第191話 クラス代表選考会 予選④

「そこまで! 勝者、“中島なかじまハルト”くん!」


 審判を務める伊藤先生が、三組目のバトルロイヤルの勝者の勝ち名乗りを上げる。


 さあ……次はいよいよ俺の番だ。


「よっし!」


 俺は両頬をパシン、と叩いて気合いを入れた。


『はう! 絶対に勝つのです!』


 そう叫ぶと、[シン]が舞台の上をジッと見つめる。

 はは、[シン]も気合入ってるな。


「フフ……ヨーヘイ、このヤーが叩き潰してあげるワ!」

「はは、俺も[シン]も、これっぽっちも負けるつもりはねーよ!」


 不敵に笑うプラーミャに、俺も口の端を持ち上げた。


「ふふ……二人共、頑張れ!」

「どちらも応援してますわヨ!」


 先輩達の声援を受け、俺とプラーミャは一緒に舞台に上がる。

 そこには、残り二人の対戦相手である“大東だいとう”と“横川よこかわが既にスタンバっていた。


「うわあ……ちょっと第四組って、キツくない?」

「言うな、横川……俺達は俺達で、やるしかないだろ……」


 大東と横川の二人が、俺達を見ながら色々言ってるけど……俺は絶対に油断しないからな?


「フフ、いい心掛けネ」


 いや、プラーミャ……ちゃんと警戒しとかないと、足元すくわれちまうぞ?


 まあ、それよりも……。


 俺はチラリ、と審判である伊藤先生を見やると。


「…………………………」


 あの、あえて俺を無視するような態度、なんか引っ掛かるんだよなあ……。

 まあ、さすがに変な真似はしたりしないとは思うんだけど。


「では、ただいまから第四組の試合を始めます……」


 そう告げると、伊藤先生は静かに右手を高々と掲げた。


 そして。


「始め!」


 その号令と共に、俺達は一斉に精霊ガイストを召喚する……って!?


「邪魔ヨ! [スヴァローグ]!」

「「っ!?」」


 プラーミャの[イリヤー]からクラスチェンジした、[スヴァローグ]という名の精霊ガイストが、横川と大東の精霊ガイストに一気に肉薄する。

 というかあの[スヴァローグ]、中年のオッサンからメッチャ美少女に生まれ変わってるんだけど!?

 しかも露出高めの甲冑……いわゆるビキニアーマーを着て、超巨大なハルバートって、変わり過ぎにも程があるだろ!?


「ハアアアアアアアアアアアアアッッッ!」

「キャアアアアアアアアアッッ!?」

「グアッッ!?」


 袈裟切りに振り払ったハルバートの一撃に、防御は間に合ったものの、大東と横川の精霊ガイストが吹き飛ばされる。

 というかプラーミャの精霊ガイスト、見た目に反してメチャクチャ脳筋じゃねーか……。

 うん、これは確かに、[イリヤー]と一緒だあ……。


 そして。


「大東くん、横川さん、場外!」


 場外に出てしまった二人は、早々に退場となってしまった。


「フフ……あとはヨーヘイだけネ」

「あははー……」


 ニヤリ、と口の端を上げるプラーミャに、俺は思わず苦笑した。

 だけど。


「まあ、当たればな・・・・・

「ッ!?」


 俺が台詞セリフを言い終わる前に、[シン]がその圧倒的な速さで[スヴァローグ]へと迫る。


『はうはうはう! 遅いのです!』


 [スヴァローグ]の背後についた[シン]は、素早く呪符を貼ろうと手を……っ!?


「甘いワ!」


 すると[スヴァローグ]は、そのヒールのついた金属製のブーツで思いっ切り舞台を踏み込むと、[スヴァローグ]を中心にして囲むように火柱が次々と上がった。


『っ!? 熱いのです!?』

「アチチチチッ!?」


 [シン]は右手を慌てて引っ込めるも、ほんの少しだけ火柱に触れてしまい、俺と[シン]は仲良く右手をバタバタさせる。


「フフ……ドウ? [スヴァローグ]の【ヴァルカン】ハ?」

「どうって……そりゃあ厄介としか言いようがないな……」


 正直、あんなのを周囲に展開されたら、直接呪符を貼り付けることで攻撃する[シン]にとっては、その手段を奪われちまったってことだからな……。

 それに、プラーミャのあの口振りからすると、【ヴァルカン】というのは火属性魔法じゃなくてスキルそのものっぽいから、呪符による結界で無効化することもできない。


 さて……どうするかな……。


「フフフ! どうしたのヨーヘイ! ひょっとして、もう打つ手がないノ?」


 嬉しそうに笑うプラーミャ。

 そんな彼女から視線を逸らして、俺はチラリ、と空を眺めた。


 あー……まあ、多分これでいけるんじゃないかな……。


 ということで。


「[シン]!」

『! ハイなのです!』


 俺は[シン]を呼び寄せてそっと耳打ちすると、[シン]は笑顔で頷いた。


「さあ……俺達の強さ、プラーミャの奴に見せつけてやろうぜ!」

『任せるのです! [シン]は、誰にも負けてなんかやらないのです!』


 そう言うと、[シン]は思い切りしゃがみ込み、キッ、と上空を見据えた。


 そして。


『【神行法・跳】!』


 遥か頭上の大空へ向け、[シン]が発射・・した。

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