合流。
突入したのは中型以下の艦専用の滑走路、本来有事の際は基地内部へ入るための緩やかな坂になっている格納庫への入り口にあるシャッターは、完膚なきまでに破壊されておりその役目を果たしてはいない。
「敵性反応なし、言うて基地内は近距離ばっかやからRKS反応も20m圏内しか効かへんから油断しぃなや」
「了解」
っこの中型艦用格納庫にはパンゲアの人間はまばらに居て、警戒しながら突入している、隣に侵入口の大きい大型艦用格納庫もあるのだが、そちらはかなりの人数のパンゲアの兵士がおり一見そちらの方が良いように見えるけど、部外者の人間な上、なまじ立場があるエースが二人もいたら連携を乱しかねないので避けることにした。
「二人共遅れてごめんね、内部の地図データを貰ったからアップロードするね」
格納庫から慎重にレーダーを確認しつつ通路への扉を開いた時、母艦から内部地図のデータを貰うことができた、これで通路の先ぐらいは何があるかわかるしレーダーで敵の反応が近くに表示されても、それがこれから通路の途中にて撃たなきゃいけないか、壁の向こうに居て手を出さなくていいかがわかる。
「…どっち行く?」
「どっちって」
「動力部と防衛施設」
道中シャッターを破壊されたことによってかヘルメットをしておらず酸欠で死んでいる兵士がいたが、それ以外に異常も敵も見られないままT字路にまで進むことができた、ここまでは順調というよりも。
動力部はコルキス内部地下の方にある場所だ、今更表面がいくら砲撃されても…というのがあるし、戦艦が物理的にもエネルギーシールド的にも壁になっているので優先度は低いが基地内の電源や酸素供給がダウンするし立て篭もられると厄介な場所。
一方で防衛施設は固定砲台やミサイルに関わる場所でここを取られるとコルキス側から攻撃を受けてしまう、
「先に防衛施設のケアをしよう」
「おっけー」
T字路を左に進みコルキスの第一層、地面のスグ下の部分を進む、途中で二重扉を抜け酸素があるエリアに到着したが相変わらず重力はない、コルキスには質量が足りないから感じるほどの重力もないし、遠心力に依る回転機能も搭載してない。
ところどころに交戦した形跡はあった、壁に刻まれた銃痕や所々に浮いている血痕、武器や兵器の残骸が所々に点在している、だけど進みはすれどもレーダーに敵の反応も味方の反応も何も映らない、パンゲアの方は戦力を動力部に割いているのか全く見なくなっていた。
「おらへんやん、一旦戻る?」
「居ないってことは無いと思うけど」
誰にも合わず、すれ違わずに、ひとつ、ふたつ、みっつと防衛施設の前を通り過ぎ、さすがにおかしいと気づき始める、いや最初からおかしい。
「会わなすぎやろ」
「…だよね」
何度か固定砲台の中や小部屋も覗いてみたりしたが残っているものはいない。
「不安になってきたんだけど」
「やめーや、ウチまでちょっと不安なってくるやん」
二人で顔を見合わせ、何があったか考える。
「生き残りもいないのは、徹底的に追い立てられたんだと思う」
「奥に?」
「うん、Archeのも纏めて」
「うん、ソレやったら確かにわかるんやけど…」
「けど?」
「死体もあらへんのはなんでなん?」
気になるのはそこだ、追い立てるにはどうしたらいいか?
相手も軍人で兵士なんだから普通にArcheが見えた時点で即退散する訳がない、ある程度抵抗はするし時間稼ぎも、なんだったら籠城戦だってしようとする筈だ。
「敢えて殺さないようにしたんじゃ」
「…ソッチやろなぁ」
基本的に戦場では死体は放置される、戦闘中に死体に構っていれば戦いにならないし回収している最中に殺される事もある、後ほど落ち着いたときや、両者合意の元で一時的停戦して死体回収するまではそのままだ。
逆に負傷だけさせればどうしても治療することになる、戦えないからと怪我人を放置しろなんて指示を出したら怪我を余計に恐れたり不信感によって指揮は下がる、当然負傷兵を連れて撤退する事になれば人員は割かれるので敵戦力の削減には効果的だろう、ただしこれを狙ってやるのは実力差が相当必要だが。
「敵は相当やり手やんな?」
「…裏切ってんだし今更かも」
「せやな」
相談を終え進もうとした時だ、次のブロックへ行く扉の向こうに4機の反応がある、敵が3機と味方が二機だ。
「援護しに行くで!」
「了解!」
アイが勢いよく扉を開けて直進する、戦っている場所は次の扉の向こうで、空気を通して銃声が鳴り響いているのをマイクが拾っておりヘルメットから聞こえてくる。
曲がり角を超えると曲がり角越しに二機のArcheが銃撃戦をしている、無重力なので上下はないけれど、便宜上地下方向の床を地面として、地面側の壁に二人だ。
「囮なるからフォロー頼むで!」
アイが前方にRKSを集中して出力もあげて上側の壁に機体を軽く
「おい、無茶するなって」
ヘルメットのモニターに敵機のシルエットを表示して、アイに反応して敵二人が顔を出したところにチャージしていたエネルギーライフルで敵の顔面を撃ち抜き、猛一人の一緒に顔を出した奴はパンゲアの二人がすかさず撃ち抜いた。
「無茶やないやろ?」
「…ったく」
残り一人の反応はもう倒した後のようでプカプカと浮かんでいて、アイが動かないのを確認してこの場の敵三機の制圧が完了したのがわかり、一息入れる。
「ハーイ、スノウ&アイ、お久しぶりデース」
「援護、ありがと」
パンゲアの二人が、こちらに通信を繋げる、機体に見覚えがったお陰でわかったけれど、アニーさんとアメリアさんの二人だ。
「お疲れさまです、こっちに来てたんですね」
「うん、地下に後一人本隊を率いて潜ってるわよ」
「誰なんですか?」
「ケームよ」
ケームさんは宇宙ステーションのパーティーで一度顔を合わせただけで、未だにまともに話した事がないパンゲアのエースの人で、話だけ聞いたけどかなり個性的な人だ、指揮とコミュニケーションが得意で常にパンゲア内の仕事や管理をしていて、パーティーの後も休んでいいと言われたらしいけど艦に戻っていた。
「ケームさんおるんや、ほな安心やな」
「そうね、あっちは大丈夫」
アメリアさんが断言するので、全幅の信頼を置いてるのがわかる。
「それで、こちらの戦況は?」
「私達は別働隊で見に来たんだけど…思ったより居そうよ」
恐らくアメリアさんのレーダーは自分のよりも性能がいいみたいで、もう少し先までレーダー反応が見えているようだ、表示が逆になってしまうので細かくは把握できないけれど、アメリアさんのヘルメットにはエネミー反応を印す赤い点がいくつか表示されている。
「具体的な数は?」
「わからないわね、でも同時に4機までは映ってたわ」
「助かります」
「こっちもさっきは助かったわ、睨み合いだったし」
倒したArcheはどれもエースではなかったが、武器やカスタマイズが上質なものを装備しており、相手も少数精鋭だったのがわかる。
「アニー、どう?」
「大丈夫そうデース」
「それじゃあ行きましょっか」
「はい」「了解やで」
再び基地内を曲がり角を念の為に確認しながら進む。
どういう順番で進むか短い相談をした結果、近接型のArcheであるアイを先頭にして、そのすぐ後ろにフォローがしやすいアニーさん、少し間隔を開けてアメリアさんが並び、最後尾には俺という順番に決まる。
並び順を決める時、アメリアさんと自分でどちらが後ろかというのが一番悩ましかったのだが、アニーのすぐ後ろに付けるポジションの方がアメリアさんがやりやすいのと、俺の命中率が一番高く遠くからでも誤射の可能性が低くフォローがしやすいということで最終的にこの順番に落ち着いたのだった。
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