呼ぶ霊園

 小学生のEちゃんの家の真裏には霊園が広がっている。


 2階にあるEちゃんの部屋から霊園全体が見渡せるが、気味が悪いので、カーテンをいつも閉めていた。


 夕方、部屋で一人で漫画を読んでいると、窓の外から子供達の楽しそうに遊ぶ声が聞こえてきた。


 Eちゃんは一緒に遊びたいと思ったが、よく考えたら、霊園でなんか遊びたくないと思い、漫画を読み続けた。


 すると、今度はお祭りの様な賑やかな音が聞こえてきた。


 祭囃子に太鼓の音、神輿を担ぐ大人達の掛け声や、明るい笑い声まで聴こえて来る。


 Eちゃんは、お寺のお祭りかな、屋台が出てるかもと思い、わくわくしながらカーテンを開けた。


 その瞬間、音が止み、目の前には人っこ一人見当たらない。ただ、夕日色に染まった墓石がずらりと並んでいる。


 何故か、景色が僅かに動いている様な気がしたので、よく目を凝らして墓地全体を見渡した。


 沈みかけの赤黒い夕日に照らされて、几帳面に並んだ沢山の墓石から、細く青白い腕がニョキっと生えていて、Eちゃんにおいでおいでをしている。


 Eちゃんは急いでカーテンを閉め、台所で夕ご飯の支度をしているお母さんの元に降りて行った。


 「お母さん!」


 「あら、どうして泣いてるの?もう直ぐご飯だから、友達には帰ってもらいなさいよ」


 ギョッとして背後を振り向くと、たくさんの白い顔の子供が廊下から顔を出していた。

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