で掘りながら幅三メートル程の通路を作っていく。掘った土は、勿論土魔法で敷石に加工して嵌めていく。


厚さは掘った分より、少し高くする。敷石をそれぞれ接着剤でくっ付けていく感じでっと。どんどん敷石を詰めていく、支流に近くなってくると土が足りなくなってきた。

それなら船着き場の周りも石畳にしようと考え、周りの下草を刈り地面を掘っていく、出来た土の山を石畳に加工して通路に補充するこれで通路は完成した。


さて此処からだけど・・・通路を埋める分だけ船着き場の土を削ったので、土は無くなっている。

残りは河原の石を使うか・・・でも色がバラバラなんだよね・・・


それなりのサイズは揃っているのだが、赤茶色、白、青、緑に黒とまあ色とりどりなんだよね。模様入りまであるし、此れってさー 並べ方によって美的センスを問われるよね?俺に美術・芸術の才能は皆無なんだよなーガクン


とりあえず加工だけでもしておくか、河原の大きい石を水魔法でスライスしていく白い石が多いので中央に集める、隙間には削った白い砂で埋めて土魔法で固める。


若干斑模様になるけど、これは、味だと思って貰おう。その外側には赤茶色の石をグルッと配置その外には緑色の石をさらに外に青っぽい石を最後に黒い石で縁取る。

これで完成にするか・・・ただ色を合わせただけなんだけどね。


それと、今気付いた、桟橋が無垢材なんだよなぁ・・・これって水の近くだし腐り易いよね。アクリルなんてこの世界にないしなぁ・・・これは帰ってラヴォージェに相談かな。


次に結界作成だな、船着き場も石畳にしたからここからドーム状にエナジー結界を張ろう。少しずつ見えないドームを進めていく。

通路の部分は、ラヴォージェに言われた通り、トンネル状に進める。両手を左右に広げ、通路の両端からトンネルが立ち上がるイメージで作っていく、手から光の粒子のエナジーが放出されるのが見える。


これで、ラヴォージェの所に戻っていく。中央に戻ってきて結界!!


すると、石畳が一枚の石道なった、通路の両端が僅かに光ってる。これで成功なのかな?


「ラヴォージェ見てくれよ此れで良いのか?」

 「素晴らしいです、ケミン様。完璧ですね。」


俺は、ふわっと飛んで林檎の家の踊り場に立つ。


「だから褒めても何も出ないよ・・・それよりまた問題が出たよ。桟橋が無垢材なんだよなぁ水場だと腐り易いだろ?何か保護する方法はないかな?この世界に合成樹脂なんてないよな?」


 「合成樹脂は在りませんな。今すぐに手に入るものなら松脂くらいでは?」


「あーぁ松脂かぁ、ワニスを作れってか?それならわざわざ聞かないよ、魔法で何とか保護できないかなって思ったんだよ。ワニスを塗っても保護できる期間なんて高が知れてるだろ。」


 『ケミン、難しい話をしてるわね。アップルパイを作ったのよ。ちょっと休まない?お茶もあるわよ。』

キュリアがやってきて魔法で椅子と円卓を作り出した。


「おおー有難うキュリア、一寸頂こうかな。」

行き詰ってた所だから丁度良い息抜きになるな。今日は凄く気が利くな。


 『今日は、って何よもう!』

そう言いながらも恥ずかしそうにしながら紅茶を入れてアップルパイを切り分けてくれた。


俺は一口アップルパイを食べながら紅茶を飲む。

「キュリア、アップルパイも美味いな。甘さも絶妙だし林檎の歯ごたえも良いね。」


これはヤバイな、キュリアは本当に料理が上手い。毎日食べたくなるな・・・


 「オッホン、宜しいですかなケミン様?」

ラヴォージェは態とらしく咳をして話し始める。


「あー御免、話の途中だった。でさ良い魔法はあるかな?」


 「水魔法で撥水!!と言うのが有ります。物体にその魔法を使うと水の表面張力が増してその物体に水が浸入できなくなります。これならかなりの期間、腐食から守れると思いますよ。」


「かなりの期間てことは、完全じゃないって事か?」


 「水からは守れますが、風からは守れませんから、風から守る方法は、浸潤!!と言うのが有りますが、これは物体に水幕を張る魔法ですので、木材だと直ぐに腐ってしまいますよ。」


「なるほどな、一長一短ってわけか。今回は撥水しておくだけにするか。」

俺は紅茶を飲み終えてアップルパイも完食する。


「キュリア有難う。続きしてくるよ。」


 『行ってらっしゃい。早く帰ってきてね。一緒にお風呂入りましょうね♡』

「入らないよ!!」

此処はきっぱり断っておく。キュリアと混浴なんて危険すぎるからな!


 『もうバカ!!』

またスリッパで叩かれそうになったので逃げた・・・


今度は、ぴゅーっと飛んで船着き場に行く。もう結界も出来たからね。歩く必要ない。


桟橋に着き、試に柱の一本に撥水!!と魔法かける。すると水面から柱に沿って隙間が出来た。おおー!本当に水が避けてる。俺は面白くなって次々に撥水していった。


俺が作業していると、初めて船が往来しているのを見かけた。中型の帆船だな帆に向けて風魔法で風を送って進んでいる様だ、船にも乗ってみたいなぁ・・・


船頭さんもこんな所に船着き場が出来ているので吃驚して何度も此方を見ながら進んでいった。止まるほどでは無かった。急いでたんだろうな。


作業し終るともう夕闇が迫っている。




俺は急いで林檎の家に戻った。



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