流れゆくは

 僕の学園からほど近いところに、大河が流れている。轟々と音を立てて流れゆく流れは、かなりの知名度を誇る。大河と青々とした草原をバックに写真を撮る観光客も多い。

 あれは僕の日課の釣りをしているときだった。どんぶらこっこと、妖精が上流から流れてきたのである。妖精。妖精だって!そんなの、きょうび現実世界にいるものかと信じ難いだろう。それが、実在したのである。

 大河の澄んだ流れにのって、きらきらと黄金色に光る物体を見つけたときは、本当に軽い気持ちだった。釣り針で引っ掛けて、手元に手繰り寄せた。

 物体の正体がてのひらに収まるサイズの気絶した妖精の女の子―――ほら、あのティンカーベルを思い浮かべてもらえればいい―――だったときは、今が現実かどうか疑ったね。

 とりあえず家に帰って、ずぶ濡れの妖精の身体をハンドタオルで拭った。目覚めを待っていると、すみれ色の瞳がゆうっくりと開いた。それはそれは美しかった。

 でも困ったことに、僕には妖精の言葉が分からなかった。どうも人間の言葉と妖精の言葉は違うらしい。異文化コミュニケーションの強化版。

 ボディランゲージでなんとか意思疎通には成功した。そこまでだいぶ苦労したけどね。

 妖精の羽根の上端が薄茶色に焦げていた。身振りで伝えてくれたところによると、昨夜の夜間飛行中に、落雷で大河にぽとんと落っこちてしまったようなんだ。災難な話だね。

 彼女にホットミルクを出したり、会話しているうちに、学園に登校する時間がやってきた。ここでサヨナラバイバイとはならなかった。僕はどうやら妖精に懐かれちゃったらしい。ジャケットのポケットに妖精を忍ばせて登校だ。

こんなことしていいのかな。風紀に引っかからない?妖精を持参するなって校則があったらアウトだぜ。なーんて。ま、僕は風紀委員長だから、平気の平左なんだけどね。



お題:「雷」「妖精」「激しい流れ」

ジャンル:「学園モノ」


学園ものか……?

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