第3話 遊園地デート
駅のベンチに座って待っていると、光が小走りでやってきた。
「お待たせ。待ったよね」
「待ったのは一時間ぐらいだから、別に大丈夫だぞ」
ふと、光の服装をまじまじと眺める。俺はファッションに疎いが、この格好はかなり気合が入っていることが分かる。
「その服装、詳しく教えてもらえないか?」
聞くことに抵抗があったが、将来衣料品のアパレルで働きたいと思っているので、勉強にと思う。
「えっとね。上はブランドTシャツ、ジャケットにくすみカラーシャツを羽織って。下は台形スカート、コンバースのスニーカーだよ」
「ありがとう。勉強になった」
「大村くん、将来服屋さんで働くんだもんね」
遊園地に着くと、早速アトラクションに乗ることにした。
ジェットコースターに乗って絶叫したり、コーヒーカップで回転して楽しんだりもした。
二つ、ソフトクリームを買ってきて、ベンチに座っている光に一つ渡す。
俺は光の横に腰掛ける。
「ねぇ、大村くん」
横顔がとても大人びていて、なにか悩みを抱えているのだろうかと思う。
「どうしたんだ?」
首を横に振って、
「うんうん、大丈夫。なんでもない。ごめんね」
——夕方。
閉園時間まであと少しの頃、俺たちは観覧車に乗っていた。
一望できる埼玉の景観は、とても綺麗で幻想的だ。夕方の光に包まれている。
光はその景色を黙って見ていたが、突然、喋り始める。
「ねぇ、大村くん。私、転校するんだ」
「え……」
その言葉が一瞬分からなかった。でもようやく言葉を脳内で消化して、意味を吸収する。
「転校って……」
「ごめん。もう決まってることなんだ」
せっかく付き合うことが出来たのに、別れるってことか。
「そう……かよ」
観覧車が頂点にきた。このポジションが一番、景色を綺麗に見下ろすことができるのだ。
「勝手に……したらどうだ。俺は知らない」
強がってしまった。本当は離れたくない。離したくない。でも思春期が原因なのか、素直になれない。
光は顔を引き攣らせて、でも精一杯の笑顔で言った。
「ごめんね。今までありがと」
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