おお牧場が赤い。

 合流ポイントへ着く、どうやら間に合ったようで、レーダーに接近してくる物体が一見える、恐らくソレがパンゲアの戦艦かなにかだろう。


「スノウ、今から送るチャンネルに通信を合わせろ」

「わかりました」

「繋がったら通信はそっちに合わせる」

 クガさんからチャンネルの周波数を指定され、暗号を入力すると音声が聞こえてくきて、パンゲアの暗号通信と交信が成功する。


「こちらスノウ、聞こえますか?」

「こちらベッグ、聞こえる」

「よろしくおねがいします」

「よろしく、早速だが20秒後にそちらを通過する」


 レーダーの反応でこちらに近づいてくる物体が20秒後に接近するので、やはりソレがパンゲアのものである確認がとれる。


「進行方向に加速しながら、こっちのシャトルに捕まってくれ」

「シャト…え? なんですか?」

「いいから並走するように加速してくれ」

 ベッグさんに言われるがままに加速していくと、高速で接近してくる飛行物体と並走するようになる…本当にスペースシャトルだ。


「よしスノウ、捕まるんだ」

 後ろから迫ってくるスペースシャトルにベッグさん達パンゲアのArcheが何人か直接掴まっている、どうしてこんな不思議な移動をしてるかと疑問はありつつもスペースシャトルの窓枠の凹みに手をかけて摑まる。


「よし、加速してくれ」

 そのままスペースシャトルは加速していく、Archeを着ているとは言え結構無茶な移動にどうしてこうなったか疑問を投げかける。


「こっちも戦艦は修理してるか出払っててな、コレしかなかった」

「コレしかないって言っても無茶苦茶じゃ」

「しょうがないだろ、輸送艦とか遅いし手配する時間もかかる」

 それで、このスペースシャトルに少数で掴まって行こうという事か。


「そんだけ切羽詰ってるんですか?」

「どんどん持っていかれてるらしい、飯が無くなるのは危険だしな」

「他には誰が?」

「コッチ側に掴まってるのが3人、俺とスノウそれにアメリアだろ、そんで反対側にアニーとゲルトの合計5人だ」


「なんて言うか…凄いメンバーですね」

 聞いた名前は全員パンゲアのエースだ、少数だったので少し不安になっていたがこのメンバーなら逆に過剰戦力かも知れない。

「お前も入れてエース5人だけの出撃だ、豪華だろ?」

「ですね、正直ビックリしましたよ」


 スペースシャトルに摑まること10分、牧場コロニー『ボンジリ』へ到着する、ボンジリの大きさは直径3㎞強、長さは30km強あり形は円筒形である。

「聞こえるかパイロット共」

 通信から入ってきた女性の声は聞き覚えがある、レベッカさんだ。


「今回の我々の敵は食料を奪わんとする愚かな賊共だ、遠慮はいらない、あんたらなら作戦も必要ないレベルの相手よ、全部現地の判断に委ねる、存分に暴れてきなさい」


「了解、それじゃあ現場指揮は俺が取る、いいか?」

 それぞれ了解という言葉が聞こえてくる、勿論自分も異論はない。


「それじゃあ客員、離れるな俺が前に出る、出撃だ!」

 一斉にスペースシャトルから手を離し、ブーストを起動させベッグさんの機体に追従してく、自分は一つの武装を除いて基本的には射撃型なので、一番後方で追いかけることにする。


「見えたぞ」

 コロニーは構造上円筒の両端の上底と下底にある範囲から1㎞は動力部や、搬入口など各種機能が揃っている部分になっており、その部分は、なのでその部分だけ遠心力による重力はなくそこが自然とArcheの活動区域になる。


 今回賊共はその上底部分に当たる位置の搬入口と貯蔵庫から侵入しており内部へと侵入している、とは言え武装などは族もArche依存なのでコロニー内に侵入する者は最初から生身になる。


「情報通り輸送艦の数が3ね、どうする?」

「全部破壊しろ」

「ラジャー!」


 賊達もこちらに気づきマシンガンを連射してくるが、前方にザックさんが大盾のRKSシールドを広範囲に展開する、そのエネルギー範囲は広く前方に半径10mのシールドを展開して後方の俺達全員から攻撃を守る。そのまま前衛をシールドタックルで一人弾き飛ばすとシールドの脇からアメリアさんとアニーさんが単発式のライフルの射撃で一機一機、Archeを丁寧に撃墜していく。


「前衛の殲滅はOKよ」

「はーい、次お願いしマース!」

「あいよ」

 前衛が崩れたところで次にゲルトさんが近接武器で戦艦に突っ込んでいき、輸送艦の操舵室の窓を破って中にと入試し、暫くして爆発が起こる。


「おい、奥の船が出ようとしてる、誰か止めろ」

「了解です!」


 一番奥の船が出るのが見え、狙いをすませてブリッジに向かってエネルギーライフルを撃ち込む、手に入った報酬で前回の反省を活かして武器をいくつか更にアップグレードしておいた、今使ったのは3秒チャージでシールドを貫通したけど威力不足で苦戦した反省を活かして、チャージ時間が伸びたけれどもその分威力を上げたもので、最大5秒チャージで威力は二倍になったエネルギーライフル、お値段は三倍。


 お金をかけただけあって、撃ち込んだエネルギー弾はArcheのRKSとそう大差ない出力しか無かったシールドを容易く貫通して輸送艦の内部で炎が上がり、動きを停止していた。

「いいぞ、あと一隻だ!」


 残り一隻もそのまま前に出ていたアニーさんとアメリアさんが二人で制圧し始めており後は時間の問題に見える、他の場所の見張りをしてたり護衛してたArcheも攻撃してきたが各個撃破が終わり作戦時間10分もかからず戦いは終了した。


 輸送艦三隻が破壊され、退路がなくなったこともあり搬入していた作業員も続々と投降を始め、残りは警備軍へ引き渡すことで戦いは呆気なく終わる。

「ったくヒデェな」

 ベッグさんが、牧場のコロニーを覗いていたので、一緒に覗いてみると牧場の一部が赤く燃えていた。


「あぁ牧場まきばが赤いわ…」

「酷いことしますネー」

 アメリアさんとアニーさんが次々に感想をいいながら、ため息をつく。


「被害どんくらいなんですかね」

 あんまりお肉の値段が上がらないと良いんだけど。

「まあ…あれぐらいならすぐ沈下するし牧草も買えるだろうが一隻既に出発されたらしいからな…冷凍庫一個分、大体1万トンぐらいはロスしたんじゃねぇか?」


「アウチ!」

 破壊した輸送艦にもコンテナがいくつか既に積まれていたのでその肉も一度検査しないといけないだろうし、思ったより被害が大きそうだ。


 その後牧場の被害の報告を見せてもらえた。

 鶏、豚、牛合わせて1万トンの強奪に、1万トンの肉の検査行き、ただ検査分は運ばれただけなので検査によっては普通に食用可能なので安心して良いと思う、牧場の火災被害は見た目以上に大差ないらしく、牧草を輸入すれば大丈夫な範囲らしい、価格は一時的に少しだけ上昇するけど、ただ一番ショッキングなのは魚だ。


「…マグロとエビの養殖場にヒ素?」

「えぇ、ヒ素を投げ込まれてしまって全滅…浄化に…いえ設備の交換もありますし一ヶ月はかかるので今年の生産はもう絶望的かと」

 なんてこった、マグロとエビが暫く食べれなくなるかも知れない。


「まじすか…」

「残念ながら…」

 監督者の話を聞きながら肩を落とす。


「あー、その、どんまい」

「いえ、輸入品も多いから食べれなくなるってわけじゃないですし」

「オーマイガー」

 自分よりもアニーさんの方がかなっりショックを受けてる、アニーさんはエビが結構好きらしく特にガーリックシュリンプが好きだそうだ。


「まあ、助かった分だけでも良しとしよう、ほら感謝の代わりにお土産くれるぞ」

「リアリー!? イエー!」

 ベッグさんがお土産と言った瞬間のこのアニーさんの気の変わりように苦笑いしながら、何がもらえるか聞いてみる、好きな肉を持っていって良いそうで、既にアニーさんはティーボーンステーキを1ポンド貰っていた。


「ほら、スノウはどうする?」

「じゃあ俺はすき焼き肉でも、結局まだでしたし」

 パーティーの時食べようと言っていてまだ食べてなかったのを思い出す、丁度いい機会だからこの際もって帰ろう、皆喜ぶと思う。


「じゃあ俺も同じので、一緒に食おうぜ」

「いいですよ」

 ベッグさんも一緒に食べる約束をして、迎えのシャトルに、今度はArcheのままだけど中に乗って宇宙ステーションへ戻る、次の宇宙食はエビとツナは減りそうだな…と考えながら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る