第10話 分身の作成



「ラヴォージェ、これから分身を作るから家に籠るけど宜しくー、納得の行くのが出来たらお披露目するよ。」

 「そうね。私も手伝うわ!」


キュリアが何故か張り切ってる。なんでキュリアが張り切るんだ?こう言う時って善くない事が起きるような・・・


 『ケミン様は、分身の作り方は知っておられるのですか?』

「うん、キュリアから聞いてるよ。イメージして分身!!だろ?」

(ラヴォージェ、しーーーー!余計なこと言わないで!)


 『はい・・・(宜しいのですか?キュリア様)』

(良いのよ!!)


「なんか歯切れが悪いけど如何したの?」

 『大丈夫ですよ。ケミン様、納得いくまで分身を作ってきて下さい。』


そう言うとポンとマリーゴールドの花が咲いた。これ何の意味が有るんだ?祝福してくれてるのかな?


(マリーゴールドの花言葉って哀しみじゃない!何て事するのよ!ケミンが気づいてないから良いけど・・・)


「うんうん。頑張るぞー!!」

そう言って、キュリアと二人で家の中に入った。





 俺は、もうとっくにイメージは出来ているのだ!だって長身のサンプルは、ハイエルフがいるのだ。髪型は、ミディアムショートで男らしく、メガネは必須!!

てかメガネないと見えないんだよね。視力が悪かったのだ。服装は、いつも通り白衣で・・・

俺の作業着なんだけどね。これしか思い浮かばない・・・


「よしイメージできた!分身!!」

ぼしゅっと煙が出ただけだった・・・・再度挑戦する・・・


「分身!!ぼしゅっ 分身!!ぼしゅっ ブ・ン・シ・ン!!ぼしゅっ」

「えええぇ?何で出来ないの?キュリア如何なってるの?」


(やっぱり長身をイメージしてたのね・・・危なかったわ)

 「貴方もしかして、身長変えようとしたでしょ。そんな事できる訳無いじゃない。」


「だって!イメージしたら何でも出来るって言ったじゃん!現にキュリアの胸は大きだろ!!ずるいぞー!」


 「胸はほとんどが脂肪だもの!ちょっとイメージで胸元に集中させただけだもの・・・私だって身長は変わってないわよ!!」


 「よく考えてみなさいよ、自分の身長より分身が大きかったら上が余っちゃうじゃない支えられないでしょ?」


(ここで説得よ!頑張れ私、私の野望のために!)


 「私だって小さく成りたかったわよ。でも小さい分身には出来なかったのよ。だからそこだけは諦めるしかないわね。」


「うわーん。マジか・・・やっとデカくなれると思ってたのに・・・」


 「まあまあ、顕現体に合わせた分身作るしかないわね。しょんぼりしないでよ。美味しいご飯作ってあげるから!!早く分身作りなさい。」


「わかったよ・・・分身!!」

(ヨッシャ―――――!!グッジョブ私!)


身長だけ小さくした、先ほどのイメージを思い浮かべる。すると森中から七色の光の粒子が集まってくる。その瞬間、森中が光り輝いた。光が収束すると、生前の姿に成っている自分が有った。


 「キャーッ!!ケミン!!凄くいい分身が出来たー!!」


キュリアがぱふんと抱き締めてきた。おい!!胸に顔が埋まるからやめてくれ!!あー肌の感触も有るんだな!キュリアは喜んでギューギュー抱き締めてくる・・・


此奴がなんで喜んでるんだ・・・俺の分身なのに・・・

 「ケミンの分身!可愛いなー!ケミン可愛いーーーー!!」


「いい加減にしてくれよキュリア。そろそろ苦しいのだけど・・・」


やっとキュリアの抱き締め攻撃から解放される。そして手を引っ張られた。


 「さあさあさあ!!皆にお披露目に行こう!!」

バンッっと林檎の家の扉を勢いよく開けるキュリア、そして叫ぶ


 「ケミンの分身が出来たわよー!!」

「なんでキュリアが言うんだよ・・・」


俺達が広場に降りるとエルフ達が集まってきた。ラヴォージェには、ポインセチアが咲いている。しかし良く花を咲かせるよな。


 「ケミンに分身が出来たわよーーーみんな喜んで!今日はお祭りよ!!」

一番喜んでるのはキュリアだけどな!!如何してこうなったのか・・・


 『やはりこうなりましたか・・・』

「やはりって如何言う事だよ・・・」


 『身長は変えられないかと、(おもにキュリア様の思惑により)思っていたので・・・』

「しってたのか・・・」


 『元気をお出しください・・・』

 「可愛い分身だから良いのーーー!ケミン可愛いわよ!」


「お前が一番喜んでるよな・・・まあ喜んでくれる人が居るなら良いか。」

俺は気を取り直して言った。諦めが、肝心だな・・・


 エルフは次々に跪き、握手を求め「おめでとうございます」と言ってくる。目線を合わせてくれるなんて心憎い気配りである。


ハイエルフの夫婦もやってきた。

「「ケミン様、分身作成、おめでとう御座います。今宵は宴に致しましょう。」」

夫婦で綺麗に揃って言った。そして宴の準備が進んでいった。















 広場には、幾つもの円卓が準備されて中央に果実が沢山盛ってあり、周りに椅子が並べられている、上座には長机と四脚の椅子が準備されている。料理も準備されているようで、ツリーハウスの彼方此方からスープの匂いやら肉の焼ける匂いが漂っている。


「こんなの何処に準備して有ったんだよ。」

 「今更それを聞くの?ラヴォージェに決まってるじゃない。上を見てみなさいよ。」


言われた通り見てみると・・・椅子が円卓が生ってた・・・

 『ケミン様の披露宴ですから。頑張りました!!イリュージョン♪』


「披露宴って・・・あー!この配置、結婚式の披露宴だな!」

 「ケ・ケ・結婚し・し・・・私と結婚式・・・」

シュッポーーー!!っとまさに聴こえそうなほど顔が真っ赤になっているキュリア・・・


「何でそう言う勘違いするんだよ!分身の披露宴だろ!!」


「「まあまあ、ケミン様そろそろ準備ができますよ。お席にお着き下さい」」

ハイエルフの夫婦に誘われ席に移動する。エルフ達も円卓に座り始める。


長椅子の中央右に俺が、左にはキュリアが座る。右端にハイエルフの旦那さん左端には奥さんが座る。


あれ此れ?可笑しくないか?披露宴だから此れで良いのか?


 「ケミンとの結婚式の披露宴・・・」

両手を胸の前に組みポーっとしているキュリア


「だから違うって!!!分身の披露宴だよ!!!」

 「良いじゃない!このまま結婚式にしましょうよ!」

「ぜーーーったいしません!!」


 「チッ、やっぱダメかー、ショボン」

舌打ちするなって・・・本当に何考えてるのか解らないな・・・こんなの強引に持って行ったって無理に決まってるじゃん・・・




皆が揃い、料理が運ばれてくる、スープにサラダにチキンの丸焼き?らしきもの。お酒もあるようだ。皆良い匂いだ、早く食べたい・・・


「「ケミン様、一言挨拶と乾杯の音頭を」」

この夫婦どんだけシンクロしてるんだよ!!


「みなさん、分身の披露宴に集まってくれて有難う。皆のおかげでここまで来ました。これからもみんな仲良く暮らしていこうね。乾杯ーー!」


 がやがやと宴が始まる。お酒は林檎酒のようだな。黄金色に小さな気泡の線が出来ている。スパークリングシードルかな? 一口飲む。うーん美味いー 林檎特有の風味とシュワ―っとする口当たりがなんとも言えない。


「このお酒、美味しいねー」

 「そうですか?お口に合ってよかったです。そのシードルは、エルフの特産なんですよ。」

旦那さんが説明してくれた。


エルフは林檎が好きだものね。お酒まで造るほどなのか。

隣では、キュリアがグビグビ呑んでる・・・大丈夫なのか・・・


サラダにも手を付ける、シャキシャキとした歯触りと清々しい香り、あーー!これぞサラダ!!ドレッシングも美味しい!


 「そのサラダには、クレンソーと言う薬草が使われていますの。その清々しい香りの元ですわ。滋養にもいいですよ。体力回復の効果もありますの。」


今度は奥さんから説明を受ける。薬草サラダか凄いなー


キュリアは・・・まだ呑んでる・・・


スープも一口、ダブルコンソメかな?一口大に切られた野菜と肉が入っている琥珀色のスープ あーーーこんなの食べたら止まらなくなる・・・


最後はチキン?の丸焼きだ!!一口大に切って、パリッと香ばしく焼かれた皮と柔らかい肉を一緒に食べる、ああー本当に美味しい!!


「美味しい!!」

皆此方を見てニコニコ笑っている


こんなに美味しい食事は何年ぶりだろう?

生前でもろくな食事はしていなかったからなぁ。


ハイエルフの夫婦と食べながら談笑していると隣でキュリアが何か言い始めた・・・

 「如何して私じゃダメなの・・・」

そして頭をポカポカと叩かれた・・


「痛いよキュリア!何だよ俺は何もしてないだろ?」此奴、酔ったのか?

 「如何して私じゃダメなのよーーーーうわーーーーん」

今度はいきなり抱き着いて泣き始めた苦しい・・・


絡み酒かよーー・・・


「なんの事だか分らないけど離して・・・」

 「あららぁ、女の子を泣かせたらダメじゃないのケミン様。」

奥さんにも絡まれた・・・


「いやいやいや!俺何もして無いから!勝手に泣いてるんだから!」

 「ケミンが悪いのよーーーうわーーーん」


「此れ如何したら良いんだよーーー」俺の叫び声が森に木霊する


キュリアのブレストプレスを受けながら・・・

夜は更けていった・・・


苦しい・・・

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