コルキス包囲網。

 さて、相手の小型艦は殆どが破壊されるか退避した、それまでに破壊した小型艦数は二桁になり、中型も五隻結果的に破壊できた、戦果としてはかなりのものだが、エッダは数を誇る艦隊で続々と後続の艦隊も増えてきており差し引きで言えば相手の数はむしろ増えている状況だ。


「…だめそうだ、牽制にはなるが徹甲弾でも軽微しか与えられん」

 相手側もさすがに何をされてるかはともかく前面装甲に集中するだけで対処できるとわかったので撃墜に至るダメージを負わせる事はできなくなっていた。


「相手の大型艦はどこだ?」

「丁度反対側だね、こっからは見えないさ」

 エッダの本体は反対側にいて、コルキスと撃ち合っている事だろう。


「そう言えばイチゴさん、気になったこと聞いていいですか?」

「な~に~?」


「どうしてエッダは大型艦を二隻捨てたんですか?」

「んっとね、多分捨ててないよ」

「どういうことですか?」

「コロニーに寝返る時のプレゼントにしたのかなって」


 ここでイチゴさんが説明したのはあくまで予想だが、爆発や被弾が偽装したもので最小限のダメージしか与えられていないとしたら、修復すればまた使えるようになるだろう、もし使えなくても大量の資源にはなる、なんならパイロットだけ酸欠で殺してるので雇われ傭兵が使っていたArcheが大量に内部に残ってさえいる、なのでコロニー側への手土産にしたと考えたほうが自然らしい。


 状況は膠着していた、どうにかして片面だけでも取れればコルキス防衛戦も楽になるのだが、このままではコルキスが包囲殲滅されるのも時間の問題だ、打開策を模索して1時間、ミサイルを迎撃しあい続けるだけで進展もなく、相変わらず敵は前面にシールドを集中させているので数を減らすこともできない。


「…ワダツミ、さっきの攻撃ってまた出来るか?」

 そんな中マエルさんから攻撃の要請がくる。

「できるが、もうダメージはいんないよ?」

 艦長であるイチゴさんが効果がもう無いことを伝える。


「だけど前面にシールドは集中させれるよな」

「出来るかと思います」

「なら頼むよレディ」

「了解、聞こえてたよねヤタ」

「ああ」


 要請を聞いてヤタさんが攻撃を始める、一分に一発案の定ダメージはかすり傷程度しか与えられないし小型艦はコチラ側に出てこない。

「どのぐらい撃てばいい?」

「とりあえず…そうだな10分ほど頼むよ」

 10分で撃った数は10発、そのどれもが効果なく終わる。


「終わったぞ」

「あぁ、助かるぜ」

 何のことだろうかわからなかったが、その理由はすぐに理解できた、エッダの戦艦達がコルキス側から次々に破壊されてくからだ。

「なるほど、これが狙い」


 コルキスが基地の砲撃を使っての砲撃を開始したのだ、そもそも今までコルキスがコチラ側に砲撃していなかったのは流れ弾を意識しているのもあったが、それよりも反対側の戦いが激化しておりコチラ側に戦力を割く余裕がなかったからだ。


「挟み撃ちさ、しかもわざわざ向こうから入ってくれるってっんだから大儲け」

 コルキスの一斉砲撃で一気に敵艦の数が減っていく、すぐさま相手は全方向RKSシールドに切り替えるのだけど、そうしてくれるならヤタさんの対艦砲の餌食だ、ヤタさんが徹甲弾を使い動力部を破壊していくし、パンゲアからの艦砲射撃やミサイルもここぞとばかりに撃ち込まれる。


 この攻撃で幸運だったのが2つ、相手の指揮系統が滅茶苦茶だったことだ、指示がバラバラだったのか相手の撤退がかなり遅れ、被害を拡大していき、もう一つは今回の謀反はエッダの中でも反発が激しかったらしく、不満をもった艦隊が一部離脱して武装解除した後投稿してきたことだ、投稿してきた艦隊は遅れてやってきていた正規軍が連行していった。


「よーし、パンゲア部隊全員進軍だ」

 マエルさんがコチラとの通信回線を開いたまま全軍に指示をだして微速前進し始める、ワダツミもそれに追従し陣形に参加する、位置はコルキスに向かって上部部分に陣取り、他の艦隊はコルキスを囲むように陣取った、ここでようやくエッダの主力艦隊を見ることが出来る、あいつらが裏切り者の本隊だ。


 コルキス側は正面に鬼の大型艦が2隻、一隻足りないが落ちたという報告はないので、恐らく損傷が酷く撤退したものと思われる、残りは中型から小型艦が陣取っていてこれは牡羊座から幸運にも損傷が軽微か無傷のまま辿り着けた艦隊達だ。


「増援感謝致す」

 鬼から渋い老年の男性から無線通信が入る、眼下に見えている大型艦からのもので、大型艦は既に中破している状態だが持ちこたえている。


「その位置変わろうか?」

「いやはや安定致しておる、心配御無用」

「見栄発展じゃねぇぞ」

「見栄にはござらんよ」

 マエルさんはそれ以上何も言わずに黙っている。


「それよりも頼みたいことがあるんじゃが」

「鬼からのお願いなんて珍しいな、なんでも言ってくれ」

「それは有り難い、包囲されてる時にコルキスに入り込まれておってな」

 その報告を聞いた瞬間緊張が走るのがわかる、基地内に敵Archeが入り込んでいる状況は非常にまずく、陥落寸前を意味している。


「オーケー、わかったこっちの部隊を寄越す」

かたじけない」

 パンゲアからArcheが大量に出撃し始めるのが見える、しかしそれに伴い大量のドローンやArcheがパンゲアの主力艦隊に鬼を迂回しながら向かってくる、足止めをするつもりだ。


「っち、予定通りってわけね…ったく、とりあえず半分だ! 現場の判断でいいから半分残ってお出迎えしてやってくれ」


 さて、こっちも当然出撃しなければいけない。

「ヤタはRKSが回復するまで戻って、そのままだとノーシールドで死んじゃう」

「大丈夫だ、もう戻ってる」

 実はヤタさんは相手のドローンが見えた瞬間、一目散に接続を外して猛ダッシュで帰ってきていた、あのままだと間違いなく自爆型ドローンに殺されるので当然だ。


「う、うんOK、じゃあスノウも一旦戻ってエネルギーを再充填して」

「了解です」

 カタパルトにあるハッチから直接格納庫に戻りロボットアームが自動でエネルギーの充填や簡易チェック、弾薬の補充をヤッてくれている、目の前にいるアイは目を瞑って休んでいる様子だけど、大きく深呼吸して精神を落ち着かせてるようにも見える。


「アイ、大丈夫?」

「うん、直接やないけどエッダみたら一瞬カッってなったけどへーきや」

 それは平気じゃないんじゃないかと心配になったけど、自分で深呼吸して落ち着きを取り戻しているので、まだ大丈夫なんだろう。


「エネルギー充填完了後パンゲアに続いて基地内に、現地判断を優先するけど撤退命令だけはぜっっったい聞いてね?」

「「了解」や」


 エネルギーを充填し終わり予備バッテリーも銃弾の補充も完了する、レーヴァテインは背中に担いでおいて、銃は内部戦だけど敵がArcheなのでエネルギーライフルの方を持っておく、実弾の方は同じく背中に。


「準備OKです」

「了解、それじゃ~今回はカタパルトで同時発進だよ、ヤタはこのままシールドが回復したら本艦の護衛に回ってもらうから後からヤタは来ないよ、おっけー?」


「はい」「大丈夫や」

「それじゃ~、出撃! 行っておいで!」

「了解、スノウ出ます」

「アイ、行くで!」


 二人で同タイミングでカタパルトから発進し全速力でコルキスを軸に旋回しながら突入する為の入り口を探す。


「どっから行く!」

「あっこにパンゲアが入ってる離着陸場があるから、そこから入ろか」

 アイがArcheを操作して俺のヘルメットにコルキスの座標を映す。


「…よし、確認した」

 そのポイントを目指でも確認してアイに続いて旋回する。

「ウチが先行するからサポートは頼むで」

「わかった」


 こちらの返事と一緒にアイが急加速をし自分もそれに追従する、思えば二人で一緒に戦うのはレオニダス以来になる、厳しい戦いになるという緊張感とともに、アイに背中を預けれる安心感も存在している。

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