エピローグ

 彼女は逝ってしまった。僕は後悔ばかりしている。

 なんとなく真っ直ぐ帰りたくなくて、でも早く帰らないといけない気がして。結局真っ直ぐ家に帰り、彼女の部屋を覗いてみる。

 実はまだ居てくれていると願って。

 でも彼女の部屋にはスーツケースもなければ、買った服もなかった。

 でも彼女の香りが、部屋を満たしていた。

 そしてある事に気付いた。彼女の名前が思い出せない。顔も声も、今は鮮明に思い出せる。

 でも、名前が分からない。

 好きだった食べ物も分からない。

 その時、震えるほどの恐怖に襲われた。

 このままでは、彼女のことを忘れてしまう。

 居ても立っても居られなくなり、家を飛び出し彼女が轢かれた交差点へ走る。なんだかそこに、彼女が居る気がしたから。

 走って、走って、体から悲鳴をあげても、通行人に笑われても関係ない。

 少しでも早く、彼女の居る交差点へ。


 必死で走って、交差点に着いた頃には雨が降っていた。前が見えないほどの雨だ。

 そんな時、僕の隣を少女が歩いて行った。

 でも少し向こうからスピードを落としていないトラックが走ってきていた。

 僕は咄嗟に駆け出した。

 トラックに気付き、脚を止めてしまった少女を助ける為に──

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一週間後、君が夜に眠るまで 鈴響聖夜 @seiya-writer

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