『アリア』との出会い 〜レオンハルト視点〜
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
ヴヴヴヴヴ・・・・。
『殿下、『ヨークスカ』市街地で
「ちっ・・間に合わないか」
私達は『アーティナイ連邦軍』から『ヨークスカ』襲撃の報告を聞き、母艦である『サイナード』から発艦して援護に向かっていた。
事態は一刻を争っていた。
「ちっ・・『女神様』によって平定された世界を乱す愚か者共めがっ!」
私は思わず悪態をついた。
『女神様』によって全人類が統治されてから一千年余り。
すっかり平和ボケしてしまったことも、襲撃への対処が出遅れた原因となった。
このままでは『ヨークスカ』が壊滅してしまう。
「やむを得ない、私が先行して向かう!」
『っ!?殿下、危険です!お待ちを!』
私の専属騎士であるアーヴィンが焦り始める。
「問題ない、私が乗るのは
つまり、相手が『邪神』でなく同じ人間なら、私の『プラタナ』に傷一つ付けることはできないだろう。
それに、『プラタナ』は
心配するアーヴィンには気の毒だが、先に行かせてもらおう。
意を決めた私は操縦レバーを一気に前方へ押し出した。
ババーン!!
直後、
『あ、ちょ!?殿下ぁぁぁぁぁ!!』
私は悲鳴を上げるアーヴィン達を置き去って『ヨークスカ』上空へと辿り着いた。
「っ!あれか!!」
私が到着した時、既に市街地は火の海と化していた。
「くそっ!『
私が悔しさに歯を食いしばっていた時、赤熱する大地の中心に立つ一機の
そして、どう見ても普通の
その
それは、動作に必要なマナを機体の装甲で伝達しているということになる。
つまり、全てが
私の予想が正しければ、圧倒的な存在感を放つ漆黒の機体は、間違いなく
問題は、黒の
仮に敵であったとすれば最悪だ。
更に言えば、『メルティーナ』は『
そして、『メルティーナ』が問題なく動いている以上、それを駆る『
私が息を呑みながら『メルティーナ』の動きを注視していた時、『メルティーナ』がゆっくりとした動作で、相対する
直後、『メルティーナ』の掌から魔導式が展開する。
まずい!
『メルティーナ』が放とうとしているのが炎属性魔導である事はわかったが、そのマナ出力が
もし、あれ程
『ファイヤーボール!!』
しかし、絶対的な破壊の魔道が今、放たれようとしていた。
「ええい!ままよ!」
私は『プラタナ』の防御魔導を信じて、『メルティーナ』に立ちはだかった。
「やめるんだっ!」
私は腹の底から声を出した。
『っ!?』
すると、『メルティーナ』はひどく驚きながら明後日の方向へ魔導を放った。
ピカッ!!
チュドォォォォン!!!
直後、『メルティーナ』から放たれた魔導は彼方の山を丸ごと消しとばした。
「まさか・・『メルティーナ』の力がこれ程とは・・な」
私は思わず呟いた。
殆ど
つまり、この程度の攻撃など呼吸をするかのように容易いと言っているようなものであった。
私はその事実に戦慄した。
『っ!かっ・・頭ァ!別働隊から入電があった!無事『ヨークスカ』造船所にあった新型『飛行魔導神殿』の奪取に成功したようだぜ!』
『・・陽動はひとまず成功・・といえるのか・・どちらにせよ潮時だな、この件も『黒の君』に報告しなければ』
『よし、全機退却だ!』
『『了解!』』
キィィィ!!
そして、私が呆けている間に『ヨークスカ』を襲ったと思われる
『っ!?』
それを見た『メルティーナ』は、逃げる為に離陸した
確かに
だが、それよりも私にとってはこのまま『メルティーナ』を行かせる方が問題だと思った。
「待ってくれ!!」
だから、私は思わず『メルティーナ』を呼び止めた。
キイィィィン・・・。
ちょうどその時、『アーティナイ連邦軍』と合流した騎士達が到着したようであった。
『殿下!ご無事ですか!!』
「ああ、問題ない。だが、報告にあった五年前に奪われた
そのあと、しばらく私が騎士達と情報を共有していた時。
ギウゥゥゥゥン・・。
突然『メルティーナ』が動き出した。
ジャキッ!!
『そこの黒い
それをいち早く察知したアーヴィンが『メルティーナ』へと武器を向ける。
やめろ!『メルティーナ』を刺激するんじゃない!
私は叫びたくなるのを必死で抑えた。
何せ『メルティーナ』に乗る『
下手に刺激などしたら、何が起こるかわからない。
「何をしている!!アーヴィン!!その機体は私の『プラタナ』と同じ
「それに、『メルティーナ』が本当に遺された資料と同じ性能だとしたら、仮に
『・・・・!』
その名を聞いて騎士達は私の意を汲んだようであった。
『『プラタナ』・・!』
それにしても、『メルティーナ』から発せられた『拡声魔導』・・。
改めて聴くと、なんて美しくて可憐な声なのだろうか。
そして、私は『メルティーナ』に女性が乗っていることに驚いた。
いや、二機の
とすれば、『メルティーナ』の『
私は慎重に言葉を選びながら『メルティーナ』へ語りかけた。
「レディ、私の部下が失礼した。見ての通り、私達は『ヨークスカ』の襲撃を聞いて駆けつけた者だ」
「先程の出来事を君に詳しく聞きたい。それに、君の乗るその機体、『メルティーナ』についてもね」
バシュウ・・・。
そう言うと、私はコクピットを解放して外に出て、『プラタナ』の肩部装甲までワイヤーフックを使って登った。
『っ!?殿下!!危ないですよ!!』
私はアーヴィンの言葉を無視して『メルティーナ』へと目を向けた。
まずは何より、私達に敵意がないことを示さなければならなかった。
だから、私は『プラタナ』から降りたのだ。
バシュウ・・ウィィィン!
すると、背部ハッチを解放した『メルティーナ』から一人の女の子が出てきた。
直後、その人物は少女とは思えない軽やかな身のこなしで、肩部装甲の上へと降り立った。
「ほぅ・・・」
私はその動きを見て、思わず声を漏らした。
そして、彼女の姿を目の当たりにした瞬間・・。
「っ!?」
私の中に稲妻が走ったような錯覚を覚えた。
私の想像に反して、『メルティーナ』に乗っていたのは同じ年くらいの少女だった。
風に靡く漆黒のロングヘアは濡れたように艶やか。
雪のように白い顔に収まる大きな双眸は黒曜石のよう。
そして、赤く染まった頬があどけなさを感じさせる。
身に纏っている純白のワンピースは庶民の着るシンプルなものだったが、それが逆に彼女の無垢さを際立たせていた。
私はその姿に一瞬で虜になってしまった。
「私の名は『レオンハルト・サークレット・イルティア』!!『神聖イルティア自治国』の第一王子だ!!」
私は高鳴る胸を抑え、なるべく平静を装いながら話した。
落ち着け・・第一印象は
自慢じゃないが、今まで私の顔を見てきた女性はもれなくすり寄ってきたり私に気に入られようとしていた。
そんな私が、初めて会う女の子にここまで動揺するとは。
「失われた『黒の
格好良く言ってるが、その実純粋に彼女の名前が知りたかっただけだ。
実は『メルティーナ』を見た瞬間、何とか私達の戦力として取り込めないかという打算も少し生まれた。
だが、彼女を目の当たりにして気持ちはガラリと変わった。
私は彼女が欲しい。
そう思わせる程、彼女は魅力的だった。
そして、目の前の可憐な美少女は『すぅ』と可愛らしく息を吸って、小さな口を開いた。
「私の名は・・・・『アリア』です!!!」
その瞬間、私は必ず『アリア』を手に入れると決意した。
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