第2話 アイス
「なぁ、山田?」
「なんだよ」
駄菓子屋の前でたむろする小学生を眺めながら、あずきバーを食べる山田と俺。
「俺さ、彼女出来たんだよね」
「ほんとかよ。お前みたいな変人がか?」
目をぱちくりとさせてわざとらしく驚く。
そんなに驚くほどでもないような。高校生と言えば連想されるものは勉強——ではなく恋愛と言っても過言ではないからだ。
「すごいことだな。砂漠に雪が降らなくちゃいいけど」
「それ、伊坂幸太郎だよ」
山田は大の読書好きで、一年間で数百冊もの本を読む。本と言っても純文学の小説だけではなく、ライトノベルや漫画まで幅広く読んでいるのだ。好きな作家は伊坂幸太郎。
「で、キスはしたのか?」
俺は咳払いをした。急にそんな話題になったので驚いたのだ。
「まだだよ、キスなんて。付き合い始めてまだ一ヶ月も経っていないのに」
「じゃあホテルもまだだな」
「あ、当たり前だろ!!」
俺は動揺してしまう。突然の下世話な話におもいっきり困惑したからだ。
「俺も実は彼女いるんだよね」
「ふーん、誰だよ」
山田は誇らしげに微笑した。
「レンタル彼女。一回五千円」
思わずずっこけた。予想外の答えで、おいおいと思う。高校生がなにやってるんだよ、と。
「ちなみにホテル代は全部こっち持ちで別料金も発生するんだ」
「本当にやってるのか。冗談じゃないのかよ」
山田は少し考え込んで、
「冗談だ」
と、笑う。その表情は少し大人びていた。
冗談にしてはレンタル彼女について詳しかったが、まぁそこは突っ込まないでおこう。
夏の微風が前髪を少し揺らす。
「光は……凄く可愛いんだよ」
「どうしたんだ突然?」
食べ終わったアイスの、残った棒をゴミ箱に捨てる。
「なんでもねーよ。行くぞ」
「へいへい」
そして南へと降りていった。
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