第2話 朝吹悠莉

 目覚めると病院らしきところにいた。


 俺、生きてる……


 そしてそこには『漆黒の勇者』だと思ってたさっきの男の子がいた。

 黒髪で漆黒の目。服は黒だが勇者というには……

 あの時はフードでよく見えなかったが首に包帯が巻いてあった。


「起きたか。風晴くん」

「えっと、どちら様ですか?助けてくれたのは覚えてるんですけど……」

「あ、自己紹介ね。俺は、朝吹あさぶき悠莉ゆうり。この一件の担当になった。よろしく」

「よ、よろしくお願いします」



「なんで生きてるんだろう?って思ったでしょ、君」

「あ、はい……」


 完全に読まれてた……


「あの時、あいつ、鳴宮なるみや快音はやとっていうんだけど、快音は君を殺さなかった。ただ気を失わせただけ」

「そうだったんですか……」



 コンコン


 誰かが病室のドアを叩いた。そして入ってきたのはスーツの男性。

 警察の人だろうか…?


「えっと、ここに担当者の方がいるって聞いたんですが」

「あ、俺です。朝吹悠莉です」

「あ、そうでしたか」


 悠莉くんが子供なことに驚いている様子だった。俺も驚いた。



 2人は何かわけのわからないことを話している。俺に関することだろうか…



 警察の人らしき人が病室を出て行って、悠莉くんが近寄ってきた。


「お前の家族、生きてる」

「ほ、ほんとに⁉」


 死んだと思ってた。床があんなになってたし……




「お前は自分の過去、知ってるか?」


 悠莉くんはそう聞いてきた。

 自分の過去……?わざわざ聞くってことは何かあるのか?


「過去って、何?」

「知らないのか」

「何があるの?俺に」

「いや、」

「教えて。なんかあるなら。もう、何聞いても大丈夫だから」

「……わかった。完全にそうかはわかんないし、正確な書類とかもないけど、もしかしたら、お前と、お前の両親、 本当の親子じゃないかもしれない」


 すぐには信じられなかった。


「そう思った根拠は?」

「血液型。親はBとO、お前はAだった」


 今まで俺は自分の血液型を知らなかった。単純に調べてない。そう思ってた。クラスにそういう奴居たし、血液型なんて気にすることなかった。

 今回の一件で一応血液検査して分かったのか……


「凛花は?」

「Bだった。こっちは知らない、ほんとかどうかは」


 信じられない。両親も、妹も、違うなんて……



 沈黙が続いた。俺はこう切り出した。


「俺を襲ったあいつらってなんなの? 君なら知ってる?」

「まあ、知ってるも何も、毎日相手してるよ」

「教えてよ。あと母さんのネックレスとか、全部」

「わかった。教える。話せる範囲で。ただし、」

「ただし?」

「今から話すことを普通の人に絶対話すなよ」

「わ、わかった」



「あいつらは怪物。まあ、そう呼んでるだけなんだけどね。そいつらは世の中に沢山いるけど、存在を知るのはごく一部。俺はそいつらが人間を殺すのを防いだり、殺したやつを倒したりしてる。」


 怪物……か、そのまんまじゃん…


「で、君はあのネックレスを取り込んだ訳だけど、ネックレスの説明はあいつらがしてた説明であってる。そんで、取り込んだから君の中にはその魂の主がいる。怪物は欠片になることは滅多にないけど、俺たちの基準でSSランクの怪物は欠片になることが多い。SSランクは最高位だから、めっちゃ強いよ。」

「そんなのが……ここに……」

「ほんとだったら、体を乗っ取られるか耐え切れずに死んじゃうかだけど、稀に共存する人がいる。『怪物適合者』とか言われてる。その稀な人がお前って訳。本当ならルールで、普通に生きてようが怪物なことに変わりないから、怪物と同じように扱わないといけないけど、俺はそれもどうかと思う。」

「俺は君に生かされてるってことか……」

「まあ、そうなるね。あと、悠莉でいいよ。めんどくさいし」

「あ、うん」

 話の感じから他にも怪物に命を奪われた人がいるっぽかった。



「俺は、これからどうしたらいいんだ」


 悠莉に聞いてみた。

 わざわざ生かすなら考えてくれてもいいだろ。


「君が生きている以上、俺たちは君を捕らえておかなきゃいけない。君が生きたいと思うのなら、そのために尽力する。君の気持ちはどうなの?」

「……俺は、生きてたい」

「わかった」


 そう言うと、悠莉は指で銃の形を作って俺に向かって撃った。


 だんだんあの時のように意識が……

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