第326話 火蓋
禍々しい幽子の渦が薄れ、その中から現れたのは、額から一本の角を生やした、一体の
その容姿は、元の[
「チクショウ! 賀茂の野郎、最悪だ! この世界をメチャクチャにする気かよ!?」
「も、望月ヨーヘイ、何を言っている!?」
困惑した中条が、叫ぶ俺の肩を揺すりながら話しかけるが、今は相手している余裕はない。
だって、あの青銅のレリーフは間違いない。
あれこそは、『
この『ガイスト×レブナント』において、学園長である藤堂マサシゲの策略によって現実に絶望した主人公が、その魂と引き換えに世界の破滅へと導いた、最低最悪のアイテム。
主人公の
つまり。
「オマエエエエエエッッッ! 本気でこの世界を滅ぼす気かッッッ!」
「ははははは! 馬鹿じゃないか? そんなわけないだろう。大体、オレはヒロインの全てを
高笑いをする賀茂がそう答え、チラリ、と自身の
「オイ、お前はこの俺の意に反して、世界を滅ぼしたりなんて考えてたりするのか?」
『はうはう! まさか! [
「ま、そういうことだ。だから、オレ達はこの世界を滅ぼそうなんて、これっぽっちも考えちゃいない。それどころか、
そう言うと、賀茂は口の端を持ち上げる。
「……俺がその話を信じるとでも思っているのか?」
「いや? 別に信じてもらおうとも思わないし、そもそも、オマエにはこの世界から退場してもらうつもりだし」
「っ!?」
その言葉に、俺の背中に冷たいものが走った。
つまりコイツは、この俺を消し去ろうと……そう考えてるってことか。
「はは、だってそうだろ? オレと同じ『攻略サイト』持ちは、サッサといなくなってもらうに限る。要は邪魔なんだ、目障りなんだよ」
「まあ、な」
賀茂の言葉に、俺は
俺だって、オマエは
オマエは、サクヤさんを救う上で邪魔な存在でしかないんだから。
「はは、だからオマエは安心して死んでくれ。なあに、学園長や“
『はうはう! さすがはマスターなのです! [
そう言うと、
ここまでの賀茂と[
もう……コイツ等は
それが、あの『
だったら。
「……賀茂。オマエは、もう
「ハッ! 何を言い出すかと思えば……大体、オレは特別なんだよ! 選ばれたんだよ! その証拠が、あの『攻略サイト』なんだよ! だから……オレは、モブですらない自分をやめて、
賀茂は右の人差し指を真上へ突き上げ、高らかに宣言する。
その姿は、尊大で、
「そうか……だったら俺も、宣言してやるよ」
同じように、俺も右手人差し指を上へと突きつけると。
「俺は! この『攻略サイト』の力で……最高の相棒と、最高の
「はは! やってみやがれええええええ! [
『ハイなのです!』
賀茂の合図と共に、[
「[シン」! 中条! このクズは、俺達の手で絶対に倒すぞ!]
『もちろんなのです! こんな……こんな奴に、絶対に負けないのです!』
「クク……貴様に聞きたいことは山ほどあるが、今はこの男を全力で
[シン]も、中条の[デウス・エクス・マキナ]も、[
そして。
『はうはうはう! 【爆】! 【堅】!』
「【ツァーンラート】!」
『はう! 【
俺達と賀茂の、互いにとって最高の結末を手に入れるための、戦いの火蓋が切られた。
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