ミーティング。(5)
朝起きると既に起きて朝食を終えていたアイが、スマホを触りながらテラスで情報収集している。俺の分の朝食も対面に置いてあり、一緒に頼んでいてくれたようだ。
「…おはよ」
「おーはよーさん」
「寝れた…?」
「おかげさんで、よーさん寝れたわ」
アイは少し不機嫌そうにトントンと机を人差し指で叩いた後、対面の席を指差す。座れ、と言葉には出してないけど促してるのだろう。促されるままにアイの対面に座ってトーストにマーマレードを塗る。
「怒ってる…?」
「そんな怒ってへんで」
「そっか…」
「ただなぁ、キスされて一緒のベッドで覚悟決めて振り向いたら寝てるやん? それでアホらしくなったら寝れたから…まあ。トントンやな」
「ほんっとゴメン」
「…次は期待しとくで」
「がんばるよ」
それから朝食を食べ終わる頃にはいつもの調子にアイは戻り、待ち合わせ時間にホテルのフロントで他の皆と合流して、鍵を帰す。
「それじゃ、帰ろっか」
帰りのシャトル便に乗り宇宙ステーションに帰る、到着した時刻は昼頃でクガさんとアイさんは戦艦に向かっていった、明日の準備をしに行くのだろう。自分達パイロット四人はラウンジに集まって、ランチを取りながら情報共有をすることにした。
「そういや、実際どんぐらいの戦力なん?」
「今回は前回より情報はあるからな、イチゴから貰ってる」
データをみればいつものドローンがいるが数が多いし、見慣れない大形の自動兵器がある、これも宇宙空間を飛行すればドローンと分類はされるのだろう、地上では戦闘機型の無人機もよく使われる。
「はぁ……小型はいいですが大型は刃が通らなさそうで」
「それなんだが、ちょっと面白いものがある」
そう言ってヤタさんが見せたものは武器のデータだ、比和子がいつも使っている刀よりも大きな大太刀と言われる種類で全長180cm、幅は普通の刀よりも太く、重量も重いが耐久性を重視されている、比和子の身長よりも大きな武器だ。
「ほむ…大太刀とな?」
「レーヴァテインと、エイリークの大斧のデータを流用したプロトタイプ、耐久性を重視していてまだ切れ味は大した事はない…だが今の刀よりかはドローン向け」
「ふむふむ…使ってみましょう…名前は?」
「まだ無銘だ、完成品じゃない」
「…なるほど、では完成するまで銘はお預けですね」
「実践データを頼む」
「かしこまりました」
これで比和子の武器問題は解決だろう、アイは元々問題ない装備をしているので次は俺とヤタさんの武器だ、これにもヤタさんは武器データを見せてくれる。
「本命にしてたエイリークの腰部エネルギー砲を使ったサンプルだ」
「これ…バズーカ砲ですか?」
「色々試行錯誤した結果な、そのまま機体に取り付けるには暑すぎたから威力は下げてあるが、この相手には十分だ」
「確かエッダがどうしてたかって、結局我慢してたって結論だったんですよね」
「排熱とエネルギータンクを考えればそうなる…超人だったよ」
今回用意されたエネルギーバズーカはカートリッジ式と、Archeとの接続式の二種類、元が腰部砲だったので腰に収納できる大きさで手を使わずに腰撃ちも可能、そbの場合標準はヘルメットに表示される。
「ヤタさんがカートリッジ式の方ですよね」
「あぁ、接続式は任せた」
自分の機体は元々エネルギー兵器を使うことを想定してカスタマイズしてきているので、エネルギー容量が多い、ヤタさんは今まで実弾メインで戦ってきたのでエネルギー容量は多くないのでカートリッジ式が良いだろう。
「カートリッジ式って、弾数足りますかね?」
「使い捨てじゃないからな、エリダヌスの電源は生きてるし拝借する」
「なるほど」
これで四人とも武器の準備は完了だ、既に戦艦へ武器は運び込まれているのでクガさんが装備させてくれてるだろう。
「誰か作戦は聞いてるか?」
「ソレやったら聞いてるで、困ったらウチのペイルハンマーで壁壊して脱出、ペイルハンマー使えへん状態やっても、緊急脱出用のシステムはあるやろうからヤバかったら随時撤退やってさ」
「…それ以外には?」
「あらへん」
「…なるほど」
ヤタさんが苦笑いしながら腕を組んで考え始める、自分も出てきたドローンのデータや、先遣隊がどう行動したかの報告書に目を通す。そこでわかったのは先遣隊はどうやら調査員を無理に庇おうとして失敗したという事例だ。
「そう言えば俺たちの場合って調査員って何人同行するんですか?」
「三人だ、政府関係とパンゲアから1名ずつと、オモイカネから一人」
「オモイカネから誰がって…それでクガさんか」
「あぁ、調査員としてクガが今回参加する」
クガさんはワダツミの修理や船外活動をする時によく作業用Archeを使っている、戦闘用の機体ではないので戦力としては期待できないが、副艦長としての現場指示だったり判断が出来るので適任だ。
「はて…クガさんが調査員?」
「ん、なんか問題でもあるん?」
「いえ、前々から私、疑問でした…なぜあの方は戦闘型に乗られないので?」
「なんでって…免許ないとか?」
「しかしあの方、作業用に乗ってるのを見ましたが…戦闘型に載ったことがある動きをしておられました、何故でしょう」
素朴な比和子の疑問に、ヤタさんは珍しく比和子から目をそらす。自分もその疑問を感じた時がある、アイと一緒に明らかに戦闘型に使うヘルメットを見つけた時と、月で低重力の中訓練を受けていた時だ。
「やはり、お二人も心当たりがお有りですね」
「…せやな、ちょっとだけ不思議に思ったことはあるで」
「ではでは…こういう作戦ならば戦闘型でもいいのではないでしょう」
「やけど、クガさんにも事情あるんちゃうんかなって」
「はてはて…ヤタはなにか知ってますよね?」
「………あぁ」
比和子に問い詰められてヤタさんは、知ってることは肯定する。
「アイツが乗らないのには事情がある、ただ言わないと約束してる」
「私にも内緒ですか?」
「俺のことなら話すけど…喋らないと約束してる」
「ふむふむふむ…ヤタは私に秘密が多いです」
「すまない、言わないと約束した事が多い」
ヤタさんは申し訳無さそうに謝罪をすると目を閉じる、何かを思い起こしているのだろうけど、表情は重く苦く、なにか嫌な思い出だったんだろう。
「ところでドローンの数が多いのって。理由が?」
「そういやいっぱいおるって書いてるね、なんでやろ」
「生産してるとか?」
「生産プラントの事? 確かにあってもおかしゅうあらへんね」
小型ドローンは先遣隊の時点でもかなりの量を破壊しているし、大型も数機破壊したけれどまだまだ数があるらしい、だったら減らない原因があるに違いない。
「とりあえず、あるって仮定するんやったら、壊しに行かへんと」
「だね、どんだけ材料が残ってるかにもよるけど…」
「事故廃棄やからなぁ…稼働中やったんなら数カ月分あってもおかしないと思うけど、予想つかへんわ」
「だよね、でも少なかったらもう止まってると思う」
「止まってたらええね」
ざっくりとした話し合いはこのぐらいだろう、後は細かい連携とかを話し合うことになる。連携と言っても自分達のチームは前衛と後衛がしっかり別れているので、ポジションだけは簡単に決まる、あとはどの敵をどう対処するかなどを決めておく。
ただその倒し方に固執してはいけないので、結局戦場では臨機応変に挑むことになるだろう。こういう細かい作戦は基本の動きとしては役に立つけど、全部その作戦通りに行くことなんて滅多にないのだから。
「こんなもんだな」
「せやね」
最終的に自分達が納得行くまで話し合って会議は終了した。クガさんからメンテナンスと装備を取り付けたという完了報告も来て、準備は整ったと言えるだろう。
いつものことだけど不安要素は今回多い、だけど準備は整ったので後は出撃を待つだけだ。
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