第293話 期末テストの結果

「ア、成績上がったじゃなイ!」


 帰ってきた俺の期末テストの結果を見て、サンドラが嬉しそうに微笑む。


「はは……サンドラと先輩のおかげで、前回よりもかなり上がったよ」


 うん、まさか俺が、学年で二十位以内に入れるだなんて思いもよらなかった。

 本当に、先輩とサンドラには頭が上がらないな。


「で、サンドラはどうだった?」

「ワタクシ? 今回は三位でしたワ」


 サンドラは三位かあ……やっぱり頭いいなあ。


「フフ、ヤーは二位ヨ」

「ボクは五位だったよ!」


 喜んでいたのも束の間、会話に加わってきたプラーミャと立花の成績を聞き、俺は現実に打ちひしがれた。

 チクショウ! プラーミャはともかく、主人公はちゃんと『学力』パラメータを上げないと成績イマイチのはずだろうが! なんで最初っから成績いいんだよ!


「あはは! 今度はボクが勉強を教えてあげるね!」

「あー……そうだなー……」


 嬉しそうに告げる立花に、俺は気のない返事を返した。


「お! みんないるじゃねーか!」


 すると今度は、加隈の奴がわざわざ俺達の教室にやってきた。

 その右手に、期末テストの結果を携えて。


「なあなあ、期……「帰れ」……ちょ!? まだ最後まで言ってないだろ!?」


 何言ってんだ? 最後まで言わなくても、自慢しにきたことぐらい分かるんだよ!


「へへ! 実は俺、なんと学年で七位だったんだぜ! すごくね?」

「やかましい! とっと自分の教室に帰れ!」

「ヒデエ1?」


 俺が教室の扉を指し示すと、加隈は半ベソかきながら教室を出て行った。何しに来たんだよ……って、自慢しに来たのか。マジ来んな。


「そうなると、学年一位って誰なのかなあ」

「そうネ……このヤーに勝てる人がこの学園にいるなんて、意外だワ」


 というか、ここまで自信満々に言い放つプラーミャもどうかと思うぞ?


「ホホ、みんないるの」


 今度は土御門さんが教室にやってきたぞ。

 ひょっとして彼女も加隈と同じで、俺に成績を自慢しに……!


「わらわも“アトランティス”領域エリアを踏破したのでの。今日からどうするのか、あらかじめ方針を聞こうと思ったのじゃが……その目はどうしたのかえ……?」

「え、えーと……」


 土御門さんにおずおずと尋ねられ、俺は思わずしどろもどろになる。

 いや、まさか期末テストの自慢にきたんじゃないかって警戒してたとは、とても言えない……。


「フフフフフ! ヨーヘイはアナタに馬鹿にされるんじゃないかって、警戒してるのヨ!」

「プラーミャ!?」


 なんで直球でそんなこと言うんだよ!? しかも、よく俺の考えが分かったな!?


「ホ、そんなに成績が悪かったのかえ?」

「い、いや、その……に、二十位……」


 俺は上目遣いで答えると。


「別に悪くないと思うがの」


 土御門さんは拍子抜けしたかのような表情を浮かべた。


「じゃあシキ、アナタの成績はどうだったノ?」

「わらわかえ? 四位じゃったが……」


 あー……やっぱり土御門さんも成績いいなあ……。

 こんなことなら、ズルみたいなモンだけど、『攻略サイト』にあった主人公の『学力』パラメータアップのためのアイテムを手に入れとくんだったなあ……。


「ププ、ヨーヘイったら落ち込んでるシ」

「モウ! プラーミャもヨーヘイをからかうのはおよしなさイ!」


 やめてくれサンドラ……こういう時、肩を持たれると逆にみじめになる……。


「失礼。望月くんはいるか」

「先輩!」


 すると今度は、先輩がやって来た。


「ふふ……期末テストの結果はどうだった?」

「は、はい……」


 やっぱりそうですよね、気になりますよね……。

 俺は無言で先輩に結果を見せる。


「! すごいじゃないか望月くん! 前回よりかなり上がっているぞ!」

「あ、あはは、そうですね……」

「ああ! この調子で頑張れば、来年の今頃には、学年トップだって狙えるとも!」


 先輩はズイ、と顔を近づけ、真紅の瞳をキラキラさせながらそう言ってくれた。


「い、いやあ、さすがにそれは無理なんじゃ……「そんなことはない! 君は期末テストの勉強だけでこの成績を残せたんだ! 普段から勉強を怠らなければ、もっといい成績になるに決まっている!」」


 謙遜けんそんする俺の肩をつかみ、先輩は嬉しそうに俺を見つめる。

 はは……こんなに期待されたんじゃ、勉強ももっと頑張らないと、だな。


「あはは、でしたら先輩、これからも俺に勉強を教えてもらってもいいですか?」

「! も、もちろんだとも!」


 そうお願いしたら、先輩は二つ返事で頷いてくれた。


「チョ、チョットお待ちになっテ! ワタクシも、ヨーヘイの勉強のお手伝いをしますわヨ!」


 俺と先輩の会話を聞いていたサンドラも、そんなことを言ってくれた。

 本当に、二人共……!


「よっし!」


 俺は気合いを入れるため、両頬をパシン、と叩く。

 二人の優しさに応えるためにも、頑張ってみるか!


「ふふ……君は、いつだって全力だな」

「当然ですワ! だっテ……ヨーヘイですもノ!」


 二人が柔らかい表情で俺を見つめている、その時、教室の前を歩く、賀茂の姿が目に入……っ!?


「アイツ……!」

「む、望月くんどうした?」


 俺の雰囲気が変わったことに気づいた先輩が、心配そうに尋ねるけど……俺は、それどころじゃなかった。


 だって。


 賀茂の奴は、『学力』パラメータアップのためのアイテムの一つ、『超実践学術理論』を持っていたんだから。

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