『邪神』の力
・・・・・・・・・・・・・・。
ヴォンヴォン・・・・。
「みんな
「私もみんなと同じように『メルティーナ』と一体になって頑張らないといけませんね」
私は『メルティーナ』のコクピットで独り呟くと、静かに息を吐き出しました。
『アリア嬢、準備はよろしいですか』
そして、ジーク教官の声がエーテル通信で聞こえてきました。
「・・はい、大丈夫です」
『それではカウントゼロで開始します』
『五・・四・・三・・二・・』
ドクン・・ドクン・・。
ジーク教官のカウントが進むごとに、私の心臓が緊張で高鳴って行きます。
「可能な限りの速く・・正確に・・!それだけに集中です!」
『一・・始め!!』
カウントゼロの瞬間、私は操縦スロットルを一気に捻りました。
「速く・・・速く・・・・速く!!!」
ドクン・・・ド・・ク・・ン・・・・ド・・・・ク・・・。
それと同時に、私の鼓動の高鳴りが
『っ!?アリア!!ア・・リ・・・』
『メルティーナ』が動き出す直前、レオンハルト殿下が何かを叫んでいたような気がしましたが、何を言っているのかは聞き取れませんでした。
「くっ!!身体が重いです・・」
そして、何故か身体全体が重くなったかのように感じ始めました。
例えるなら、どろどろの重い液体の中を歩いているような感覚です。
「っ!集中です!!」
私は気を取り直してスロットルを更に大きく捻りました。
すると、私の身体と同じく動きが鈍かった『メルティーナ』の動作が通常速度まで戻りました。
それに安堵した私は、戦闘行動に入ります。
「よし、いけます!!まずは一つ目!!!」
最初の
バァァァァァァン!!
すると、凄まじい衝突音がコクピットに伝わってきました。
「え?確かに命中した筈ですが・・・」
しかし、
「故障でしょうか?・・仕方ありませんね!!」
とりあえず考えないことにした私は、そのまま『メルティーナ』を駆って二つ目、三つ目と
「??」
「どれもこれも色が変化しません・・何故でしょうか?」
「物理攻撃はダメ?でも『フローレンス』の剣は通用していましたし・・」
「・・とにかく、別の攻撃手段も試してみましょうか」
相変わらずずっしりと重い身体を無理やり動かしながら、『メルティーナ』を駆り続けます。
(『メルティーナ』には決まった武装がありません・・近接格闘が駄目となれば、あとは魔導による攻撃となりますが・・)
私は、『ヨークスカ』で発動した『ファイアーボール』の威力を思い出しました。
そして、振る振ると頭を横に振ります。
(っ!?駄目です!!『邪神』の力を受け継いでいる私が『ヨークスカ』の時と同じように魔導なんて放てば、学園が大惨事になってしまいます!!!)
その時、ふと私は『
(っ!!
「『ファイア』!!」
思い立った私は操縦スロットルを操作して『メルティーナ』の人差し指を立たせると、その指先に炎を灯しました。
ゴウゥゥ!!
「
そして、指先に灯した炎を
ゴウゥゥゥゥ!!!!
しかし、『メルティーナ』の指先から放たれた炎は、何故か
「・・なんでこんなにゆっくりと炎が進んでいくのでしょうか・・まさかっ!?」
そのとき、私の視界に入ってきた『メルティーナ』のマナ出力表示が
「っ!?」
驚いた私は思わず『メルティーナ』操縦スロットルから手を離してしまいました。
ゴウゥゥゥゥゥ!!!
その瞬間、今まで重かった身体が急に軽くなり、ゆっくりと進んでいた炎が猛烈な速度となって
『アリア!!駄目だ!!まずい!!』
そして、レオンハルト様の焦ったような声が聞こえてきました。
「っ!!駄目!!」
私も咄嗟に声を出しましたが、放たれた魔導はもう戻りません。
そして、進んでいくにつれてどんどん大きくなる炎は、瞬く間に
ピカッ!!!
直後、激しい閃光がコクピットの光魔導スクリーン一面を埋め尽くして・・・・。
ドオォォォォォォォォォォン!!!!
『メルティーナ』は猛烈な爆風に呑み込まれてしまいました。
『アリアーーーー!』
『アリア!!』
『アリアちゃん!?』
『お義姉様!!!!』
「っ!?」
私は真っ赤に染まるコクピット内で思わず顔を覆いました。
オォォォォォォォォ・・・・。
そのまま暫くして爆発が収まった後、風によって黒煙が押し流されることで再び視界が映し出され始めました。
ゴォォォォォ!!
「っ!?」
私はその映し出された映像を見て、目を見開きました。
『メルティーナ』の足下にある大地は、半径数百メートルにわたってマグマの様に赤熱し、映し出される景色は立ち込める陽炎によって揺らめいています。
もちろん、爆発の範囲内にあった
その惨状は、先ほど『アラクネ』が撃った『魔導結晶体収束砲』によって生み出されたものの比ではありません。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。
『『『『・・・・・・』』』』
そして、灼熱の大地の中心で
「わた・・・し・・・」
私は自分の生み出した惨状を目の当たりにして、思わず震えた声を出しました。
同時に、発した声と同じように震える両掌を開いて呆然と見つめます。
私の持つ『邪神』の力・・。
その、あまりに強大な力を知った私は、自分自身に対して得体のしれない恐怖を感じ始めました。
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