第8話 毒
5月初旬
「3人で行ってきてくれない? ここ」
快音くんがそう言った。
3人とは今ここにいる俺、夏向、悠楽のことだ。
「心霊ホテル……? うわぁ……」
そんな反応をしたのは悠楽だった。
「男3人で頑張って」
「はぁーい」
昔ここで殺人事件が起きた。その事件は解決したが、その事件が起きたホテルで自殺する人が続出した。その後、心霊スポットとして広まった。それがこのホテルである。
「うわぁ…古いなぁここ。崩れるんじゃね? ここ」
「そんな簡単に崩れないだろ」
こんなとこでもわいわいやってる。
「どれくらいかな、ここ」
「6くらいかな。夏向はどう思う?」
「えー? 5かな、でも6だと思う」
「どっちなんだよ」
「5で」
「凛空はどう思う?」
「え?」
急に聞かれても…
「わかんない。いることはわかるけど」
最近近くにいることが分かるようになった。なんでかはわかんないけど。
「右くるよ」
悠楽がそう言った。すると本当に右から来た。
「じゃあ右俺行く」
「じゃあ俺左で。凛空奥頼んでいい?」
「わかった」
悠楽が右、夏向が左、俺が奥で分かれてやることになった。
◇◇◇
真っ直ぐ向かってくる。攻撃に何の特徴もない。それほど強くはないだろう。俺は手を前に出す。そして水色の龍がどこからか出てきて怪物を飲み込む。これが『
怪物は光となって散った。
俺は奥に進んでいく。建物の感じが変わる。
たしかここは別館あったっけ…
ここにさっきよりは強い怪物を感じた。
なんで感じるのかは、悠莉から聞いたことがある。魔術師には魔術師の五感というものがあって、嗅覚・聴覚・視覚・感覚・言語に分かれている。魔術師は五感のうち1つの能力を持っている。ただし、俺や悠莉の血筋はそれを全て持っている。魔術師の五感は、普通の人の五感とは同じようで違う。それぞれ普通の人よりそこの部分の能力に長けていて、それで怪物がいるかどうか、その怪物の強さなどがわかったりする。俺がどの能力で感じているかはわかんないけど、近づいていることはわかる。
「入ってきてあっさりやられたから大人の魔術師かと思ったら、子供か」
「悪い? 子供で」
「別に。強いならそれでいい」
俺は剣を出した。『黒剣』、これも悠莉と共通の技。
怪物が手に炎の玉を持った。そして俺目掛けて次々に投げてくる。
俺は剣をしまってその炎の玉を避けた。そして近づいて水龍を放つ。
それだけじゃ倒せる気がしなかったからさらに接近して今度こそ剣で斬る。
そして怪物は散った。
この近くの怪物はいなくなったみたいだ。
◇◇◇
一人になった。剣一本の俺にとって一人が一番不安だ。まあ、やれるとこまでやってみるだけだ。まずは一体。とりあえず腕を片方切り落とす。
踏み込んでスピードを上げる。そして心臓のあたりを一突き。
怪物は消えていった。
さっきのにつられてもう一体来る。
かなりのスピードで近づいてその勢いで弱点を斬る、それが俺の戦い方。
でもこいつは一撃じゃ倒せなかった……背後から攻撃される……
なにかが当たった。すごい痛い訳じゃない。そして向き直る。すると急に激痛が走った。
「くっ……これは……」
毒だ。これは厄介。厄介すぎる。
「毒、驚かないんだね。前に来た魔術師はこの世の終わりみたいな顔してたけど」
「そんなに……痛くないし」
「そんなに強がらなくていいんだよ」
「強がってないし」
怪物が近づいてくる。しゃがみこんでいる俺の胸倉をつかんで持ち上げた。
「うっ……」
「怪物になって仲間になるなら毒解いてあげるよ」
「断る。怪物にはならない。絶対に」
「なんで皆そう言うんだろうね。怪物も悪くないよ」
「お前、元魔術師か?」
「まあ、そうだよ」
「馬鹿……なんだな。弱いんだな、お前は」
「は? なんだよ」
「命乞いをすんのは弱い証拠だ。力があるならそんなことしない」
「結局敵か、後輩君も」
今だ。俺は剣を出した。それも怪物に近いところで。怪物に近いところで刺さるような向きで剣を出すと怪物に刺さる。今回も怪物に刺さった。
「あ゛っ……お前……やったな」
そう言って俺に手を向けた。また激痛が走る。毒の強さが強くなったのか。でも、まだ動ける。
怪物に向かって走る。近づいたところで刺したまんまの剣を手元に戻す。そして5連撃。高速で斬る。
怪物が光となって消える。
最後の人あがきというところだろうか毒の強さがさらに強まる。もう声も出ないほどの痛み。これは動けない。幸い、周りには怪物はいない。
俺は仰向けになった。
「はぁ……はぁ……」
息が荒い。誰か早く気付いてくれるといいけど……
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