ドライブ
Aさんは、道端でお地蔵さんを見かけると、蹴飛ばしてしまう悪い癖がある。
Aさんが休日の夜に、地元の峠道をドライブしていた時のこと。
陽気な曲をかけながら、気持ちよく走っていると、誰も居ないはずの後部座席から、何人もの子供のヒソヒソ声が聞こえてきた。
Aさんは慌ててCDの停止ボタンを押した。曲は止まったが、ヒソヒソ声は尚も後ろから聴こえる。
Aさんは怖さのあまり、ふざけんなぶっ殺すぞと大声で叫んだ。
車内がシンと静まり返った。
ホッとしたのも束の間、突然、車中に大勢の子供の絶叫する声が響いた。
もう限界だと思ったAさんは、急いで友達に電話をして、山の峠まで迎えに来てもらった。
Aさんは耳を塞ぎ、念仏を唱えながら友人を待った。
暫くして、友人の車が迎えに来たが、何故か、遠くの方で停車した。
そしてクラクションを鳴らし、必死に、Aさんに向かって、早く来いとジェスチャーを繰り返している。
Aさんは急いで友人の車に乗った。
「お前の車に近づけないよ」友人は言った。
Aさんは自分の車に目を向けると、薄暗い車中で、汚れた頭巾を被った酷く痩せた子供達が、後部座席から窓に張り付いて、怒りの形相でこちらを睨みつけている。
すると、その車のドアがガチャリと開き、こちらに向かってわらわらと、その子供達が降りてきた。
友人は急いでアクセルを踏むと、猛スピードでそこから逃げ出した。
Aさんはそれ以降、お地蔵さんを蹴る事はしていない。
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