第6話 運命

 午後11時 東京のとある空き家


「ここは住んでた人が死んじゃって、今は空き家。調査に入った人が体調崩しちゃって、まともに調査出来なかった。だから俺たちに回ってきた」

「夜にやる意味あるの? これ」

「住宅街は人目が多い。そんでもって隠す膜も張れない。だから夜やる。音ぐらいは大丈夫だから」


 空き家に入っていく。今にでも崩れそうだけど悠莉はずかずか入っていく。


 なんか視線というか、なんか感じる。そっちに振り向くと怪物がいた。


「うわっ……」

「凛空、任せるよ。そいつ」

「え!?」

「一応使えるんだろ? ピンチになったら助ける」

「……やるしかない感じか」

「勝手に入ってくんな!!!」


 そう言って怪物は向かってくる。


 まず相手の一撃目を交わす。足に力を込めて蹴る。足が炎に包まれていた。


 入ってくんな?さっき言ってた住人か?人……なのか?

 俺は立ち止まってしまった。


「躊躇するな、凛空」


 悠莉にそう言われ、もう一撃決める。すると怪物が光となって散った。


「ナイス。火蹴かしゅうといったところか」

「あれって……人間……? 人間を……俺……」

「そんな重く考えるな。今のは霊型怪物。その中でも狂暴化した奴だ。元は人間だけどもう人間じゃない」

「でも……」

「さらに来るぞ。今のに寄って来る。2体来る。1体は任せるよ」


 悠莉の言った通り2体来た。


「終わりだ」


 悠莉の一言。その一言で悠莉に向っていた怪物が散った。


 何でそんなに躊躇なくできるの……?今はそんなこと考えるのを辞めた。

 そして怪物を蹴る。二連撃で決める。そして怪物を倒した。


 はぁ……はぁ……息が上がる。4回蹴っただけなのに。


「俺、こんなの、続けていけるかな……この先、色々持たないかも……」


 俺は膝をついてしゃがみ込む。


「俺たちは裏側の影の人間。誰にも見られず、感謝もされない。ひたすら怪物を倒す。これが俺たちの仕事だよ。これが運命だ。運命には、抗えない」


 悠莉はそう言った。



 翌日

 教室に入る。朝の始業時間が遅くて良かった。魔術師の学校だからみんな夜にいろいろあるから遅いのかもしれない。


「おはよう、凛空」

「おはよう」


 そして誰か近づいてきた。確か表校舎の…


「悠楽、お前昨日何してたんだ」

「なんだよ想空」

「だから、昨日お前何したんだよ。なんか光線出したりさ!」

「何言ってんの? 想空」

「は? とぼけてんじゃねえよ」


 想空が悠楽に掴みかかった。悠楽は表情一つ変えない。


 夏向が止めに入ったがはじかれてしまう。見かねた悠莉が間に入って終わったが、想空は本気っぽかった。

 そして俺たちは裏校舎へ逃げるように向かった。


「やっぱり俺たちは同じにはなれない。君たちとは」


 教室を出る時に悠莉はそう言った。



 午後

「何してんの、悠楽」

「いやぁ……」

「まあ、いいけどさ」


 悠楽と快音が今日の喧嘩の事について話していた。


「なんかね、国も、上層部も、頭よくて気付いちゃうような子と一緒にしちゃうかなぁって。大阪は単体なのにさ」

「確かにね」


 大阪にも魔術学園があるのか。


「前からあったの? こんなこと何回も」


 聞きたかったから聞いてみた。


「盗聴器とか、遠隔操作のロボットで侵入してくるとか、何回も。でも確実な根拠があったのは初めてかな。昨日怪襲があって悠楽が術式を使ったのは事実だから」


 夏向がそう言った。


「へぇ…」


「そうだ悠莉、さっき言ってた同じにはなれないって……?」

「あ、それはさ、昨日も言ったけど、俺たちは裏側の影の人間。影と光が交わることはない。っていうこと」


 そう言って悠莉は立ち去ろうとする。


「どこ行くの?」

「出張届、出してくる」

「悠莉ー、お土産待ってるねぇー」

「やだ。快音だけには絶対やだ」

「まあ、いつかの時にいっぱいもらったしね。」


 この2人はどういう関係なんだ。未だにわからない。



 快音くんもどこかへ行ってしまった。



「そうだ凛空、初仕事どうだった?」


 夏向がそう聞いてきた


「うーん…なんか、みんなすごいなって。あんなのを何回も相手にしてるんだろ」

「どうやって怪物になったかを知った。って感じか」

「だんだん慣れてくるから。それまでは大変かもだけど。ね? 夏向」

「あぁ。慣れだな。桜愛は倒すことに躊躇なかったっぽかったけど」

「だって怖いじゃん!」

「慣れかぁ……」

「凛空最初にしてはうまかったって悠莉言ってたけど」

「いやぁ……でも悠莉、凄かった」

「あいつは桁違い。物心ついたときから桁違いの強さだった」

「悠楽が言うんだから本当だよ、凛空くん」

「へぇ……」



 翌日の深夜


「Sランク怪物……暴れやがって……人間はお前の食いもんじゃねえよ」

『悠莉、変われ。俺がやる』

「わかった。あんま暴れんなよ」

『わかってる』


 フードを取る。黒髪に黒い猫耳、黒い尻尾があった。


「俺と戦う意思があるんだな。お前らは。戦っても無駄なのにさ。まあ、楽しませてくれよな、弱いなりに」


 ◇◇◇


「こんなんがSランク怪物か」


 フードを被る。もう猫耳や尻尾はない。そして夜の闇に消えていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る