第208話 祝勝会兼反省会
『はうはう! 美味しいのです! 美味しいのです! 勝利の美酒に酔いしれるのです!』
クラス選考会の初日である一年生の部を無事に終え、祝勝会と反省会を兼ねて、みんなでルフランにやって来た。
で、[シン]はいつものようにジェラートを食べてゴキゲンである。
「ふふ……それにしても、今日の決勝戦の二人は見事だった。もちろん、望月くんとプラーミャの試合やサンドラと立花くんの試合、それに、加隈くんの決勝戦もな」
「し、師匠……!」
先輩に褒められ、加隈が涙ぐむ。というか加隈の試合について触れたのって、先輩だけだなあ……。
ま、まあ……俺達も加隈の試合をまともに見たのって、決勝戦だけだし……うん、コメントできないのも仕方ない。
「でも実際、三人のクラスチェンジした
「えへへ……ボク達も頑張ったからね……」
そう言って、立花は嬉しそうにはにかむ。
そんな立花の様子に、加隈はますます挙動不審になっていた。
「そして、明日は氷室先輩の番ですね」
「はい。もちろん私も、勝ちにいきます。そして……望月さんと一緒に、代表として戦います」
氷室先輩は藍色の瞳で俺を見つめながら、力強く頷いた。
でも、氷室先輩の[ポリアフ]はレベル七十九。クラスチェンジも既に果たし、オマケに【火属性反射】、【氷属性反射】、【闇属性反射】のスキル持ちだ。どうあがいたって、他の二年生が氷室先輩に勝てる要素はない気がする……。
「ふふ……本音を言えば、私も氷室くんと戦ってみたかったがな」
「そうですね……それは私も同意見です」
うわあ……二人共、メッチャお互いを意識してる。
だけど、残念なことに二人は同じクラスじゃないから、選考会で戦うなんてことはあり得ないんですけどね。
「あ、あはは……まあ、明日は俺達全員で、氷室先輩を全力で応援しますから!」
「そ、そうですワ!」
俺とサンドラは氷室先輩に向かって頷く。
「ありがとうございます……みなさんのご期待に応えてみせますから」
そう言うと、氷室先輩は無表情ながらも、拳をグッ、と握った。
はは……気合い充分だな。
「と、ところで望月くん、その……」
先輩がどこか言いづらそうに、チラチラとこちら……というか、俺の目の間にある皿を見やる。
どうやら俺の柿のタルトに釘付けの模様。食べたいんですね? 分かります。
俺はス、と無言で皿を差し出すと。
「むむ! い、いいのか……?」
「……(コクリ)」
頷いた瞬間、先輩は[シン]並みに素早い動きで俺の皿を奪うと、見事にフォークで柿を刺した。
「ふふ! 美味しいな!」
最高の笑顔で柿のタルトを頬張る先輩。
こんな表情を見たら、何個でも先輩に食べさせたくなるよな。
◇
「ふう……」
ルフランで解散して家に帰った俺は、部屋のベッドに寝転がりながら『まとめサイト』を眺めながら息を吐く。
というのも、俺はあの“賀茂カズマ”のことが気になって、どこかに情報が載ってないかって見てるんだけど……うん、ない。
「いやだけど、あれだけ実力があるのに、サブキャラどころかモブですらないなんて、俺には到底考えられないんだけど……」
『はう! また『まとめサイト』を見てるのですか?』
「ん? おお……ちょっとな」
俺の隣に寝そべりながら尋ねる[シン]に、俺はあいまいに返事した。
「ウーン……でも、なんか引っ掛かるんだよなあ……」
そう呟くと、俺はもう一度『まとめサイト』にあるキャラクター一覧を眺める。
「ええと……アレイスター学園の一年生だと、主人公の仲間になるのは……」
まずは同じクラスである、一―二の連中。加隈、悠木、
一―三はサンドラだけで、一――は…………………………ん?
一応、一―一にも仲間になるキャラが二人いるんだけど、そういえば、そのどちらも今日の選考会で見てないなあ……。
「ウーン……加隈の試合みたいに、俺が見落としてる可能性も考えられるけど、それでも、決勝戦にはどっちかが勝ち上がってくると思うんだよなー」
そう……基本的に主人公の仲間になるキャラは、俺と言う例外を除いて、その仕様上他の生徒よりも強い設定になってるはずなんだ。
だって、そうじゃないと今回の交流戦イベを含め、ステータス順にメンバーが選ばれることについて、矛盾が生じてしまうことになるから。
「……まあ、そうはいっても、モブですらない賀茂がクラス代表になった時点で、矛盾だらけなんだけどな」
俺はそう呟くと、スマホをベッドの上に放り投げた。
確かに、俺が『まとめサイト』のおかげでクソザコモブを脱却した時点で矛盾が出てるし、それ以外にも『まとめサイト』とは違う展開となっていることも多々ある。
だから、賀茂があんなに強くて、一―一に仲間キャラが現れてないこともあり得るだろう。
だけど……このモヤッとする感覚は一体なんなんだ……?
「……賀茂カズマ、か」
俺は天井を眺めながら、もう一度、その名を呟いた。
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