第7話 塒(ねぐら)を作ろう
次の日、またもや俺は、森の中を巡回していた。昨日、キュリアを呼びに行くために途中で切り上げたのだ。
どうせならと思い、再度端から端まで巡回していく。そして、とうとう見つけた。森の食物連鎖の頂点を・・・
ある日ー♪森の中ー♪熊さんにー出会ったー♪花咲く森の道ー♪熊さんに出会ったー♪
思わず歌いましたよ、何故かとっても嬉しかった。熊さん会いたかったー。見たのは、たった一頭でしたが、赤茶色い毛皮でかなり大型のレッドグリズリーベアー。支流で魚を取ってた。俺は、クマの周りをぐるぐる回ってた。
このモフモフ触りたい!!埋もれたい!!動物の毛皮最高!!まだ触れないんだけどね・・・ハアハア、ちょっと落ち着こう。そうして又、移動していく。
そして、もう一頭、南の方にいたーーー。虎さんーー森の中をのしのし歩いてた。もっと増えてくれるのかな?この虎さんもかなり大きい、動物園で見る虎の倍くらいあるんじゃないか。
そう言えば、岩ウサギは獣人になったけど、ネコ科の獣人は居ないのかな?後でラヴォージェに聞いてみるか。
南の断崖の方まで確認して、俺はラヴォージェの所に戻った。
今のラヴォージェには、巨大な紅梅と八重桜と朝顔と曼珠沙華が咲いていた・・・これ意味あるのか?季節がバラバラだろ・・・
「ラヴォージェさんラヴォージェさん!なんでこの花が咲いてるのですか?」
「咲かせてみたかったのです。全部の季節が揃ってるでしょ?良い感じです。」
何が良い感じなんだよ!意味わからないわ!
「すべての季節が揃ってるなんて・・・イリュージョンでしょー!!」
「イリュージョン♪・・・」
そしてまた謡い始めた・・・その歌!聞き飽きたよ・・・お前、いい加減その歌から離れろよ!
「失礼いたしました。」
それでも鼻歌は歌っている・・・此奴は如何にもならんな・・・
「ラヴォージェさん、今日は熊と虎を見つけたんだよ。それでね。岩ウサギの獣人は、居るけど猫科の獣人は、居ないのかと思って聞きたいのだけど?どこかに居るの?」
俺は改まって聞いてみた。
「虎が居たのなら普通に名付け為されば良いのでは?」
「ああ!やっぱり名付けなんだ。でも虎だと凶暴そうで獣人にしたくないなぁ。もっと優しそうな種族は居ないかな?」
「猫科は肉食ですからどの種族も変わらないと思いますよ?強いて今この森にいる小型の猫科は、ヤマネコ種ですけど彼達は放っておいても時間がたてば獣人になりますからねぇ。」
「放っておいても獣人なる種が居るの?それで良いんだけど・・・」
「それなら多分、後二百年もすれば、獣人になると思いますよ。でも今名付け為されば、住人がさらに増えてエナジーが溜まりやすいと思いますが?」
「そう言われても、何処に居るか分からないんだよ。今日も小さい猫は、見つからなかったし。」
「アハハハハ、それは、隠れているのでしょう。簡単に見つかったら大型の肉食獣に食べられますから。ちょっと呼んでみましょうか?」
呼べるのかよ!!此奴、俺を揶揄って遊んでるんじゃないだろうな!
「少々お待ちください!」
そう言うと末端の小さな枝を回転させ始めた。フムッっと気合を入れて小枝を切り離す。
小枝はくるくると回転し空高く上った後、俺の前にポトリと落ちた。
「これが何?」俺が訝しく思っていると、何処からともなく小さい猫達が三匹ほど寄ってきた。
「マジか!!何これ?」
「マタタビマジックで御座います」
マタタビはマジックじゃないだろ!猫の好物だから!!
「でもヤマネコ達が来たでしょ?」
「確かに来たけど・・・騙されてる気がする・・・」
マタタビの木に山猫達が頬擦りしている。かなり気に入っている様だ。山猫達は豹なような模様であるが、サイズはかなり小さい、家猫から比べたら大きい方だが、一メートル位である。俺はぽわんと顕現して一匹に話しかけた。
「俺は、この森の意思ケミンだよ。君は何族かな?」
「ケミン様ぁ、私は、山猫族にゃぁ♡」
山猫は恍惚とした表情で答えている。目を細めて身体をもじもじさせて小枝に擦り付けている。何を差し置いてもマタタビが最優先の様だ。
「そうか。では、君達に名前を付けるよ。君達は、これからオセロット種と名乗るがいい。」
「にゃぁ?」
その瞬間、三匹の山猫達は、まばゆく光り人型になった。
身長は以前と変わらず、百十センチ前後で有ろうか、ショートの髪型で所々黒のメッシュが入った金髪で頭の上に黒い耳が付いている。
眼は大きく瞳はブルーとゴールドのオッドアイである。鼻先から上唇は、口唇裂の様に綺麗に線が入っている。実に可愛い。口元からは横に三対の髭が出ている。身長は小さくても体は大人である。まな板では無いとだけ言っておこう。ヒョウ柄のビキニを身に着け、ヒョウ柄の長い尻尾も付いている。未だに小枝に体を擦り付けてるオセロット達に俺は言った。
「皆を集めて集落を作ると良いよ。皆で仲良く暮らしてね。」
やっとマタタビの効力が切れたのか、三人は立ち上がった。そして、自分達の姿を見て驚いて、やがて嬉しそうに微笑みながら三人は、手を取り合って回り始めた。
「人型になったニャー」
今気付いたのかよ・・・
「ケミン様、有難う御座います。皆を集めて仲良く暮らしますニャン!」
一頻り喜んだ後、ビシッと敬礼すると三人は森の中に行ってしまった。トテトテと歩く姿が可愛い。尻尾も左右に揺れていた。俺より小さい種族も居たんだな。
さてさて、やっと寝れそうだな。
「ラヴォージェさん、俺は、五百年程寝ようと思う。ついては、塒を作ろうと思ってるのだけど、ラボージェの根元に穴を掘っていいかな?」
塒と言ったらやっぱり穴だよね。穴を掘って枯草でも敷いて寝ようと思っていた。
「穴ですか?別にかまいませんが・・・普通に家を建てたら如何ですか?」
訝し気にラヴォージェは言った。
「家なんて建てたら時間が掛かるだろ?穴掘りだったら土魔法で直ぐだし」
「家も直ぐに建ちますよ。待っててください。」
そう言うと、幹から何本も枝を伸ばし始めた。土台の様になると幹と枝の間に花を咲かせ果実が出来る、巨大な林檎であった。林檎の上部は上枝に固定され底は土台の上にある。
真赤な林檎には窓と扉があり、中にはベッドと卓と椅子まで装備されていた。
「林檎のお家の出来上がりです。イリュージョン♪」
謡わなくていいから・・・
「はぁ、何でも出来るんだなぁ。」
なんか疲れてしまった・・・もう寝ようか・・・
ああそうだ、キュリアにおやすみの挨拶をしてこよう。
俺は顕現して湖畔に行く、そしてキュリアを呼んだ。
「おーい。キュリア。居るかー?」
ぽわんと顕現体が現れる。何となく察しが付いてるようで寂しそうな感じである。
「あっ、すずちゃん。ラヴォージェの木に林檎の家を作ったんだよ。そこで五百年程寝ようと思うんだ。一緒に寝る?」
俺は努めて明るく冗談を交えながら言う。
「バカ!一緒に寝ない!」
泣き怒りの様な顔をして言い返された。今生の別れでもないんだから・・・ちょっと寝るだけなのに・・・
「まあまあ、もし暇だったら遊びに来なよ。多分寝てるけど」
「判った。おやすみなさい。」
「それじゃーまた五百年後に、おやすみ。」
俺は戻ってきた。
「ラヴォージェ、それじゃー寝るからね。森の事宜しくね」
「お任せください!五百年後に驚くほどに発展させておきます。」
そこまで頑張らなくて良いよ!
俺は林檎の家に入ると時間解除を行い、ベッドに横たわり深い眠りについた・・・
おやすみなさい。
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