声が届きますように

僕は、駅のホームのベンチに座っていた。

特に何かするわけでもなく、ベンチに座っていた。


朝7時10分

通学・通勤のため、沢山の人がホームにやってくる。


りんちゃんたちもホームにやってきた。

りんちゃんの手には参考書が握られていた。

お友達と少しでも勉強しようとベンチに座っていた。

ここ最近のりんちゃんたちの日課になりつつある光景だった。


「今日のテスト…かなりやばいかも…」


りんちゃんはとても自身がなさげにお友達とお話していた。


到着のベルが鳴り、りんちゃんたちはベンチから立ち上がった。


「がんばれりんちゃん。君なら大丈夫だから。」


僕はりんちゃんの背中をそっと押した。


りんちゃんは一瞬きょとんとしていたけど、そのまま電車に乗り込んだ。


走りゆく電車の窓からりんちゃんと目が合った気がした。

そんなはずはないと自分に言い聞かせた。


「行ってらっしゃいりんちゃん。」

僕はホームからりんちゃんを見送った。


今日もりんちゃんにとって、いい一日でありますように。



あの時、りんちゃんの唇が「ありがとう」と動いた気がした…

きっと気のせいだよね…

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