もぐらのひ

お題：早いモグラ 制限時間：15分

もぐらのひ

「穴掘るの、なれてきたね」

「そりゃ毎日毎日同じ作業してたらなれてくるよ」

「僕が掘れればよかったんだけど」

「怪我したんならしかたないよ。私が代わりにできる間に治しなよ」

「そうできればいいんだけどね、複雑骨折だからなかなか……」

「ふーん。じゃぁしばらくはあなたの家に泊まる形になるかなぁ。着替え置いてあるので足りるかなぁ。下着は持ってきたのと足せるけど、服は……どうかなぁ」

「できる家事はするから」

「移動がしづらいだけだものね」

「そうそう。これが足じゃなくて手だったら、もっと大変だったよ」

「そうね。あなたの身の回りを全部しなくちゃいけなかった」

「あまり急がなくてもいいからね。僕らには太陽の光は結構毒だから」

「外に出てるモグラもいるよね？」

「彼らは進化した個体だよ。普通はそうじゃない」

「外のほうが餌があるからそっち方面に変わりたいな」

「望んで変われるなら、誰しもそう願うだろうね」

「そうね。願いが叶うみたいにいいことだらけ」

「家の周りの土も大分溜まってきたから、外に郵送したいね」

「業者さんがくるのは明後日だっけ？」

「そうだよ。月曜日と木曜日が回収日」

「まとめて袋に入れておかないと怒られるね」

「たまに石と粘土混ぜちゃうモグラもいるらしいよ」

「資源として使えるのにもったいない」

「外のもぐらには通過代わりに使えたりもするらしいよ」

「なら、余計に捨てるなんてもったいない！　引き取るとかできないの？」

「袋に入ってるのは土だからね。そこから見つけるのは結構手間だよ」

「確かに。パッと見でわかったら、業者が回収しちゃうかも」

「ないものはない。あるものはあるとして実行するしかないね」

「あと10メートルぐらいで地上かな。大分埋まってたね」

「うん、君がきてくれてほんと助かってるよ」

「報酬はあなたの手料理でいいからね」

「いい虫を使うよ」

「楽しみ。じゃぁ、もう一仕事行ってくるね」

「いってらっしゃい」