エリダヌス。

 エリヌダス座、トレミーの48星座の1つで全てのコロニーの中で六位の大きさをもつコロニーに、政府の輸送艦を使ってここまで来ている、イチゴさんがナビゲートで中で待機しており、パンゲアの兵士2人と調査員が1名、調査機関の人間は調査員1名の護衛2名の計6人が、自分たち以外で一緒に乗り合わせている。


 作戦司令は調査機関の人間だけど、戦略的には専門家ではない、ということなのでイチゴさんがその役割を担うことになっている。


「突入は前方にある先端部分、端から端までの探索ツアーだよ!」


 イチゴさんからの通信が入り、輸送艦が目的地に到着したことを理解した、これから作戦が始まるので移動中の雑談を切り上げ、耳をかたむける。


「道中不意打ちに気をつけて先端のアケルナル区画に到達することが目的です」

「了解」

「それじゃあ行ってらっしゃい!」


 ヤタさんが代表として返事をして各パイロットにハンドサインで出撃確認を取る、全員が出撃準備完了をハンドサインで返すとアイと比和子を先頭にして輸送艦のハッチ部分に徒歩で移動する。この輸送艦にはカタパルトもないので、イチゴさんがゴーサインを出してから、まるで飛び降りるかのように順次出撃する。


 事前に聞いていた調査員の作業用機体Archeの速度に合わせて巡航して、比和子とアイのコンビと自分とヤタさんのコンビに挟むように配置して護衛しながらエリヌダスコロニーの侵入地点へ向かう。実際には出入り口を軽く蹴っているんだけど。


「早速来たで!」

「了解!」


 久しぶりに連射ができる実弾ライフルでドローンを撃ち落としていく、最近エネルギーライフルばかり使っていたので役目がなかったが、小型の耐久性が低いドローンにはやっぱりコレが一番いい。アイと比和子もそれぞれ撃破しながら道を切り開き、ヤタさんも援護する、とりまくドローンの数は多いけれど、所詮数だけなので危なげなくエリヌダスの侵入地点へ突入できた。


「…シャッター空いてるやん」

「先遣隊だな、爆破して開けたか」

「真っ暗やん…電源あるんちゃうかったん?」

「照明が落ちてるだな…理由は知らないが」


 アイと比和子さんが先に入って安全を確認して調査員を中に入れる、その間ドローンが追撃してくるかと警戒していたんだけど、何故かコロニーに近づいたぐらいからドローンが追撃してこなくなった。


「電源は生きてる、一応Archeの充電は可能だな」

「酸素はありそうですか?」

「シャッターが壊れてるからな、先の区画は不明だ」


 調査員のライトがコロニーの中を照らす、第一区画は発着場といった感じで大型艦が一隻、ギリギリ入るだけのスペースがある場所だ、恐らく貨物艦が入ればそれで十分という設計なのだろう。


「どうするん? 先遣隊の後追っかけてみる?」

「ソレがいいな、ロストした情報が拾えるかも知れない」

「せやったら上の通路やな、あっこもシャッター壊れとるし」


 第一区画の一番奥には四つのシャッターがあり、向かって右上のシャッターが内側に向かって破壊されているのが見て取れる、恐らくあそこから先遣隊は侵入したんだろう、この分だと暫く酸素のないエリアが続きそうだ。。


「…なんやろ…ちょっと不気味やない?」

「はて…普通の基地ではないですか?」

「いや、比和子変だよここ、見てよ外」


 比和子が言われるがままに外を見る、そこには大量のドローンがコチラを見てこそいるのだが、一切手出しをせずそのモニターカメラでコチラを観察している様子だ。あのドローン達は全部戦闘用のドローンなのに。


「はてはて…不思議なだけですね!」

「…比和子にそういうん求めたウチが悪かったわ」

「はて…?」

「行こっか」


 苦笑いシながら先に進もうとするアイだったが「まあ待て、一応確認はとっておく」とクガさんに呼び止められる。


「おいイチゴ、防衛機能は正常に動いてるんじゃなかったのか?」

「そのハズだよ~? 一応こっちで調べたいからサンプルが欲しい」

「わかった、なんでもいいか?」

「うん、どれでもいいよ」


 そう言われたクガさんは、おもむろにドローンを一体鷲掴みにした。


「って大丈夫なんですかソレ!?」

「いや、アウトだろ…と思ったんだが敵対しないな」


 首を傾げながらも「何かあったら頼むぞ」と言いつつ、まるでドローン達に見せつけるかのようにクガさんは素手で鹵獲したドローンを分解していき、手際よくICチップを抜き取ると、背負っているバックパックから手のひらサイズのカプセルを取り出し、ICチップを入れて宇宙に解き放つ。


「便利だろ?」

「こんなのあるんですね」

「事前に目的地の設定さえしてれば、地球から月ぐらいまでは届く」


 小型カプセルはクガさんの手を離れて数秒後、自分で小さなブースターを噴射して、我らの母艦へと向かっていくのが見えた。


「…本当に調査員やったんや」

「名目だけじゃないからな!」


 正直自分も、こっちから名目だけでも調査員を派遣しないといけない、体裁為だけの参加だとは思っていたんだけど、本当に調査員としての仕事をこなすようだ。


「お前ら、何だと思ってたんだよ」

「体裁のためとか」

「現場監督やな」

「はてさて…好奇心、と言ったところでしょうか」

「なまじカスッてるのが腹立つな」


 カスってるんだ、体裁とか現場監督とか好奇心とか。


「んで、どないするん?」

「結果が出るまで待機…は酸素もあるし無理だ、一時帰還もなし」


 だろうなぁ、調査にどのくらいかかるか解らないから、少しでも酸素は温存しておきたいし、こういう細かい想定外で毎回帰還していては調査が進まない、長期的な調査なら戻るべきだろうけど今回は短期調査、このぐらいで戻ってはいられない。


「罠だったとしても、罠があるのは大前提だ、慎重に進んでいこう」

「私の方でも進行を推奨かな~、気にはなるけど」


 他の組織の調査員達もその方針に賛成のようで、反対者はいなかった。

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