S級パーティから追放された俺は覚醒スキル【すたみな太郎】で送別会を無双する。飽きたからって帰ろうとしてももう遅い。まだ110分残ってる。
お望月さん
第1話 覚醒スキル
大森林のヌシ、パイソン・ヒドラがその身をもたげ強烈な
俺は二本角ヘルムを竦ませながら、ロングソードとウッドシールドを構えて被弾に備える。だが、スピットは着弾前に突風によって散らされ、俺に届くことはなかった。
「タミーナ、平気?」
【七曜の魔女】レインの呼びかけに俺は「問題ない!」と答え、パイソン・ヒドラへ向けて間合いを詰めていく。
森林迷彩めいた鱗を備える極太のヒドラはニの首、三の首で俺に噛みつき攻撃を仕掛けてくる。だが、双頭を二本の刀で迎え撃つ巨影が俺の目の前に立ち塞がった。
「ガルルル、いまだ!いけ!」
【獣剣士】ビースト、狼人特有の眼光を赤く光らせた狼頭の二刀剣士はパイソン・ヒドラの双頭と切り結び俺に道を示す。
ヒドラは毒液を吐き出した直後の第一頭部が急所だ。俺はヒドラの顎下へ到達し、頭上へ向けて剣を突き出す。だが、届かない。
身の丈4メートルのモンスターを仕留めるには「飛び飯綱」か「大跳躍」のスキルが必要だろう。だが、俺の技量では、それらを習得することはできなかった。なんの変哲もない町人には、ここが限界だったか。
「小僧、諦めるな!」
そのとき、地脈が躍動し俺の身体を持ち上げる。大地と一体化した【始源の泥濘】ウーズによる「
「もう一丁」
大森林にウーズの掛け声が響き、瞬間の地響き。パイソン・ヒドラの足元の地面が陥没した。
地盤上昇によるカチ上げ+地盤沈下による急降下=破壊力!
俺のロングソードはヒドラの頭部を顎下から貫き、脳幹を破壊した。
俺は、精根尽き果たし、ほっと息をつく。その油断が命取りだった。ビーストから逃れた第二、第三頭が俺に殺到したのだ。
(やられる!)
死より確実な「死の予感」に晒されること数秒。パイソン・ヒドラはその動きを停止していた。
「ヒュオオオッ」
【拳凍士】ケルビンが両拳を突き出したまま残心姿勢を決めていた。ケルビンが、大森林のぬかるみをものともしないフットワークで得意技の「
凍結した第二、第三頭部が崩落していく。
「これでただのゼロだな」
いつもの決め台詞を吐き出し、ターコイズブルーの頭髪をかき上げたケルビンは俺にウィンクをして見せる。
大森林のヌシ、パイソン・ヒドラの討伐に成功。今回のMVPはトドメを刺した俺だった。そうなるように仲間たちがお膳立てをしたのだ。
MVP報酬によって俺に力がみなぎっていく。ついにレベル40。俺のようなNR冒険者にとっては最高到達点である。そして、それはこのクエストが俺のS級パーティとしての最後の戦いとなることを意味していた。
「おつかれさま、タミーナ!」
「今日で最後になるけど、これまで助かったぜ」
「グルル、寂しくなるな」
「小僧、お前は筋がいいぞ」
「みんな、ありがとう」
俺のような特徴のない町民を仲間に入れてくれてありがとう。これまで楽しかった。
だが、レベル上限に達したのでこれで育成は終了だ。最後にレベル40で獲得する覚醒スキルを確認して、彼らとはお別れになるのだ。
俺は
[町人タミーナ]
クラス:剣士
レベル 40/40
HP 100/120
MP 0/0
E:ロングソード
E:ウッドシールド
E:ブルヘルム
ユニークスキル
【パーティ経験値アップ】
覚醒スキル
【????】(解放可能)
【ーーーー】
【ーーーー】
俺は仲間達の前で、点滅する【????】をタップする。ここで獲得した覚醒スキルは絆MAXの仲間たちに「継承」することができる。
「大丈夫よ、タミーナ」
「お前が抜けてもお前の魂は一緒だ」
「ウォン!」
「いけっ!」
【????】→【すたみな太郎】
「【すたみな太郎】って?」
「【すたみな太郎】ってなんだ?」
「クゥーン、爺さまは知っているか?」
「流石のわしにもなんのことだか……」
パーティ全員の視線が俺に集まる。
俺に何をしろって言うんだ。
【すたみな太郎】
なんのスキルなんだこれ。
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