「明、どうして……」

 京子がその場に泣き崩れた。

 「俺、正当防衛だよな?」

 ほら、と言って真っ赤な左腕を顔の横まで上げた。

 「……過剰防衛だと思う」

 恐ろしさのあまり、声が震えていた。

 「いやいや、正当防衛でしょ!」

 明は困ったような笑みを浮かべながら立ち上がった。

 京子は泣きながら叫んだ。

 「殺したんだよ!やりすぎに決まってるでしょ!」 

 史帆も小さく何度もうなずいた。

 「このことは、言わないでくれるよな?」

 京子と史帆は下を向き何も答えなかった。

 「おい、何とか言えよ!」

 明は烈火のごとく怒りだした。

 そして卓也に刺さっている包丁を抜き、京子と史帆に向かって構えた。

 「おい!アインス!一人だけ助かるんだよな?」

 目だけで上を見て問いかけた。

 「そうですね。あと二人、君が殺せば助かります」

 アインスの声が、スピーカーから優しく鳴り響く。

 うんうんと小さく頷き、明は目線を京子と史帆に変えた。

 「あーあ。私が殺したかったのに」

 京子は戸惑い史帆を見上げた。

 「史帆?」

 史帆は担いでいたリュックサックからスタンガンを取り出した。

 そして躊躇なく京子背中に押し当てた。

 バチバチと音がして、京子は気を失った。

 「おい、どういうことだよ」

 明は右手でぎゅっと包丁を握り直した。

 「メールを送ったのはアインスだけど、呼び出そうと言ったのは私」

 明は怪訝な表情をしていた。

 「あの動画がフェイクなら、どうしてあそこまで京吾を追い詰める必要があったの?」

 スタンガンのスイッチを入れ、バチバチっと音を立てながら明に近づく。

 「はあ?」

 明の目が不気味に細められる。

 ゆっくり近づく史帆に明も少しづつ距離を縮める。

 「お前たちを許さない」

 手を伸ばせば届きそうな距離まで来た。

 史帆は明が攻撃を仕掛ける前にスタンガンをお腹目掛けて突き出した。

 明はかわしながら包丁を史帆の頭目掛けて振り下ろした。

 はっとしたが驚く間もなく頭に衝撃が走り、つうっと血が顔に流れてきた。

 「ああああぁっ!」

 史帆は頭を押さえ、絶叫した。傷口を触るとわずかにへこんでいた。深いが骨には達していなさそうだ。

 すぐさま攻撃してくる明の包丁目掛けてスタンガンを繰り出した。

 「いあああああ!」

 手に当たったようで感電し、明は前に倒れこんだ。

 「痛い、痛い……」

 痙攣している明の背中にもう一度スタンガンを当てた。

 明は何も言わずに気絶した。

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