廊下

 A子さんは、友人が引っ越しをしたと聞き、遊びに行った。


 話が弾み、夜も遅くなったので、泊まることにした。


 A子さんは何となくこの家が苦手だった。


 広い一軒家なのだが、築年数も相当なもので、木が腐っているだろう、歩くたびに床や天井が軋んだ。


 そしてA子さんが一番嫌なのは、トイレが一階にしか無いため、二階の寝室からは遠い事だった。


 深夜、トイレに行きたくなった。


 友人は隣で熟睡している。


 A子さんは友人を起こすのを諦めて、一人で真っ暗な階段を下りた。


 他人の家なので、どこに明かりのスイッチがあるのかが分からず、壁を伝って手探りでトイレを目指す。


 途中、廊下で何かの塊に躓き、転んでしまった。


 ちゃんと掃除しておけよと思いながらも、何とかトイレまでたどり着き、座って用をたす。


 (さっき躓いたものは何だったのだろう、廊下にほっぽり出すものにしては大きいし、足を打ったのに、それほど痛みは無い、なにか弾力があった感じで……)


 用をたし終わり、トイレの明かりを頼りに、廊下の明かりを点けた。


 髪の長い女の人がうずくまっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る