第328話 それぞれの戦い②

■アレクサンドラ=レイフテンベルクスカヤ視点


「食らエ! 【ブラヴァー】!」


 ――ドオオオオオオオオオオオン!


 ヨーヘイ達を先へと行かせ、ワタクシとプラーミャは賀茂カズマのである四人と交戦中、なんですけド……。


「アアモウ! またヨ!」


 先程から、四人のうちの一人の【水属性魔法】で本体の幻を生み出し、ワタクシ達の攻撃が思うように当たらなイ。

 本当に、面倒な魔法ですわネ……。


「サンドラ! この【ミラージュミスト】を使う奴と、一度戦ったことがあるんでショ? その時はどうやって倒したのヨ」

「エエト、その時ハ……」


 あれハ、ワタクシがヨーヘイとの勝負にこだわって、“グラハム塔”領域エリア領域エリアボスのタロースと戦っていた時に、悠木サンが乱入してきたんでしたわよネ……。


 フフ、今思い出したら、懐かしいですワ。


「モウ! どうせヨーヘイとのこと考えて思い出し笑いしてるんでショ! 今はそれどころじゃないノ!」

「フエ!? ゴ、ゴメンなのですワ……」


 そ、そうでしたわネ……今は戦闘中ですもノ、気を引き締めないト。


 あの時は、[シン]の呪符で【水属性魔法】そのものを無効化したんでしたわネ。

 かといってワタクシとプラーミャに、そんなスキルはなイ。


 だったラ。


「プラーミャ! この厄介な【水属性魔法】を、アナタの炎で全て蒸発させてくださいまシ!」

「! フフ、それいいわネ!」


 ワタクシの言葉を受け、プラーミャがハルバードを構えて見えない相手に突進するト。


「サア! 姿をあらわしなさイ! 【ヴァルカン】!」


 床から無数の火柱が立ち、階層の気温がみるみる上昇していク。というか、さすがにこれはワタクシも暑いですワ……。


 ということデ。


「【ガーディアン】」


 ワタクシは周囲に盾を展開して、熱そのものを遮断しタ。


 盾の隙間から様子をうかがい、しばらくするト。


「くう……っ!」


 暑さで顔を歪めた四人が、徐々に姿を現わしタ。


「フフ……やっと出てきたわネ」


 そんな彼女達を眺めながら、プラーミャがニタア、と口の端を吊り上げル。


「ヒッ!? 【ミラージュ……「させるかアアアアアアアアアアッッッ!」」


 一人が再度【ミラージュミスト】を展開しようとするけド、それよりも先に[スヴァローグ]のハルバードの刃が迫っタ。


 そしテ。


「キャアアアアアアアアアアッッッ!?」

「お姉ちゃん!?」


 ハルバードの一撃を食らイ、黒の修道服をまとった精霊ガイストが弾き飛ばされると同時に大学生の女性も倒れ、その妹と思われる学園の生徒が慌てて駆け寄ル。


 当然、このワタクシがそれを見逃すはずもなク。


「隙だらけですワ! 【裁きの鉄槌】!」

「アアアアアアアアアッッッ!?」


 まるで魔女のような白色の服をまとい、その手に杖を持った精霊ガイストの脳天にメイスを叩きつけ、周囲に稲妻がほとばしル。


 妹である彼女も、大学生の姉と並んでその場に倒れこんダ。


「フフ……これデ」

「エエ……あと二人」


 慄く二人を見やりながら、ワタクシとプラーミャは口の端を吊り上げタ。


「ね、ねえ……提案だけど、ここで私達を見逃すことはできない……?」

「ハア!? アンタ、何言ってるの!?」


 残る二人のうちの一人……確か、ワタクシ達と同級生ですわネ……彼女が、そんな提案をすると、もう一人のワタクシ達と変わらない身長の女子生徒が、声を荒げタ。


「アンタ、分かってるノ!? そんな真似をして賀茂カズマにバレたりしたら、私達の大切なもの・・・・・が永遠に戻らなくなっちゃうんだよ!?」

「っ! じゃあ小森先輩は、この二人に勝てるっていうんですか! あの二人を見てくださいよ!」


 そう言って、同級生の彼女は倒れる二人を指差す。


「そ、それに、ひょっとしたら彼女達なら、あの賀茂カズマだって倒せるかもしれないし、何より、最強の生徒会長までいるんですから!」

「う、うう……」


 フフ……二人共、本当に切羽詰まっている感じですわネ。


 ですけド。


「……甘いわネ。ヤーとサンドラが、見逃すと思ってるノ?」

「「っ!?」」


 プラーミャの言葉に、二人が息を飲む。

 モチロン、ワタクシもプラーミャの言うことに完全に同意ですワ。


 だっテ。


「アナタ達は、ワタクシ大切な人・・・・を馬鹿にしタ」

「……別に、ヤーはそんなことないけド……」

「フフ、嘘おっしゃイ。あの時の・・・・アナタの表情、どんな悪魔ヂェーモンよりも怖かったですわヨ?」

「ッ!? モ、モウ!」


 フフ……本当に、プラーミャは不器用ですわネ。

 ですけド、ワタクシもこればかりは譲るつもりはないんですのヨ?


「と、とにかク! この二人をサッサと倒して、ヨーヘイ達と合流するわヨ!」

「フフ……エエ!」


 ワタクシ達の精霊ガイストは改めて武器を構え、二人の精霊ガイストを見据えるト。


「これデ、終わりですわヨ! 【裁きの鉄槌】ッッッ!」

「トドメヨ! 【絨毯じゅうたん爆撃】ッッッ!」


 [ペルーン]と[スヴァローグ]がジャンプし、巨大なメイスとハルバードを叩き下ろス。


「「キャアアアアアアアアアアッッツ!?」」


 二人の精霊ガイストが吹き飛び、そのまま床に叩きつけられタ。

 その身体に、焦げ付くほどのいかずちと炎を浴びながラ。


「フン! そこで大人しく寝てるのネ!」


 プラーミャが鼻を鳴らし、[スヴァローグ]がハルバードを払ウ。


「サア……行きましょウ。ヨーヘイが、ワタクシ達を待っていますワ!」

「エエ!」


 ワタクシ達は、愛するヨーヘイ・・・・・・・の元へと、一気に階段を駆け上がっタ。

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