第374話 お姫様のお世話?
――キーンコーン。
今日の授業の終了を告げるチャイムが鳴り、クラスの連中が帰り支度を始める。
一応、このクラスには一―二だった連中も一定程度いるが、勢力としては少数なので肩身の狭い思いをしていた。
というのも、一―三だったクラスのみんなが、やっぱり過去のこともあってか一―二だった奴等に白い目を向けているのだ。
それどころか。
「よ、望月。俺達も同じクラスになったんだし、アイツ等には好き勝手言わせねーよ」
「ホントホント、一年の時は自分達のこと棚に上げてよくあんなこと言えたよねー」
「まあ、ドッチにしろ二年でも期待してるぜ!」
とまあ、むしろ俺を励ましたり期待してくれたり、本当に好意的に接してくれるのが嬉しくてたまらない。
いや、一―三のみんなは本当に最高だよな。あの学園祭の時も俺達生徒会を手伝ってくれたりして、ノリだっていいし。
「ははっ」
そんなみんなの優しさに、俺は思わず笑ってしまった。
「……モウ、キモイワルイわネ」
「うえ!?」
いつの間にか帰り支度を終えたプラーミャが傍にいて、ジト目で俺を見ていた。
「お、おう。とりあえず、サンドラの所に行くか」
「エエ」
俺はヒューズボックスを持つと、プラーミャと一緒にサンドラ達のいる教室へと向かう……んだけど。
「サンドラさん? 先生に呼ばれて立花くん達と一緒に教室を出て行ったけど?」
サンドラ達の姿が見当たらなかったので一-三だった奴に聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
「ウーン……それって、用件は何なのかって分かるか?」
「ううん。みんなも、不思議そうに首を傾げて出て行ったよ」
「そっか、ありがとう」
俺はお礼を言ってソイツと別れると、プラーミャへと向き直る。
「だそうだけど、どうする?」
「……ここで待ってても退屈だシ、先に先輩のところに行くわヨ」
「そうだな」
てことで、俺達は三年生の教室がある四階へと移動する。
「む、望月ヨーヘイにプラーミャではないか」
真っ先に出会ったのは、中条だった。
「オッス。サクヤさんに会いに来たんだけど、どのクラスだっけ?」
「うむ、藤堂殿は我と同じクラスだからな、コッチだ」
中条に案内され、サクヤさんのいる教室……“三―二”へ来ると。
「ん? ヨーヘイくんじゃないか!」
帰る支度をしていたサクヤさんが、ぱああ、と笑顔を見せ、駆け寄ってきた。
「そ、それにしても、わざわざ迎えに来てくれるだなんて珍しいな」
「はは……いや、サンドラ達が先生に呼ばれていなかったんで、プラーミャと一緒に先にコッチに合流しにきました」
「う、うむ、そうか! 私も帰る準備は終わったから、いつでも行けるぞ!」
何というか、こうやって教室まで迎えに来ただけでこんなに嬉しそうにするんだったら、今度からはサクヤさんを迎えに来よう。そうしよう。
すると。
「いや、本当にあの後輩クンと一緒にいると雰囲気変わるな……」
「ていうか、去年から本当に柔らかくなったよねー……」
などと、コッチを見ながらひそひそと話をしている先輩方……ちょっと恥ずかしい。
「そ、そろそろカズラさんの教室に行きましょうか。確か、三―一でしたよね?」
「あ、う、うむ。なら行こう」
俺達は教室を出て今度はカズラさんの教室に向かうと。
「氷室さん? ああー……先生に呼ばれて夏目さんと一緒にどこか行ったけど?」
まさか、カズラさんまで先生に呼ばれて席を外してるとは思わなかった。
だけど……俺の脳裏に、
「み、みんな、ちょっと職員室に行ってみよう」
「ん? ああ、それはいいが……」
「職員室になにかあるノ?」
俺の提案に、サクヤさん、プラーミャ、中条が首を傾げる。
でも……もし
お、お願いだから違っていてくれよー……。
◇
「失礼します」
職員室へやって来ると、サクヤさんが一切
なるほど……サクヤさんの中で様子見って言葉は皆無なんですね?
だけど……俺の嫌な予感ってヤツは、どうしても当たるらしい。
「ア! ヨーヘイ!」
「ヨーヘイくん!」
「ヨーヘイさん」
とまあ、みんなが職員室の中に揃っていて、俺達を見るなり笑顔になった。
そんな中、俺はそのみんなの前にいる一人の女の子に注目して仕方がない。
「ふむふむ……あちらの御仁は誰なのじゃ?」
とまあ、『のじゃ』語を駆使するこの女の子、それこそが入学式で答辞を行ったメインキャラの一人、林ヒョウカ。
なお、『のじゃ』語を使うのは、彼女が“中原王国”のお姫様というやんごとない身分だからだ。というか入学式の答辞の時のしゃべり方はどうしたんだよ。ネコ被り過ぎだろ。
そして、主人公やメインキャラと一緒に職員室にいるってことは、林ヒョウカのイベに突入しているということ。
だとすると。
「サンドラ達がこの職員室に呼ばれたのは、その新入生の世話を頼まれたから、ってことでいいんだよな?」
「アラ……よくご存じですわネ」
このことを知っていたことが不思議だったのか、サンドラがまじまじと俺の顔を
ちなみに、なんで林ヒョウカの世話を生徒側で気を遣ってしなければならないのかについては、俺も知らん。ゲームの仕様としか言いようがない。
「ふむ……だが氷室くんには彼女の世話の話が来て、私に一報もないというのは解せんな」
だけど、それについては仕方がない。
だって、俺やサクヤさん、プラーミャに中条は、いずれも主人公の敵やライバル、果ては名前しか出ていない存在なのだから。
「あはは、じゃあヨーヘイくんも、ボク達と一緒に林さんのお世話を……「イヤなのじゃ!」」
立花が俺達を引きこもうとした瞬間、林ヒョウカは明確に俺達を拒絶した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます