空を見上げれば一輪の花

僕は、駅のホームのベンチに座っていた。

特に何かするわけでもなく、ベンチに座っていた。


夜6時30分

隣の駅の近くの花火大会のため、沢山の人がホームにやってくる。


皆思い思いの格好で電車に乗り込んでいった。

その中にりんちゃんもいた。

りんちゃんは風鈴柄の淡い水色の浴衣を着て歩いていた。

とてもよく似合っていて、普段よりも大人びて見えた。


電車が発車してホームはとても静かになった。


しばらくすると、黒な空に色がさした。

始まったのかな?

ここからだとよく見えなかった。


しばらくすると空に大きな花が咲いた。

空はとても色鮮やかにまばゆく光り、そして黒に飲み込まれていった。


僕が見ることができたのは、その一輪の花だけだった。

それでも僕はうれしかった。

きっとこの花をりんちゃんも見ているんだと思ったから。

本当は一緒にみたかったなぁ。


僕は夜空を見上げて…


「た~まや~」


僕の声もまた空に飲み込まれていった。

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