閑話 キュリア

彼奴、本当に寝ちゃったわ。寝る必要なんてないのに・・・


私は、湖畔の卓と椅子の場所に来ている。彼と初めて一緒に来た場所。ここからの景色は一番綺麗に見えると私が思っている場所。私は椅子に腰かけて湖を見た。


 今日も湖(私)はキラキラ輝いている。こんなに綺麗な湖が有るのに寝ちゃうなんて・・・


 私って自意識過剰なのかな?自問自答する。それでも答えは出なかった。彼って何を考えているのだろう。


 私は昔から小さい人ショタが好きだった。彼の生命反応を初めて認識したのは、700年前でどんな人なのだろうか?少しワクワクしていた。


やっと目覚めたのでちょっと話でもしようと近づいた。顕現体を見た時、中学生キターーーー!とか恥ずかしくも思ってしまった。


 彼には、此方の思いを読む方法だけは教えてない・・・そんな事を教えたら私の想いが、全部読まれちゃうもの・・・


これだけは、ずっと秘密にしておきたい。








 私は、人里に向かった。この四ヶ月で村というより町になっている。国王の城はまだ建造中であるが湖の南側に巨大な穀倉地帯が広がり、湖の湖畔の所々に村も出来上がっている。


それぞれを繋げるように街道も出来ている。総人口は十万人以上いるだろうか?何処から集まってきたのか不思議なくらいだ。


 国王には、元村長になってもらった。ヨハンソン・ケプラーという名前らしい。私が初代国王なのだが、私は精霊だし人の国は人が治めるようにと説得してなってもらった。


 今は建国祭が行われている。人々は皆笑顔で、彼方此方から音楽が聞こえ広場では踊っている。露店も人々で賑わっている。




 でも私は楽しくない・・・





 この世界に初めて年号が付いた。精霊暦元年、名付けしてしまったあの日が、一月一日だそうだ。


一年は三百一日こちらの方が地球より公転周期が短い様で、八ヶ月で一年、偶数月は三十七日で最後の八月のみ三十八日が一月になる。


 そんな事はどうでもいいか・・・



 私はあの場所に戻ってきた。


はあぁ・・・ 溜息が零れる・・・溜息を零すと幸せも零れるわよ、とそんな声が聞こえてきそうだ・・・


 あの楽しかった日々が思い出される・・・


バカな事を言い合って過ごした日々、星空の下で語り合った日々、「月が奇麗ですね」なんて告白されたのかと思って吃驚したわ・・・


私がこんなに想ってるのに寝ちゃうなんてぇ・・・ 何か段々腹が立ってきたわ!

彼の家に殴り込もうか・・・でも寝てるしなぁ・・・ちょっと寝顔も見てみたいな・・・





 私は、分身でラヴォージェの木に来ている。


「これはこれは、キュリア大精霊様、ようこそ御出で下さいました。ラヴォージェは、歓迎いたします。」


ラヴォージェは花を咲かせる。今日は、カサブランカが咲いた。私がカサブランカみたいって事なのかな? 


カサブランカの花言葉は・・・「純粋」「無垢」「祝福」「高貴」「壮大な美しさ」「雄大な愛」「威厳」「甘美」か、恥ずかしくなるな・・・

「初めましてラヴォージェ、ケミンの家はどこにあるの?」


「こちらに御座います。」


幹の上の方、葉に隠れるようにしてその家はあった。巨大な林檎の家、ケミンが寝てる家だ。


 私は、其処まで飛んでストンと踊り場に降りて言った。 

 「入って大丈夫かしら?ケミンは怒らないかな?」


「それは大丈夫でしょう。今は寝ておりますが、キュリア様のようなお美しい方が側にいて、喜ぶことは有っても怒ることはないでしょう。」


 「ラヴォージェは、お世辞が上手ね。彼奴にも見習ってほしいわ。」

「お世辞などと、本当の事を言ったまでに御座います。」


 「うふふ、有難うラヴォージェ、ちょっとお邪魔するわ。」


「鍵は付いて居りませんので、どうぞ御ゆるりとお過ごし下さいませ。」


私は林檎の家の扉を開けると中に入った。


 家の中は、ワンルーム形式になっており、薄いクリーム色の壁紙に、卓と椅子が四脚あり、小さなクローゼットがある。ベッドには、ケミンが寝ている。



 「本当に寝てるんだ・・・」


時間解除しているのであろう、小さな顕現体が、キラキラと小さな光を放っている。

「なんか可愛い・・・」


スヤスヤと眠るその姿は、軽く微笑んだり口をへの字に曲げてみたり、夢を見ているのであろうか、表情が変わっていく。


 私の愛しの人・・・恥ずかしくて言えないこの想い・・・


此処でずっと貴方を見てようかなぁ・・・


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