手を伸ばして

僕は、駅のホームのベンチに座っていた。

特に何かするわけでもなく、ベンチに座っていた。


朝7時10分

通学・通勤のため、沢山の人がホームにやってくる。


賑やかなホームにりんちゃんはいた。

たくさんの人が、いろいろな話をしている。

りんちゃんもまたお友達とお話していた。


近くにいた男子高校生がふと、隣のおじさんとぶつかってしまった。

バランスを崩したおじさんは倒れそうになり手を伸ばして…


りんちゃんにぶつかった。


ホームに到着のベルが鳴った。


僕は必死に手を伸ばした。


「つかまって!!」


僕は必死に手を伸ばした。

でも…その手をつかめなかった…


近くにいた男性が間一髪りんちゃんを掴んで、事なきを得たんだ…


男子高校生とおじさんは、りんちゃんに頭を下げていた。

騒ぎに気が付いた駅員さんと少し話して、解散していった。


電車は少し遅れて、皆を載せて出発した。


「行ってらっしゃいりんちゃん。」

僕はホームからりんちゃんを見送った。


今日もりんちゃんにとって、いい一日でありますように。



僕じゃ、りんちゃんを助けられない…

そして、僕は僕を許せなかった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る