第210話 お一人様とお二人様
「ふーん……」
伊藤アスカが向かった場所……そこは、校舎のはずれにある、用具室の前だった。
「こんなところに来て、一体何してるんですか?
こちらに背中を向けながらたたずむ伊藤アスカに、俺はできる限り厭味ったらしくそう告げると。
「うふふ……
「いえ? 俺にはサッパリ。先輩はどうです?」
俺はわざとらしく隣にいる先輩に問いかけた。
「ふふ……そうだな、私にもこの教師が
「ですよねー」
俺と先輩は顔を見合わせながらとぼけると、伊藤アスカがクスクスと笑い出す。
「うふふ、要はあなた……望月ヨーヘイに、この学園にいられては困るのよ。どうしてだか分かる?」
「いえ? というか、なんでセンセイが自分みたいな
まあ、一学期に俺をソロで初心者用の
何より、クラス代表選考会でのプラーミャとの試合における、伊藤アスカの『私は
それが、悠木や牧村クニオと同じように、
「うふふ! あなたの存在を気に入らない方がいるの! あなたが、目障りなのよ!」
そう叫ぶと、伊藤アスカがニタア、と醜悪な
それこそ、ヘタなB級ホラー映画なんて目じゃないほどに。
だけど、これで確定だ。
伊藤アスカは、悠木や牧村クニオとは異なり、明確に裏で手を引いている奴がいる。
「そっかー……それで、気に入らないってんなら、この俺をどうやって学園から追い出すんだ? というか、その前に
「ハハハハハ! まさに君の言う通りだな!」
俺はヤレヤレ、といった表情で肩を|竦め、先輩は腕組みをしながら高笑いをした。
だけど本当は、先輩はさっきから自身の二の腕をギリ、と強く握りしめて、伊藤アスカの物言いに耐えていることが分かる。
それもこれも、俺の思いをくみ取ってくれているからだ。
はは……コイツとの件が片づいたら、そのお礼に先輩とルフランに行くかな……って、それじゃ俺へのご褒美になっちゃうな。
「……その表情、一番ムカツクわね」
伊藤アスカが忌々し気に俺を睨む。
おっと、ちょっと幸せなことを考えていたせいで、知らないうちに俺は口元を緩めていたみたいだ。でも、人が幸せそうな表情浮かべるのが一番気に入らないって、マジで性格歪んでるな。
「いやあ、自分がお一人様でプライベートが充実してないからって、俺に嫉妬したりするの、やめてもらっていいですか?」
「あう!? も、望月くん!?」
「っ!?」
俺はさらに
それに驚いた先輩が、顔を真っ赤にしながらわたわたした。そして俺も、メッチャ照れる、恥ずかしい。
だけど、その効果は抜群だったようで。
「っっっ! フザケんじゃないわよ! 高々十六、七のガキが、イチャついたところで乳臭いだけなのよ!」
伊藤アスカの顔はこれでもかというほど醜く崩れ、口から唾をまき散らしながら絶叫する。
そもそもオマエが彼氏を作ったこともなくずっと独り身で、足繁く合コンばっかりしてることは知ってるんだよ。『まとめサイト』の情報量を舐めるな。
というか、そんなだから、教師のくせに主人公に手を出したりするんだろうが。
「ハハ……なんか俺達、チョット可哀想なことしちゃいましたかね……」
「あう……う、うん……」
俺がわざと同情するかのような表情を浮かべると、先輩は恥ずかしそうに
そして先輩、その仕草が一番あの伊藤アスカにクリティカルヒットしたみたいです。むしろ、オーバーキルです。
その証拠に、伊藤アスカは髪の毛を
「まあいいや。とにかく、俺は絶対にこの学園から出て行ったりしねーよ。そんなことしたら、こんな素敵な先輩と一緒にいられなくなるからな」
「「っ!」」
どうやら今の言葉がトドメだったみたいで、伊藤アスカは血走った目で俺を凝視した。
そして。
「あうあうあうあうあうあうあうあう……!」
……うん、それは先輩も同じだった。もちろん、効果は真逆だけど。
「うふ……ふふふ……ふふふふふふふうううううううああああああああッッッ! オマエコロス! 絶対にコロス! この学園どころか、人生終わらせてヤルヨオオオオオオオオオ!!!」
教師としての、そして、『ガイスト×レブナント』のメインヒロインとしての面影が一切なくなった伊藤アスカは絶叫し、そして。
「[フィヨルギュン]!!!」
自身の
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