第336話 氷の微笑の援軍
一人の
「っ!? ヨ、ヨーヘイくん……これは……っ!?」
「ま、まさか……!?」
俺達は、幽子の渦を凝視する。
ここにいる全員が、一度は見覚えがあるこの現象。
これは……闇堕ち……!?
俺達が見守る中、幽子の渦が徐々に薄れ、現れたのは。
『アハア♪』
その目を漆黒に変え、舌を大きく出した賀茂と。
『ケタケタケタケタ♪』
カクカクとした動きを見せる[
そして。
「っ!? ……ここで、
追加で現れた一体の巨大な
コイツは、九つの柱の一柱……“アースガルズの守護者”である“フレスヴェルグ”。
俺達のレベルを考えれば、それほどの強さではないのかもしれないが、さらに醜悪に変化した[
さて……どうやって……っ!?
『ハハハハハ! ソウカ……ソウカ! コレコソガ、[
変わり果てた[
というか、それよりも聞き捨てならない言葉を吐いたぞ!?
「オ、オイ!? それはどういう意味だ!?」
「ハハハハ……アン? 何ダ、コノクソザコモブ、マダイタノカ」
まるで道端の石ころでも見るかのような視線で、賀茂が俺を見やる。
だけど……はは、この賀茂から感じるプレッシャーはなんだよ……っ!
『ハハ、クソザコモブニモ分カルヨウニ教エテヤル。[
「いざなみの……みこと……?」
理解が追いつかず、俺は賀茂が放った言葉を
どういうことだよ……『闇堕ちエンド』を引き起こしたのは、[
「ヨーヘイ! ボーッとしてるんじゃないわヨ!」
「うお!?」
グイ、と無理やり身体を引っ張られ、俺は思わずよろけると。
――ヒュ。
俺がついさっきまでいた場所で、空を切る音がした……って!?
それを見た瞬間、俺は戦慄を覚える。
だって……床が、あり得ないほどの滑らかさで
『ッ! 来ますわヨ! 【ガーディアン】!』
俺は転がるようにサンドラの[ペルーン]が展開する盾の陰に隠れる。
――ギインッッッ!
重厚な盾に激しくぶつかる……いや、この音は一体、なんて表現したらいいんだ!?
とにかく、今まで聞いたことがにないような、そんな音が俺の耳に残っていた。
「クッ!? こちらも面倒なッッ!」
サンドラの盾の裏側へ回り込むようにフレスヴェルグが旋回し、その巨大な爪を振りかざして襲い掛かる
「ホ! 【
土御門さんの[
「ヨーヘイくん……どうする……?」
俺にそっと身体を寄せ、サクヤさんが尋ねる。
確かにこんなジリ貧の状態じゃ、手も足も出ないままやられちまう……。
せめて……せめて、さっきのようにこの六人で[
「ふむ……ならば、まずはあの“柱”から何とかするしかあるまい……」
そう言うと、サクヤさんは右手薬指から“エリネドの指輪”をはずすと、ス、と一歩前に出た。
「サ、サクヤさん!?」
「ヨーヘイくん……あの“柱”はこの私と[関聖帝君]が引き受けた! 君達五人は、賀茂カズマと醜悪な
そう叫んだ後、サクヤさんと[関聖帝君]が盾の陰から飛び出し、フレスヴェルグへと突撃していった。
「っ! みんな! 俺達はあの
「クク! 任せろ! 【ツァーンラート】!」
中条の[デウス・エクス・マキナ]が、無数の歯車を展開して[
だけど。
――ヒュ、ヒュ、ヒュ。
「っ!? な、なんだと!?」
さっき俺が聞いた風切り音が鳴ったかと思うと、あれだけあった金属の歯車が、一瞬にして
『ハハハハハ! コウナッタ[
「させませんワ! 【ガーディアン】!」
――ギインッッッ! ギインッッッ! ギインッッッ!
クソッ! これじゃ防戦一方だ!
なんとか……なんとか、こちらも攻撃に……っ!?
『ハハ……ソウイヤ、クソザコモブノ
そう言うと、賀茂はニタア、と口の端を吊り上げ、フレスヴェルグと対峙しているサクヤさんを見た。
ま、まさか!?
「やめろおおおおおおおおおおッッッ!」
『ハハハハハ! オマエノ目ノ前デ、
『カタカタカタカタ!』
俺の必死の叫びもむなしく、もはや会話することすらできなくなった[
――タン、タン、タン、タン。
『ッ!?』
規則的な乾いた音が等間隔で響き渡り、[
そして……その聞き慣れた声は……!
「カズラさん!」
「ふふ……遅くなりました」
そう言うと、カズラさんはニコリ、と微笑んだ。
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