第270話 お守り
[関聖帝君]が最強スキル、【千里行】を取得した次の日の放課後。
俺達八人は“カタコンベ”
「さて……では、昨日決めたチーム分けで、この“カタコンベ”
「「「「「「「はい!」」」」」」」
先輩の言葉を合図に、俺達は各チームへと分かれる。
すると。
「ヨーヘイ……」
「ん? サンドラ?」
サンドラが俺の制服の袖を引っ張り、俺の顔を上目遣いで覗き込んでいた。
「どうした?」
「あ、あノ……ホ、ホラ、この“カタコンベ”
サンドラの奴、顔を真っ赤にしてモジモジしだしたぞ?
「ああ……なあに、“カタコンベ”
多分、サンドラはチームが分かれることが不安なんだろう。
だから、できる限り安心させる意味合いを込めて励ましたんだけど……。
「モ、モチロンそれもあるんですけド……こ、ここではワタクシ、ヨーヘイを守ってあげることができないですかラ……」
「はは、心配すんな。俺の[シン]に、
「わ、分かってますワ! それでも、万が一ってこともあるんですのヨ?」
「お、おう……」
ズイ、と詰め寄られ、俺は思わずしどろもどろになる。
「ン……」
サンドラがそっぽを向きながら、俺の胸にドン、と拳を打ちつけた。といっても、思いっ切り殴ったりしたわけじゃなく、激励に近かった。
そして、ゆっくりと握った拳を開くと……手のひらの上には、布でできた不格好な人形が現れた。
目を凝らしてみれば、縫った糸がところどころほつれていたりしている……。
「これ……?」
「……ルーシでは、邪悪なものから身を守るためにこの人形を持つんですノ」
その言葉で、意味を理解する。
これは、サンドラが俺のために作ってくれたお守りだってことに。
はは……全く……!
「ありがとな……これは、制服の内ポケットに大切にしまっておくよ」
「……絶対に、ムチャしてはいけませんのヨ……?」
俺がサンドラの頭を優しく撫でると、サンドラは俺の手に自分の手を添えた。
◇
「食らいなさイ! 【ブラヴァー】!」
“カタコンベ”|領域の地下第四階層。
通路の陰から
「フン、他愛ないわネ」
「ホホ……じゃが、この狭い通路であのような大技、さすがにやり過ぎじゃて」
「ナニヨ!」
土御門さんにからかうように指摘され、マミーを倒してご満悦だったプラーミャが口を尖らせた。
というかこの二人、やけに仲が良いな。
「ふう……ですが、このように入り組んだ狭い通路ですと、[ポリアフ]による遠距離攻撃も難しいですね……」
「いやいや、それでも【オブザーバトリー】による
いや、実際[ポリアフ]のスキルのおかげで順調そのものだ。
というのも“カタコンベ”
何より厄介なのが、この階層はランダムに三パターンの通路が生成されてしまうのだ。しかも、一度階層から出て再度侵入したらまた変わるっていうオマケ付きで。
もちろん、『攻略サイト』にはランダムに生成された全てのマップが載っているけど、自慢じゃないがそれを全て覚えられるほど俺の頭は良くないからな。
かといって、みんなの目の前でスマホを見ながら進むこともできないしな……。
「とにかく、俺達がこんな短時間で地下第四階層に来れたのは、氷室先輩のおかげなんです。このままお願いしますね!」
「ふふ……任せてください」
表情は変えないまま、氷室先輩はその先輩すらも凌駕する旨をポヨン、と叩いた。
は、破壊力抜群だ……!
「ホ……なんともうらやましいのう……」
そう言うと、土御門さんが氷室先輩の胸と自分の胸を交互に見比べる。
い、いや、土御門さんは確かに大きいってわけじゃないけど、それでも普通に胸のサイズはあるし、形だって良さそう……って!?
「イテエ!?」
「全ク……視線がバレバレなのヨ」
眉根を寄せるプラーミャに、思い切り足を踏んずけられてしまった。
……気づかれないように、眼鏡でも掛けるようにするかなあ……。
「ホラ、サッサと先に進むわヨ」
完全に不機嫌になったプラーミャが、俺達を先導するように先頭をスタスタと歩く。
俺達はそんな彼女に遅れないよう、すぐに追いかけるんだけど……。
「……ナニヨ」
「いや、何も言ってないだろ!?」
隣に並んだ瞬間、プラーミャにギロリ、と睨まれた。
いや、というかプラーミャの身体が小っちゃいからすぐに追いついてしまったんだけど、それがことのほか気に入らないらしい。
「フン!
「そ、そうか……?」
プイ、と顔を背けてそんなことを言うプラーミャだけど……多分、その可能性は低そう。それに、先輩に負けないくらい胸は育ってるんだから、別にいいじゃんよ。
「ダカラ! 視線がバレバレだっていったでショ!」
「アイタアッ!?」
そして、俺は怒鳴るプラーミャにまた足を踏まれた……。
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