第349話 プレゼントの物色

「くあ……!」


 日曜日の朝、今日はいつもの休日より早めに起きると、相変わらず気持ちよさそうに俺の上に乗っかって寝ている[シン]をどけてベッドから降りる。


「ウーン、今日もいい天気だなあ……」


 さすがに十二月ともなると寒くて仕方ないから、少しでも晴れているほうがありがたい。

 特に、今日みたいに一日中出かけるような日は。


「うう……! は、早く着替えちまおう……」


 起きたばっかりでまだ部屋も寒いので、俺は慌てて服に着替え、リビングへ向かう。


「母さん、おはよう」

「あら、おはよう。今日は日曜なのに早いわね」

「あー……今日はちょっと忙しいから」


 俺はテーブルに座ると、母さんが朝食の用意をしてくれた。

 ふむふむ、今日は豚汁と玉子焼きかあ……寒い日にはもってこいだな。


「いただきます!」


 俺は手を合わせて朝食をかき込む。うん、美味い。


 すると。


『はうはうはう! 寝坊してしまったのですううううう!』


 平日と勘違いしているのか、[シン]が慌てた様子でリビングへと下りてきた。


「うふふ、おはよう[シン]ちゃん」

『はう! おはようございますなのです! お母様!』


 ビシッ! と敬礼ポーズを取ると、[シン]が俺の隣の席に座る。

 そして、母さんからス、と今日もアイスが差し出された。


『んふふー……やっぱり朝一番のアイスは格別なのです』

「……お前、こんな寒い日の朝からアイスなんかよく食えるな……」

『何を言ってるのですか! アイスに季節は関係ないのです! 常在戦場なのです!』

「いや、なんでだよ」


 アイスごときでいちいち身体を張れるか。


「まあいいや。ところで[シン』、今日は日曜日なのにお前までこんな早起きする必要なかったんじゃないのか?]

『はう! でもでも、マスターはお出かけするのです! なら、それについて行くのが[シン]の務めなのです! そして、ご褒美にルフランのアイスを食べるのです!』

「下心丸出しじゃねーか」


 といっても、[シン]のことだからこうなるのは分かってたんだけどな。


「ご馳走さま。今日の朝メシも美味かったよ」

「あらあら、お粗末様。だけど、学園に入学してからはいつも美味しそうに食べてくれるから、私も作り甲斐あるわ」

「はは……」


 嬉しそうに微笑む母さんに対し、俺は苦笑するしかない。

 だって、今まで美味しくないと感じていたのは、結局のところ俺が母さんの想いを勘違いしてたからだもんなあ……。


 俺はちょっと気まずくなり、そそくさとリビングを出て洗面所に向かう。

 で、歯磨きと身支度を整えてから部屋に戻った。


「さてさて……念のため、今日のプランを確認しておかないと……」


 俺はスマホを取り出し、昨日の夜にあらかじめブクマしておいたページを開く。


「ウーン……かなり効率的に回らないと、今日一日じゃ終わらないぞ……」



 これは気合い入れてかからないと、だな。


『はう? マスター、まだお出かけしないのですか?』


 アイスを食べてご満悦で戻ってきた[シン]が、人差し指をくわえながらコテン、と首を傾げた。


「ん? もうしばらくしたら出かけるぞ。あんまり早いと、店がまだ開いてないからな」

『お店、なのです?』

「ああ」


 そう……今日は、今度のクリスマスに向けたプレゼントを買いに行くのだ。


 ハッキリ言ってしまえば、単純にヒロインの好感度を上げるならネット通販で好感度アップのアイテムを購入すればいいんだろうけど、そもそも準ラスボスのサクヤさんと名前しか登場しないプラーミャの好感度アップアイテムなんて分からないから無意味だ。


 何より、一緒に戦ってくれる、支えてくれるみんなへの感謝の気持ちを込めてプレゼントしたい。

 だから、ちゃんと俺自身の目で選んで買いたいからな。


 そのために、泣く泣くサクヤさんやサンドラ達のお誘いを蹴ってまで、今日のスケジュールを確保したんだから。


「まあ、というわけで俺は今日、十四人分・・・・ものプレゼントを買わないといけないんだよ」

『はうはう! これでマスターはモテモテなのです! クリスマスの夜に血の雨が降るのです!』

「いや、なんでだよ」


 というか、プレゼントの相手には男もいるんだけど。

 言っておくが、『ガイスト×レブナント』にBLの要素はないからな。


「さて……それじゃ、そろそろ行くか」

『はう! お出かけなのです! ショッピングなのです!』


 ということで、俺と[シン]はクリスマスプレゼントを買うために駅前に向かった。


 ◇


「ウーン……やっぱり、コッチのほうが似合うかなあ……」


 雑貨屋に来た俺達は、早速プレゼントを物色している。

 なお、男連中・・・子ども達・・・・に関しては選ぶのが比較的簡単だったので、買い物はアッサリ終わった。

 というか、少なくとも男相手に真面目に選ぶつもりもないのだ。


「まあ無難なところでいけば、アクセサリー系がいいのかな……」


 とはいえ、アクセサリーに関してはセンスを問われそうだし、それはそれで難しい……。


 だけど。


「お、これなんかいいな」


 見つけたのは、様々な色の水晶が選べるタイプのネックレスだった。

 しかも、細いチェーンの部分はシルバーであしらわれているし、これならいいかも。


 一応、素材はプラチナも選べるみたいだけど、あまり高くなりすぎてしまうと、もらう側が気を遣っちゃうからな。程々がいいのだ。


「すいません。このネックレスなんですけど……」


 俺は店員さんを呼び、水晶の色を指定して注文する。

 もちろん、色に関してはサクヤさん達の瞳の色に合わせたものだ。


「分かりました。プレゼント用のラッピングはしますか?」

「はい、お願いします」


 店員さんがラッピングしている間、他のものも物色したりしていると。


『はうー……綺麗なのです……』


 [シン]が、陳列されている髪留めをウットリとした表情で見つめていた。

 へえー……悪くないデザインだな。といっても、今日は買わないけど。


「お待たせしましたー!」

「あ、ありがとうございます。そういえば……」


 俺は店員さんに少し質問した後、ラッピングされたネックレスを受け取って店を後にした。


「さあて、意外と早く買い物が終わったな。んじゃ、ルフランにでも行くか」

『わあい! なのです!』


 買い物を済ませてホクホクの俺は、両手を上げて喜ぶ[シン]と一緒にルフランへと向かった。


 あ、もちろん[シン]のためのクリスマス用の特別なアイスケーキも、ルフランでバッチリ注文したとも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る