アップデート。
色々と精神的に疲れたセレモニーの翌日、工業地帯にある前回も行った町工場へアイと二人で来ていた。
「お疲れおっちゃーん!」
空いているシャッターの中へアイが挨拶とともに元気よく入ってくる。
「よお、アイにスノウか、よく来たな」
おっちゃんが作業をしながらコチラをチラッと見て声だけで挨拶をする。
「待っといたほうがええ?」
「そうだな、30秒待っててくれ」
そう言うとおっちゃんは手早くスパナを締め、ちゃんと機体パーツと締まってるのをチェックしてからコチラへ来る。
「今日はどうした?」
「ちょっとカスタムに二人でなー、あ、そうやこれお土産」
「お、これはありがてぇ」
アイはビニール袋に入ったお土産をおっちゃんに手渡す、中身は宇宙ステーションで買ったお煎餅にクッキー、それとココへ来る途中に買ってきた飲み物。
「おい! お嬢ちゃんからの差し入れだ、皆休憩していいぞ!」
おっちゃんが作業員に声をかけると作業員がぞろぞろとお礼を言いつつ休憩室に入っていく、おっちゃんは自分のドリンクだけ取り出して、残りをビニール袋ごと作業員の一人に渡すと、近くの事務机に座る。
「適当に座ってくれ」
「はーい」
二人で椅子に座ると、おっちゃんが管理画面を起動しながら早速本題に入る。
「で、今日はなんのようだ?」
「今日はなぁ、とりあえず計画書をウチの艦のメカニックと作ってんから見てみて」
アイはそう言うと二人分のデータが入ったUSBを渡し、オーンズのおっちゃんはそのデータを確認し始める。
「なんだ、今回はレールガンはいいのか?」
「うん、とりあえず一回それは据え置き」
今回のアイの改造にはレールガンは含まれていない、その代わりにエネルギー効率の上昇と
「基本性能重視だな」
「せやねん、一応武器は買ったんやけどね先に」
アイが買ったのはショットガンだ、いつも装備しているショットガンの片方を、トリプルバトル…つまり銃身が3つある超変わり種で名前はMM30-Bohren、8ゲージ弾対応水平二連ショットガンと単発式の45口径ライフルを切り替えて撃てる。
ショットガンは元々、バックショット等の拡散する弾とスラッグ弾みたいな単発高威力の弾が使い分けれるのだけど、ドローンを撃破しつつ敵のArcheが来てからスラッグ弾に装填し直すというような時間がなかったと、コロニー進入時のアイが悩んだ結果、ワンタッチで切り替えれる銃を見つけたというわけだ。
ちなみにこのショットガンを持ってきた時、クガさんが凄くドン引きしていたのを覚えている。
「ふむ…まあこれなら予算も大丈夫そうだな、次はスノウか」
「よっしゃ」
ガッツポーズするアイを尻目に、今度は俺のカスタマイズ案を確認する。
「こりゃ、中々に大仕事だな」
自分のカスタマイズ内容は第一にまずパワーだ、あのレーヴァテインから譲り受けた大剣は今の自分の機体性能じゃどう考えても振り回せない、とにかくパワーを上げる必要がある。
「…近接型の最低ラインよりちょっと上ぐらいのパワーにした上で機動力が下がらないようにエネルギーパックを交換して、エネルギー効率の上昇、そんでブースターはそのままでOKか」
「はい」
「このエネルギーパックは結構たけぇぞ…っとエース就任したんだから予算はあるのか、ってーと後は取り寄せになるな?」
「一応パーツ自体は購入してあるのでここから」
「なるほど、購入済みか」
今回使うエネルギーパックはかなり高額なものを注文している影響で、在庫の絶対数が少ない、なので宇宙ステーションにいる間に予支払をしてあり受領証を受け取っている、これに記載してある番号をメーカーに申し出ればスグにでも工場に届けられるだろう。
「にしても、パワーを上げるだけでこんなに容量が居るか?」
「それは、ちょっとエネルギーライフルの燃費が思った以上で」
「なるほどな、それなら納得だ」
おっちゃんは俺の機体の武器欄のところを見て、改造してもらったエネルギーライフルを見て納得していた、魚座のときでもエネルギー不足で危うく死にかけたのに更に燃費の悪い武器を搭載したのだ、エネルギーパックには今回一番お金をかけなければいけなくなった。
「ま、パーツさえもうあるなら問題ない、やってやれるな」
「ありがとうございます」
予算通りに行きそうでほっと胸を撫で下ろす、これで装備はOKだ。
「そんで、どんくらいかかるん?」
「んー、そうだな、今回は二人合わせて10日ってとこだな」
「10日かー、てことは牡羊座戦線が始まる頃やな」
今日の日付が3月の11日、牡羊座になるのは3月の21日だからちょうど開始日に自分達の機体が完成することになりそうだ。
「ま、どうせ最初から参戦するにゃ、そろそろ発進しなきゃ行けない時期に改造依頼してんだ、上もわかってんだろ?」
「そうですね、今回はいつまでに準備しろとも言われてませんし、休暇は長いかと」
「そりゃあいい、常在戦場もいいが息も抜かなきゃ人間ダメになるかなら」
そういうとプリンターで契約書を発行し、アイと自分はじっくりと確認事項などを読んでからサインをして支払いを先に済ませる、その後でおっちゃんはUSBを取り外してアイに返すと立ち上がり握手を求めた。
「そんじゃあ、よろしゅうな!」
「よろしくおねがいします」
「おう! 任せとけ!」
アイと自分も立ち上がり握手を交わして契約が成立した、後は10日待つだけだ。
「んー! 終わったー!」
「だね、これからどうする?」
「どうしよっかー」
特に何をするか考えてない、いやほんと何をしよう。
「考えてなかったん?」
「なかった」
「そこはほら、デートプランぐらい考えておくとかやなー」
「デートプラン通りにスケジュール決めてってデート好きなの?」
「嫌いやな」
「じゃあノープランでよくない?」
「…確かに」
そう言いながら二人でレンタカーに乗り込み、ナビゲート機能を付けてデートスポットを検索してみる、なにか面白いところがアレばいいけど。
「ここは?」
「美術館かー、今日はもうちょっと楽しい系がええかな」
「楽しい系って…じゃあ映画とか?」
「映画は宇宙ステーションで散々みたしええかな…」
「…確かに」
宇宙ステーション10日で過ごした時、シアターにはほぼ毎日のように通っていた気がする、今公開中ののラインナップを結構見てしまったから見るものがない。
「ジャズとかナイトクラブとか」
「今昼やん」
「あ、昼なんだしご飯食べない?」
「ええね、何食べる?」
「最近いいものばっかり食ってたから、ジャンク系が食べたい」
「ええやん、ほなバーガーとかピザとか…」
宇宙ステーションでのラウンジでとる食事は、日替わりの懐石だったり、ステーキだったりすき焼きとかかなりいい食事を取らせてもらったけど、たまには気軽なジャンクフードを食べたくなる、昨日だってあまり食べれなかったけどパーティー料理だったし。
「あ、これ食べてみたい」
「なに?」
カーナビに表示された店にはチキン・アンド・ワッフルという料理名が出ている。
「なにこれ?」
「チキン・アンド・ワッフルや」
「それは見たらわかるけど」
「えっとな、ワッフルってあるやん?」
「あるね、朝ごはんとかおやつに食べるやつ」
「あれにな、フライドチキン乗せるやん?」
「うん」
「そんで食べる」
「うん?」
説明を受けたけどよくわからなかった、いや簡単に見た目は想像できたけどソレってどういう組み合わせなのか頭を傾げる。
「美味しいの?」
「食べたことないねん、でも結構伝統的な南部料理なんやって」
「え?」
伝統的なんだ、このこうなんと形容したら良いかわからない料理が。
「ほんとにコレでいいんだよね?」
「ええよ、楽しみやわー」
とりあえず、ちょっと自分は気が引けたけどアイが行きたいと言うならしょうがない、覚悟を決めて向かうことにした。
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