第377話 梁山泊領域
「それで……その“梁山泊”
学園に着くなり、サクヤさんが尋ねる。
「はは……実は……」
そう言うと、俺は目の前にある玄関前に設置されている噴水を指差した。
「エ? ひょっとしてこの噴水ガ?」
「ああ、まあ見てくれ。[シン]」
俺は[シン]に噴水の水に触れるように指示をする。
『はう? これでいいのですか?』
「はは、[シン]見てみろ」
『っ!?』
すると、透明だった噴水の水の色が、みるみるうちにマーブル模様に変化した。
「さあ、行きましょう」
「え!? い、行くってどこに!?」
「ここですよ」
俺は[シン]の手を取り、そのまま噴水の中へとダイブした。
『はうはうはう!? こ、ここはどこなのですか!?』
突然変わった景色に、[シン]が慌てた声を出す。
だけど、それもそうだろう。今まで学園の玄関前にいたはずなのに、目の前には巨大な池のほとりと、そびえ立つ山が現れたんだから。
「ヨーヘイくん!」
「サクヤさん、みんな」
俺達の後を追って噴水に飛び込んだサクヤさん達とも合流し、目の前の池のほとりを眺める。
「ヨーヘイ、ここガ……?」
「ああ、“梁山泊”
プラーミャの問いかけに、俺はそう告げて頷いた」
「クク……まるで水墨画の世界にでも迷い込んだかのようだな。それで、肝心の
「それは、あれだよ」
俺の指差した池の岸に桟橋があり、そこに一
「ふむ……あの船に乗って奥へと進むのか」
「はい……ただ、一つだけ問題が」
「問題?」
そう告げると、先輩が訝し気な表情を浮かべた。
「ええ……この“梁山泊”
この
とはいえ、中ボスである
「[シン]は【神行法】があるので足場の悪さをものともしませんが、サクヤさん達は苦労するかもしれません」
「だろうな。だが」
そう言うと、サクヤさんがふ、と表情を緩めた。
「別に一歩も動かずとも、向こうから襲い掛かってくるのであれば、特に困ったりはしない」
「はは、そうかもですね」
サクヤさんの答えに、俺はクスリ、と笑ってしまった。
確かにサクヤさんの言う通り、この
要は、今のサクヤさんは一人で
「フフ……
「クク……まあ我も、遠距離攻撃は得意だしな」
はは……本当に、俺の仲間はみんな頼もしいな。
『はう! [シン]も負けていられないのです!』
「ああ、そうだな」
そして俺達は桟橋へと向かい、船に乗り込んだ。
◇
「むむ……なかなか
船に備え付けられているオールを漕ぎながら、先輩が顔をしかめる。
一応、十人以上も乗れる船なんだけど、漕ぎ手が四人しかいないからなかなか大変だ。
「ハア……あの一年生、恨むわヨ」
「クク……我はこうやって船に乗ったのは初めてなのだが、意外と楽しいものだな」
疲れてきたのか、プラーミャがゲッソリとした表情を浮かべているのに対し、中条は嬉々としてオールを漕いでいる。
その時。
「む! みんな、来たぞ!」
水の中から、まるで待ち構えていたかのように
「[シン]! また水の中に潜っちまう前に、コイツ等を全員倒せ!」
『ハイなのです! 【神行法・跳】!』
船の上から一気に跳躍すると、[シン]は水虎の頭にある皿へ素早く呪符を貼り付けた。
『【爆】』
『『『『ギイッッッ!?』
一斉に水虎の頭を爆破し、それと共に皿が粉々に破壊された。というか、水虎……河童って、こんな鳴き声するのな。
「トドメヨ! 【ブラヴァー】!」
「クク……【ツァーンラート】」
炎をまとった巨大なハルバードと金属の無数の歯車が、水上でもんどり打つ水虎に間髪入れずに襲い掛かった。
「フン! 他愛ないわネ!」
腰に手を当てながらサンドラが鼻を鳴らしたタイミングで、水虎は幽子とマテリアルに変わった……けど。
「あーあ……池の上だから、マテリアルが全部池の底に沈んじまったなあ……」
『はうううう……[シン]のアイス代が……』
一応、マテリアルは金になるから、できれば回収したかったけど……仕方ないかあ……。
「ふふ、マテリアルなら毎日“ぱらいそ”
「ですよねー……」
苦笑しながら慰めるサクヤさんに、俺は肩を落としながら頷いた。
すると。
「ア! アレ!」
プラーミャが指差したその先には、『第一〇八門』と書かれた看板が掲げられた赤い鳥居と小さな島が現れた。
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