黒髪の男子高生
世間の学生らが夏休みを満喫している。
そんなとある日。
ブランコに乗る2人の内、右側に座る黒髪の男子高生。
そんな彼は……
「マジか? 嘘だろ?」
表向きは軽快に言葉のキャッチボールをしているように見えるが、あくまで表向き。
心の中では、
やっ、やべぇ……これ夢じゃないよな? 現実だよな?
常にそんな感情に溢れていた。
まぁ、そんな状態になるのも致し方ないか。
彼の名前は、
今はこんなにも不甲斐ない姿だが、普段の彼は……何処にでも居る高校生と言って良いだろう。
男子は勿論、女子の友達も多い。生活態度も成績も普通。それこそザ・アベレージという言葉がふさわしい。
しかしながら、彼の幼少期は一言で言うとガキ大将タイプ。戦隊シリーズやらヒーロー物に夢中だった事もあって、公園やこども園では良く友達を引連れて遊び回っていた。かくして、この公園も思い出に残る懐かしい場所の1つ。
まぁ先生方からすると、世話のかかる園児だったに違いない。同じこども園で働いていた母親も気が気ではなかったはずだ。
それでも、その性格が1人の女の子を救ったのは間違いないだろう。そして現在に至る一因となった事も。
そんな彼も小学校へ入ると、徐々に落ち着きを払うようになった。そう考えると、今の彼の面影が出来上がりつつあったのは、意外と早い。
もちろん、性格自体が変わったという訳ではない。持ち前の明るさとコミュニケーション力はそのまま。変化があったと言えば……バスケットボールにのめり込んでいった事。
小さい頃からバスケットボールは手にしていた。だが、小学校へ入学し飛び入りで参加したミニバス部の練習で、彼のバスケ熱は燃えに燃える事となった。
おかげで、小学校・中学時代には県の代表にも選ばれる程の腕前を身に着け、特技として自慢……いや? 自慢出来るもの
高校に入学して早々、練習試合で負った膝の怪我のせいで、それらは全て泡となって消えたのだから。
でもまぁ、それを抜きにしても彼自身、高校生活には満足していた気がする。
男女共に友達は多い。容姿を気に掛けたり、モテない現実を嘆いたり、テレビに映る同年代、それも海外で活躍する女優に憧れたりと、全国各地の男子高校生達と同じ様な日常を過ごしていたはずだった。
隣のブランコに座ってる女の子が来るまではね?
この約2ヶ月の間には色々あった。有り得ない事も驚く様な事も。
少なくとも以前のような平凡・平穏・平和な高校生活ではなくなった。
だが、今はこうして夢か現実かさえ分からない位幸せなら、満足なのではないだろうか。
それ程までに……彼女と呼べる関係に至った、隣の女の子の存在は大きいらしい。
「ねぇ聞いてる? さんちゃん。ふふっ」
「あっ、当たり前だろ?」
って! 現実に決まってんだろ俺。それにしても……やっぱ笑顔可愛すぎだろ?
良い意味でも悪い意味でも、頭の中が彼女の事で一杯になる位に。
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