第221話 布都御霊
「えへへ、無事に【闇属性反射】を手に入れたよ!」
「だけど、ボクは今回の交流戦に出ないから、慌てて【闇属性反射】を手に入れなくてもよかったような……」
「はは、そんなわけねーだろ。確かに交流戦には出ないかもしれないけど、
そう、二年の必修課題であり、実力的に多分アッサリと踏破できるであろう “カタコンベ”
「うん……まあ、望月くんの言う通りなんだけどね」
そう言うと、立花は苦笑した。
「
「もちろん俺も取ったぜ!」
お、プラーミャと加隈も無事に取ったみたいだな。
「ふふ……さて、望月くん、今日のところはこれで解散かな?」
「あー……実は、ちょっと試したいことがあったんですよねー。[シン]」
『ハイなのです!』
微笑みながら尋ねる先輩にそう答えた俺は、[シン]に声を掛けて指示をする。
すると。
『はう!』
「「「「「っ!?」」」」」
[シン]は祭壇にあった燭台を手に取ると、暗闇が広がる奈落の底へ向かってダイブした。
「も、望月くんっ!? 死ぬ気なのか!?」
「はは……まあ、見ててください」
顔を真っ青にしながら慌てる先輩を落ち着かせるために、俺は努めて微笑みながら答え、[シン]が向かった暗闇へと指差す。
『はう! 【神行法・跳】!』
暗闇に点のように浮かぶ燭台の灯りから、[シン]の声がこだました。
そして。
「[シン]、お疲れ。どうだった?」
『はう! マスターの言っていた通り、洞窟みたいなところがあったのです!』
「そっか、サンキュー」
『えへへー、なのです』
報告を受け、俺は労いの意味を込めてその黒髪を撫でてやると、[シン]は嬉しそうに目を細めた。
「も、望月くん……一体どういうことだ?」
「ええと……ちょっといいですか……?」
「ん……っ!?」
おずおずと尋ねる先輩に断りを入れてから、先輩の耳元にそっと顔を寄せる。
「ほら……“アルカトラズ”
「あ……そ、そういうことか……」
俺は小声でそう告げると、先輩は納得して頷いた。
というか、二周目特典の五つの
で、ここ“
この指輪には、【状態異常無効】、【全属性無効】の効果があるという、ある意味チートアイテムっぽいんだけど……正直、微妙ではある。
だって、属性に関して言うなら、五つの
とはいえ。
「……その指輪がないと、“
「望月くん……」
俺が何気なく呟いた言葉を拾った先輩が、真剣な表情で見つめていた。
あっと……無意識に余計なこと言っちまったなあ……。
「あ、あはは……みんなには内緒、ですよ?」
「ふふ……君は、本当に謎だらけだな。だが……それでも私は、君のことならなんだって信じられる」
「先輩……」
苦笑して人差し指を当てた俺に、ふいに先輩はそんな言葉で応えてくれた。
というか先輩……そんなこと言うの、反則ですよ……。
「……俺だって、先輩のことならどんなことだって信じていますし、その……
「あう……うん、知ってる……」
先輩は顔を真っ赤にして
「ふふ……この指輪が、ついこの間も私のことを救ってくれたよ」
「あはは……そうですか……」
今の先輩の
「さて……じゃあ、その指輪を[シン]に取って来てもらうかなー」
『はう! 任せるのです!』
そう言うと、[シン]が再度暗闇の中へ飛び込み、そして。
『取ってきたのです!』
[シン]は小さめの木箱を抱え、戻ってきた。
さてさて、そうすると今度はこの指輪を誰に渡すかってことなんだけど……。
事情を知っているサンドラが左手の“リネットの指輪”に触れながら、俺に目配せしてきた。
多分、“リネットの指輪”があるから今回は譲るっていう意味だろう。
それは先輩も同じで、その真紅の瞳に慈愛を湛え、微笑みながら頷いてくれた。
「じゃあ、この指輪はプラーミャに持ってもらおうかな」
「エ……?
俺の言葉が意外だったのか、プラーミャはその琥珀色の瞳を泳がせる。
「おう。一応、この指輪の効果は【状態異常無効】と【全属性無効】なんだけど、その場合、【状態異常弱点】を持っているプラーミャが持つべきだろう?」
「ダ、ダッタラ、サンドラも同じよ! だかラ、この指輪はサンドラにあげなさいヨ!」
「フフ……ワタクシには【ガーディアン】がありますかラ、状態異常の攻撃も防げるんですのヨ? ですのデ、その指輪はプラーミャが持つべきですワ」
俺の意を
「うん、ボクも望月くんやサンドラさんの意見に賛成かな。それに、何と言ってもプラーミャさんはうちのチームの攻撃の要だからね」
「ア、アオイまデ……」
するとプラーミャは、少し頬を赤らめた。
お、コレってひょっとして……。
「し、仕方ないから、
不機嫌そうにそう言い放つと、プラーミャは指輪を手に取って左手薬指にはめた。
だけど、プラーミャの口元は嬉しそうに緩んでいた。
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