家のこと

バブみ道日丿宮組

お題:シンプルな小説家 制限時間:15分

家のこと

 睡眠時間を文字にしよう。

 そう思って30分。思うようにいかない。

 まず思考が全部Zzzになるのがいけない。もうちょっとなにか思考があればいいのだが、思考があれば、それは睡眠といえるのだろうか?

 確かに寝言というものが睡眠時の人からは発せられる。

「もう、食べれないよぉ」

 いつから寝てたのか幼馴染がおへそを出しながら、ベッドで眠ってる。寝言をいうまでに熟睡してる。そんな彼女から返答があれば、思考があるといえる。

「ご飯美味しかった?」

「にゃむにゃむ」

「明日ははれるかな?」

「ご飯食べたいぅ」

「爆炎魔法は使える?」

「まーじかるぅ」

 何度言葉を作っても、問いの答えはもちろん返ってこない。

 自分だけの世界をもつ……それが睡眠と言えるかもしれない。

 そういうことならば、人間は常に中二病の世界に包まれてるかもしれない。

「……ちゃんと布団かぶって」

 さすがに風邪を引くだろうと、幼馴染に布団を被せる。

 が。

「暑いのかな」

 布団は蹴飛ばされて、落下する。

「……」

 部屋の温度を確認してみると、22℃。それなりの気温で暑いような寒いようなそんな感じ。

 エアコンをつければ、余計に風邪を引きやすくなる。かといって、窓を開けるのは嫌だ。外の空気は汚いから、なるべく部屋に入れたくはない。

 悪が存在するのならば、それは外にある。内には基本味方がいる。もちろん、家庭事情にもよる。家は放置主義で、お金が毎月50万振り込まれる。それを家賃やらにつぎ込んで生活してる。一般家庭と違ういわゆるお金持ち。

 だからこそ、大学生を終えても、家に居続けることができてる。

 ちなみに後継者という枠組みにわたしは入ってない。なぜならば、既に兄がその役目をこなしてる。わたしは家族会議にも呼ばれることはない。愛がないというわけではないだろう。世間話ぐらいはたまに画面付きの通話サービスで行ってる。とはいえ、放置だ。

 わたしがしがない小説家になっても、彼らは首を突っ込んでこない。何を書いてるのかも興味はおそらくないだろう。会話で本の内容が出たことはない。

 仮にわたしたちの話を小説にしたとしても、彼らは文句をいわない。

 それはまるで存在してないなにかを形にしてるようで、たまに寒気を感じる。

 だけど、その環境がわたしの世界なのだ。

「おはよう」

「なに? 起きたの?」

 朝の挨拶を作った幼馴染は、わたしの側へとやってくる。

「進んでる? 入った時集中してたから寝てたんだけど」

「合鍵を渡してるから自由に入ってもいいのだけど、声ぐらいかけてくれてもいいよ」

 彼女はルームシェアをしてる。

 7個ある部屋のうち、1個を使ってる。

 部屋にはどれにも鍵がある。

 だから、鍵をかければ基本的に入れない。

「まっ、そうだね。ご飯食べる?」

「うん、食べる」

 わかったと彼女は部屋を出ていく。

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家のこと バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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