第340話 千里行
「……【フォース】」
俺の後ろにいた加隈が、ポツリ、と呟いた。
『ハハハハハ! コイツ等ニハモウ、オ前ヲ止メル手段ハモウナイ! ダカラ……藤堂サクヤヲ消セ! [
『ケタケタケタケタ!』
賀茂の言葉を受け、嬉しそうに
そして。
――ブオン。
[
「あ……ああ……」
俺は力なく声を出し、立ちすくむ。
他のみんなも、あまりの出来事に訳が分からず、
『ハハッ! ヤットダ! ヤット
そう言うと、賀茂は
『アアソレト、男ハイラネーカラ、ココデ
賀茂がそんな最低な言葉を放っているにもかかわらず、みんなは一切反応を示さない。
おそらく、サクヤさんが目の前で消えてしまったショックから、立ち直れていないんだろう。
その時。
「――【千里行】」
そんな静かな声が、賀茂の下品な笑い声に紛れて聞こえた。
はは……賀茂の奴、
『ッ!? ナ、ナンダ!?』
突然、フレスヴェルグの目の前で幽子の渦が巻き起こり、賀茂が驚きの声を上げる。
「ははっ! 加隈、教えてやれよ!」
俺は笑いながら後ろへ振り向き、加隈を見て促す。
「ヘッ! オマエの
『ッ!? マサカ、【フォース】カ!?』
はは、さすがに『攻略サイト』を見てるだけあって、加隈のスキルについても知っていたか。
そう……加隈の[ロキ]が持つスキル、【フォース】は、[ロキ]の視界に入ったものの一部を一枚絵のように切り取り、指定した相手の視界に投影して
実際、このスキルは
ただ、スキル使用条件が厳しいことと一度使うとしばらくは使えないから、なかなか使いどころが難しいんだけどな。
それを……加隈はこの土壇場で決めてくれたんだ。
そして、幽子の渦が徐々に薄れてゆき、中から現れたのは……サクヤさんと、巨大な
「はは……!」
サクヤさんの……[関聖帝君]と赤い馬……【赤兎馬】の威風堂々とした姿に、俺は打ち震える。
だけど、それもしょうがないだろ! 俺は今、『ガイスト×レブナント』最強と呼ばれた、
「ふふ……行け! [関聖帝君]!」
『(コクリ!)』
サクヤさんの合図で【赤兎馬】が
フレスヴェルグはその巨大な爪を振りかざして待ち構えるが。
「おおおおおおおおおおおおおッッッ!」
サクヤさんの咆哮と共に、[関聖帝君]が馬上から青龍
それも、
――斬ッッッ!
『グオオオオオオオオオオオッッッ!?』
メッタ切りにされたフレスヴェルグが、断末魔の叫び声を上げながら床に転がり落ち、その姿を幽子に変えてサクヤさんに吸収されていく。
「っ! サクヤさん!」
俺はその名を叫ぶと、サクヤさんに向けて全力で走った。
世界一大切な
「う……っ……ふふ、ありがとう……」
「はは……あなたを支えるのは、俺だけの特権ですから……」
“ウルズの泥水”が供給されてよろめくサクヤさんを抱き留め、俺達は微笑み合う。
あとは。
「ふふ……さあ、私の[関聖帝君]と【赤兎馬】が放つ青龍偃月刀の刃、貴様に受け止めることができるか?」
『ッ!?』
口の端を持ち上げて挑発するサクヤさんに、賀茂は思わず息を飲んだ。
そうだよな? 『攻略サイト』を熟読した、オマエなら分かるよな?
あの【千里行】の、
『攻略サイト』によれば、五人単位のチームである主人公達に対し、ランダムに物理防御、属性防御、状態異常防御を全て無視した、【一刀両断】の三倍の威力を誇る攻撃が
プレイヤー側は、この【千里行】が発動された瞬間、誰か一人でもいいから食らわないようにと神に祈るらしい。
だって、五人全員が一撃ずつ食らったら、その時点で全滅してしまうのだから。
なのでサクヤさんと[関聖帝君]の攻略法は、防御や回復は一切度外視して、とにかく五人の最強スキルをぶつけ続けて
「ヨーヘイくん……もう、大丈夫だ」
無事に“ウルズの泥水”を吸収し終わったサクヤさんが、俺からス、と離れ、賀茂と[
そして。
「では……参るッッッ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます