第395話 托塔天王②
『はい。この“梁山泊”
鬼の形相をした仮面を被った、一人の貴婦人が恭しく一礼した。
「“梁山泊”
彼女……[托塔天王]が告げた言葉を、俺は
というか、こんなの『攻略サイト』のどこにも載ってないぞ!?
色々と不思議なことがあり過ぎて、頭が混乱するんだけど!・
『うふふ……[神行太保]……いえ、今は[シン]と呼ばれているのですね』
『はう!?』
声を掛けられ、[シン]がピン、と背筋を伸ばした。
ん? この反応……。
「[シン]……ひょっとして、[托塔天王]のことを知っているのか?」
『し、知らないのです! ですけど、身体が勝手に緊張してしまうのです!』
『うふふ、それも仕方ありません。[シン]に……いえ、[ゴブ美]の魂に融合した、[神行太保]の守護者であった頃の記憶が宿っているのですから』
『「[ゴブ美]の魂と融合したあっ!?」』
[托塔天王]から放たれた言葉に、俺と[シン]は驚愕した。
い、いや、[シン]のこの姿は[ゴブ美]のクラスチェンジした姿でしかないはずだろ!?
なのに、別の
『……本来であれば、[ゴブ美]はクラスチェンジ先として[ホブゴブリン]もしくは[レッドキャップ]しかなかったはず。なのに[神行太保]へとクラスチェンジをした。おかしいと思いませんか?』
「そ、それは……」
確かに、[托塔天王]の説明には一理ある。
だけど、元々[神行太保]はゲームイベントで配布された
だから、ゲームの世界として捉えるなら、別に[ゴブ美]が[シン]になっても不思議じゃない。
『うふふ、納得いかないって顔をしていますね。ですが、よくよく考えてみてください。果たしてあなた達は、本当に[神行太保]へと至る道を経て、クラスチェンジしたのですか?』
「っ!?」
そ、そうだった……俺達は、ただ[レッドキャップ]にクラスチェンジをしようとしたら、
だから、本来ならこのクラスチェンジはあり得なかったんだ。
『……これは、
「アンタ達の、意思……」
『はい』
本当に、訳が分からない……。
結局、どうして“梁山泊”
『既に[呼保義]達からも聞いているかと思いますが……私達は、この世界の“管理者”と戦っています』
「“管理者”……そうだ! 俺はソイツが何者なのか聞きたいんだ!」
俺は[托塔天王]に詰め寄る。
『うふふ……“管理者”とは、この世界の
「っ!?」
[托塔天王]にそう告げられ、俺はハッとなる。
入学早々俺にヘイトが集まったことも、アオイが二学期に入学することも、加隈の奴が俺と入れ替わってクソザコモブのポジに成り代わってしまったことも……全ては、その“管理者”って奴の力が働いたから、ってことか……。
『うふふ……あなたは、ここが別の世界の物語だということにあまり驚かないのですね?』
「ああ……[知多星]からも聞かされているしな……」
ここで、あえて『攻略サイト』の話をする必要はないだろう。
[知多星]だって、そのことまでは知らなかったようだし。
『そうですか……なら、話は早いですね。そして、私達“梁山泊”は、そんな常に迎える同じ結末に対して、疑問を抱いておりました』
「…………………………」
『おかしいとは思いませんか? どうして私達は、そのような物語に付き合わなければいけないのか。どうして、理不尽な扱いを受ける者と幸福に満ち
ああ……俺も、そう思うよ。
なんで、サクヤさんが死ななきゃならないのか。
なんで、サクヤさんが苦しい思いをしなきゃいけないのか。
そのために、俺は……。
『私達はそんな決まった結末を覆すために、それを成し遂げる者を探しました』
「…………………………」
『ええ……そして見つけたのは、あなた達です』
そう、か……[ゴブ美]の[シン]へのクラスチェンジは、“梁山泊”
『うふふ……私達も驚きましたよ。この物語で主人公に真っ先にやられてしまうあなたが、物語が始まる前に必死にあがいているじゃないですか。しかも、物語ではあり得ない行動をしながら』
そう言って、[托塔天王]はクスクス、と笑う。
ああ、そうだよ。だって、
『……そんな、物語とかけ離れた行動を繰り返すあなたなら、ひょっとしたら物語を覆すことができるのではないか、そう考え、[神行太保]を託したのです』
「そっか……」
……どんな思惑があったにせよ、俺と[ゴブ美]に希望を与えてくれたことは間違いない。
ただ、感謝しかない……。
『……私達“梁山泊”は、あなた達と共に戦いましょう。“管理者”と』
「ああ……!」
『ハイなのです! コテンパンにやっつけてやるのです!』
俺と[シン]は拳にグッと力を込める。
『ですが』
ん? まだあるのか?
『うふふ……私にも、あなた達を少し試させてもらってもいいですか?』
そう言うと、[托塔天王]の鬼の面がニタア、と不気味に
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